現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

ポピュリズム・その積極的意義とは何かー2017学習院大現代文解説

(1)今回の記事について

 今回の記事は、「2017早大現代文・学習院大現代文・論点的中報告③・ポピュリズム」の追加版として、2017学習院大学・現代文(吉田徹「ポピュリズムにどう向き合う」)の解説をします。

  

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  ここで、流行・頻出論点である「ポピュリズム」の意味を確認的に説明します。

 「ポピュリズム」とは、一般大衆の利害・権利・欲望・不安・恐怖などを利用して、大衆の支持を基盤として、既存の体制・エリート層・インテリ階級などと対決姿勢をとる政治思想のことです。
 日本語では「大衆主義」・「大衆迎合主義」などと訳されています。
 また、同様の思想を持つ人物・集団を「ポピュリスト」と呼び、大衆主義者・大衆迎合主義者などと訳されています。

 

 「ポピュリズム」の最近の論考については、2017年・学習院大学経済学部国語に出題された吉田徹氏の論考(「ポピュリズムにどう向き合う」)が分かりやすいうえに、秀逸なので、今回の記事で詳しく解説していきます。

私が秀逸だと評価するのは、吉田氏がポピュリズムにプラス面を見出だそうとする点です。

 他の多くの論考がポピュリズムを否定する中で、吉田氏の論考は、かなりユニークです。このようなユニークな論考は、読解力を必要とするために、国語(現代文)・小論文の入試問題に採用されやすいのです。ぜひとも、以下の問題にチャレンジしてください。

 

 今回の記事の項目は、以下のようになっています。

(2)2017学習院大学・現代文・解説・吉田徹「ポピュリズムにどう向き合う」

(3)『ポピュリズムを考える』(吉田徹)の紹介・解

(4)吉田徹氏の紹介

(5)当ブログにおける「ポピュリズム」・「トランプ現象」・「民主主義」に関する記事の紹

(6)当ブログにおける2017年度入試・論点的中記事の紹介

(7)当ブログにおける2016年度入試・ズバリ的中記事の紹介

(8)当ブログの最近の人気記事の紹介

 

ポピュリズムを考える 民主主義への再入門 NHKブックス

 

 

(2)2017学習院大学・現代文・解説・吉田徹「ポピュリズムにどう向き合う」

 

(問題文本文)(概要です)

(【1】・【2】・【3】・・・・は当ブログで付記した段落番号です)

(青字は当ブログによる「注」です)

(赤字は当ブログによる「強調」です)

(以下、同じです)

【1】「一匹の妖怪が世界を徘徊(はいかい)している。ポピュリズムという名の妖怪が」。マルクスの「共産党宣言」をもじった言葉がメディアで躍る。

【2】(省略)英国の具体例について

【3】(省略)南欧、東欧諸国の具体例について

【4】米大統領選予備選での「トランプ〔   ①   〕」も加わり、先進国はポピュリズムの時代を迎えている。

【5】ポピュリズムは、日本では「衆愚政治」と同義にされ、最近では「反知性主義」とも関連付けられる。しかし 本来は民主政に対する主権者の深い疑念と落胆を原動力とした政治現象だ。以下では、本質、スタイル、戦略にまたがるポピュリズムの特徴と、それを生み出す要因を3つ挙げ、代表民主政に持つ含意を探る。

【6】ラテン語「ポプルス(人々)」の派生語であるポピュリズムは、社会のエリート・既得権益層に虐げられるとされるサイレントマジョリティー(声なき多数派)を代表することを本質とする。ただ、ここでいう「人々」は庶民や労働者、年金生活者、ワーキングプアなど、可変的な存在であり、既存の支持構造が組み替えられることでニッチ(隙間)市場が開拓される。

【7】エリート・既得権益層と名指しされるのも、政治家・官僚、資本家あるいは労働組合など文脈に依存する。B  ポピュリズムは何よりも、政治が一部の人間に寡占され民意がねじ曲げられていることへの異議申し立てであって、人々を束ねるイデオロギーではなく、彼らの不満を表現する否定の政治だからだ

【8】例えば、西欧の極右ポピュリスト政党は1990年代まで、既得権益の打破を訴えて市場機能を重くみる「新自由主義」の旗を掲げていた。だが既成政党が新自由主義的政策を実現していくと、今度は福祉国家路線を支持するようになる。これもポピュリズムはエリートへの〔  ②  〕を主眼とするからだ。

【9】すなわち、ポピュリズム伸長の裏には代表制民主主義の機能不全がある。欧米では、特に80年代から投票率の低下と政治不信の高まりがみられた。その一方で、保革間での政権交代が常態化し、冷戦終結以降、保守政党は文化的リベラルに、社民政党は経済的新自由主義志向に傾斜して「グローバル化コンセンサス(合意)」が形成された。

【10】これら保革政党の中道化は、それまで保守・自由主義政党を支持していた中間層の文化的不安、左派・社民政党を支持していた労働者層の経済的不安を置き去りにした。このため多くのポピュリスト政党は、文化的には反リベラル、経済的には大きな政府を志向することになった。

【11】次にポピュリズムは「多数者の専制」を警戒し、個人の理性や法の支配を原則とする自由主義的原理を嫌う。司法による権力のチェック・アンド・バランスや官僚制の専門知、知識人・メディアの言説を含め、それはエリート支配の道具とみなされるからだ。

【12】ポピュリスト政治家はこれら具体的な主体や機関が民主政の敵だと名指しして、それまで政治化されていなかった人々を動員しようとする。彼らが国民投票などの直接民主制を支持するのも、既存の意思・政策決定の回路がエリートに独占されてしまっているとみなすためだ。

【13】欧州の経済危機と緊縮政策も、こうした主張を後押しする。

【14】こうした中で、ポピュリスト政治家は不況の原因は単一通貨ユーロと金融資本、それと結託しているエリート層にあると訴え、再分配を自国民に限る「福祉排外主義」を掲げ、国民の不満を吸い上げている。15年に拡大した難民流入も、治安・生活上のセキュリティー不安を高めている。既存の政治勢力は、当初ポピュリスト政党の主張を無視するが、選挙で抗し切れずその主張を争点化させると、より過激な主張をするポピュリスト政党に競り負けてしまう。

【15】各国のポピュリズムは、アウトサイダーであるカリスマ的なリーダーが、人々を包摂できていたとする原初的で倫理的な共同体(ハートランド)を掲げる点でも共通する。それは右派ポピュリズムの場合、エスニシティー(民族性)・地域・言語を核とした国民国家であることが多い。

【16】これは戦後国家の経済社会の変容と関係している。戦前秩序の回復や反共を旗印にしたネオナチやファシズム勢力と異なり、現代ポピュリズムは、階級融和の原則からなる「戦後コンセンサス」への郷愁を基盤としている。高度成長と同質的な社会は分厚い中間層を生み出し、戦後政治の安定を実現してきた。しかし、経済のグローバル化と社会の個人化が低成長時代と合わさったことで、国家は外部と内部から再編の圧力にさらされるようになった。

【17】米同時テロ後、イスラム的価値は戦後西欧の普遍的価値と相いれないとするポピュリスト政治家があおる「文明の衝突」論も、国民の同質性と移民制限へと傾く。こうした経済的・文化的不安は、権威主義的で現状変革志向の政治を呼び込む。開かれた社会を推し進めるグローバル化から剥奪感を抱く人々と、それを政治の力で変えると約束する政治家が呼応して、ポピュリズム現象は生起していく。

【18】19世紀末の米国の人民党やロシアのナロードニキ運動など、ポピュリズムは産業構造や価値観が転換する状況において、エリートが固定化して伝統的な利益媒介構造が揺らぐ際に台頭する。つまり、ポピュリズムが民主政を危機に陥れているのではなく、民主政が危機であるがゆえにポピュリズムが起きるという因果を認識することが重要だ。

【19】民意の期待値を代表エリートが満たしていないと感じられる時に、いや応なくポピュリズムは台頭する。

【20】ポピュリズムは民主政における鬼子だ。ポピュリズムと無縁な民主政はなかったし、これからもないだろう。ただしポピュリズムは、硬直化し劣化した政治を流動化させ、それまで取り上げられてこなかった争点を政治に持ち込むことで、代表制と民意の間で不可避的に生まれる不一致を解消する契機ともなる。

【21】もっとも、それを可能とするのは「共産党宣言」の言葉を再び借りれば「妖怪をはらい清める同盟」の実現にかかっている。具体的には、既存の政治が自己改革を含むイノベーションを完遂し、政策の実効性を高めるといった、民意の「入力」と政策の「出力」の両面での改善を意味する。

【22】こうした民主政の絶えざるバージョンアップ、すなわち統治されるものと統治するものの一致が実現され、民主政の持つ本来の理念が生かされるのであれば、ポピュリズムという〔 ③ 〕は初めて窒息させられることになるだろう。(吉田徹「ポピュリズムにどう向き合う」による)

 

ーーーーーーーー

 

(設問)

(基礎的問題は省略します)

問1  空欄①~③に入る最適な語句を次の中から、それぞれ一つ選べ。

①  1 逆風  2 狂風  3 疾風  4 旋風  5 烈風

②  

1  資本家たちへの抗議

2  搾取された人々の救済

3  エリートへの異議申し立て

4  政治的混乱の発生と政権奪取

5  中間階級の育成と生活条件の向上

③  1 怪物  2 主権者  3 帝王  4 同志  5 妖怪

 

問2  傍線部Aで筆者はポピュリズムが「本来は民主政に対する主権者の深い疑念と落胆を原動力とした政治現象だ」と述べています。「主権者の深い疑念と落胆」を具体的に説明した、最適な9字の語句を本文から抜き出して記せ(字数は句読点、記号、符号を含む)。


問3の①

傍線部Bに「政治が一部の人間に寡占され民意がねじ曲げられている」とある。ポピュリズムの立場では、そうした事態がなぜ起こっていると捉えているか。その理由として最適なものを次の中から一つ選べ。

1  理性や法を信じて決断し行動をおこす人々が少くなってしまったから。

2  知識人が民意を代表するための、新しい思想を生み出すことを怠るようになってしまったから。

3  国民投票などの手段を使っても、既得権益層の妨害によって、民意が十分に反映できないから。

4  司法やメディアなどの重要な機関を握っているのが、自由主義的な立場を取っている人々だから。

5  既存の意思・政策決定の回路がシステム疲労をおこして、誤った判断を下すことが多くなってきたから。


問3の②

傍線部B「ポピュリズムは何よりも、政治が一部の人間に寡占され民意がねじ曲げられていることへの異議申し立てであって、人々を束ねるイデオロギーではなく、彼らの不満を表現する否定の政治だからだ」で、筆者はポピュリズムの特徴を「人々を束ねるイデオロギーではなく、彼らの不満を表現する否定の政治だ」と述べています。現代のポピュリズム政治家はどのような政治をするのですか。次の中から、合致するものを二つ選びなさい。

1  ポピュリスト政治家は、ナチスなどに見られたようなファシズム的な政策を唱えることが一般的である。

2  ポピュリスト政治家は、世界的な市場の拡大によって社会的な格差が拡大したとして、福祉政策の充実を訴えている。

3  ポピュリスト政治家は、民族や言語の同質性に根幹を置き、地域的に限定された国民国家の再編を主張することが多い。

 4  ポピュリスト政治家は、巧みな選挙戦術を駆使して議会を牛耳ることで、政策決定の回路を我が物としようとしている。

5  ポピュリスト政治家は、伝統的に労働者階級に地盤を置いて、既得権益を握る人々を攻撃する政策なら何でも賛成する。

6  ポピュリスト政治家は、市場の自由化を図って新自由主義を主張し続ける一方で、文化的には伝統主義的な傾向が強くなっている。

7  ポピュリスト政治家は、移民排斥を主張すると同時に、市場の世界的な拡大を肯定しようとするため、一貫性に欠けることがある。

8  ポピュリスト政治家は、マスメディアの力を利用して、テロなどの事件が起きるたびに宣伝活動を繰りひろげて、勢力を拡大しようとしている。

 

問4  傍線部で、筆者はポピュリズムが「代表民主政に持つ含意を探る」と述べている。筆者はどのような「含意」を明らかにしていますか。それを説明した、次の文章の空欄のX~Z入る最適な語句を、本文の中から指定の字数でそれぞれ一つ抜き出して記せ(字数は句読点、記号、符号を含む)。

 筆者はポピュリズムが民主政を〔 X 〕(8字)わけではなく、逆に民主政が〔 Y 〕(4字)をおこしているからこそ台頭してくると述べている。従って、ポピュリズムはこれまで無視されてきた争点を政治に持ち込むことによって、サイレントマジョリティーと既存の政治勢力との間に生じた食い違いを〔 Z 〕(6字)にもなりうると、筆者は考えている。 

 

ーーーーーーーー

 

(解説・解答) 

問1(空欄補充問題)

①  (予備知識・教養を問う問題)

 本文を熟読・精読することは、勿論です。
 が、トランプ現象、イギリスのEU離脱、ポピュリズムを知っておけば、この問題においても、かなり有利だと思います。「トランプ旋風」というキーワードは、新聞・テレビなどのメディアに、よく登場していました。
 この問題も、論点についての予備知識・教養の重要性を知らせてくれます。

② 〔②〕を含む【8】段落が【7】段落の具体例であることに注目して、【7】段落の傍線部Bの「ポピュリズムは何よりも、政治が一部の人間に寡占され民意がねじ曲げられていることへの異議申し立て」に着目する必要があります。

③ 【1】段落「『一匹の妖怪が世界を徘徊(はいかい)している。ポピュリズムという名の妖怪が』」、【21】段落「『妖怪をはらい清める同盟』の実現」に注意してください

(解答)①=4  ②=3  ③=5


問2(抜き出し問題)

 →この問題は本文を熟読する前に見ておくべきです。

 傍線部Aを具体的に説明した文章が【17】段落にあることを読み取る必要があります。

  【5】傍線部A「(ポピュリズムは)本来は民主政に対する主権者の深い疑念と落胆を原動力とした政治現象だ」と、
【17】「こうした経済的・文化的不安は、権威主義的で現状変革志向の政治を呼び込む。開かれた社会を推し進めるグローバル化から剥奪感を抱く人々と、それを政治の力で変えると約束する政治家が呼応して、 ポピュリズム現象は生起していく」は、ほぼ同一内容です。

 (解答)経済的・文化的不安

 

問3(傍線部説明問題)

→この問題も本文を熟読する前に見ておくべきです。

①【11】・【12】段落を熟読してください。

→本文を熟読・精読することは、勿論です。

 が、トランプ現象、イギリスのEU離脱、ポピュリズムを知っておけば、この問題においても、かなり有利だと思います。

 「トランプ旋風」というキーワードは、新聞・テレビなどのメディアに、よく登場していました。 

 この問題も、論点についての予備知識・教養の重要性を知らせてくれます。

 2は【8】段落より、3は【15】~【17】段落より、それぞれ正解になります。

 7は、このような記述が本文には、ないので、誤りです。

(解答)①=4  ②=2・3


問4(空欄補充問題)

→この問題も本文を熟読する前に見ておくべきです。この問題は、「出題者による要約」の一部が空欄補充問題になっています。この問題を、本文を読む前に見ることで、大筋を把握することができます。また、空欄補充問題を解くうえで注意する表現を押さえることができるのです。

 X・Zについては、本文の「まとめ」部分である【18】~【20】段落の内容から判断してください。

 Xの「危機に陥れている」については【18】段落に、Zの「解消する契機」については【20】段落に、それぞれの記述があります。

 Yについては、Yを含む一文が「ポピュリズムの台頭」に関する記述であることに注目して、【9】段落第1文を熟読する必要があります。

(解答)

X=危機に陥れている  

Y=機能不全  

Z=解消する契機
 

 ーーーーーーーー

 

(出典) 吉田徹「ポピュリズムにどう向き合う」(『日本経済新聞』2016年2月4日・朝刊掲載)

 

(3)『ポピュリズムを考える』(吉田徹)の紹介・解説

 

【本書の方向性】

 多くの論考はポピュリズムを愚民政治の一種とのみとらえています。それに対して、本書は以下のように、むしろ、ポピュリズムは民主主義に必然的に生じる現象と考え、その功罪を分析するという姿勢で書かれています。

「  やや挑発的に言えば、私たちが生きている今の民主政治では、ポピュリズムは避けることができないのだ。それは民主主義に内在する固有の現象ですらあるかもしれないのだ。」
「  この本は、安直なポピュリズム批判を展開するのでも、反対にポピュリズムを擁護するものでもない。そうではなく、なぜポピュリズムが民主主義で生じるのかを考えることを目的にしている。」

「『民主主義』が不可避的に『ポピュリズム』を内在させているのだとしたら、私たちはどう行動したらいいのか」

 

 そして、「ポピュリズムについて考えることは、民主主義について考えることである」と著者は主張しています。

 

【ポピュリズムの問題性】

 「ポピュリズムの本質は『否定の政治』にある」と吉田氏は、述べています。
 ポピュリズムそのものは、必ずしも共通した政治姿勢を持たないのです。既得権益層・特権階級を否定するために、われわれ「人々(人民)」は立ち上がらなければならない、というのがポピュリズムの基盤です。

 そして、敵を設定しては攻撃するという習性を持つポピュリズムには、必然的に一種の破壊衝動を伴います。だからこそ、ポピュリズムを批判する人々が多いのでしょう。

 

【原因論】

 では、ポピュリズムはいかなる時に発生しやすいのでしょうか。
 ポピュリズムとは、本来は民主主義体制の下で主権者である「大衆」・「人々」が、受けるべき利益・権利が不十分である、特定階層に独占されていると感じる時、それを取り戻そうとする動きとして発生するものです。つまり、ポピュリズムは政治的・経済的な「ズレ」の中で、不可避的に発生するということになります。

 このように、「人々」の概念に、内部/外部の境界線を設定して、特定の「人々」という集団と、同時に彼らの共通の「敵」を作り出すことが、ポピュリズムの本質的特徴です。

 

 それでは、なぜ現代でも、ポピュリズムが発生しているのでしょうか。

 吉田氏は、大きな経済的・政治的な構造的要因として、グローバル化とサービス産業化による政治の分配システムのゆらぎがある、としてます。以下に、概要を引用します。

「  先進国では、グローバル化とサービス産業化が進んだ結果、大企業と労働組合との安定的な関係は崩壊し、流動的で組織的に忠誠心を持たない雇用者や労働者が中心を占めるようなっている。
 それゆえ、こうした大企業や労働組合などからなる社会集団の利益を政治に取り込み、公正に分配できていた政治のシステムは、むしろ非効率で不公平なものとみなされるようになっていく。
 既存の政党や政治勢力は、改革を続行することで新たな分配システムを構築しようとするものの、これが再び多くの有権者に疎外感をいだかせるようになる。
 他の一般的な政治現象と同じく、ポピュリズムは特定の構造的要因から生まれてくるのである。

 ポピュリズムを政治家個人のパーソナリティやイデオロギーに還元してしまうのでは、このポピュリズムのダイナミズム(→「動き」というニュアンスの意味)は理解できない。
 政治が揺らぐとき、そこには必ずポピュリズムが介在し、介入する空白地帯が生じる。そして、ポピュリズムは政治に対する不満に巣食い、そして不満がポピュリズムを成長させていく。つまり、ポピュリズムは私たちの生きる政治世界のリトマス試験紙のようなものなのである。」

 

【ポピュリズムの積極的側面】

 敵を作っては攻撃するという側面をもつポピュリズムには、必然的にある種の破壊衝動がつきまといます。だから、ポピュリズムを批判する人々が多いのです。

 しかし、筆者はポピュリズムには積極的側面(プラスの側面)もあると、以下のように指摘しています。

「  ポピュリズムの持つ力は、民主主義にとっての重要な要素の一つでもあることは、確かである。それは、政治エリートを中心に形成される形式的・理性的な民主主義と、『人々』の感情からなる実態的・情念的な民主主義との乖離を告発し、構造的に隠蔽された不満を政治の俎上に乗せる。ポピュリズムは、民主主義の不均衡を是正するいわば自己回復運動のようなものである」

  

 確かに、ポピュリズムによって、民主主義の問題点を明確化することはできます。しかし、ポピュリズムには危険性もあるのです。


【対策論】

 では、どうすればいいのか。

 吉田氏は、ポイントは、「『情念』のポピュリズムと、『理性』の参加民主主義を両立させることにある」と述べています。

 具体的には、「政治における『信念=情念』の回復」と「『参加民主主義』という経路」を提案しているのです。

 

 民主政治には、参加民主主義という手段・理論が存在します。

 参加民主主義の理論は、市民社会論や熟議民主主義論といった理論へと派生しています。

 その目的は、参加を通じた人々のエンパワーメント (→能力向上、権限付与)です。民主主義の過程になるべく多くの、多様な人々を参加させることにより、民主主義の実質化や充実を意図しているのです。

 吉田氏は熟議民主主義論の意義を次のように述べています。

「  平等な人々による非公式でゆるやかな討論の場を設けることで、たがいの意見や立場を開陳し、それらを交換することで、民主主義のコンセンサスと正当性を回復しようとする。
 これは、民主主義を形式的側面と『数の力』からいったん解放し、その過程で政治的リテラシーを高め、人間の人格的な完成をも視野に入れる。
 すなわち、参加=熟議の経路は、『投票』に矮小化される『多数派』のための民主主義とも、『交渉』を必要とされる『利益』を確保するための民主主義とも異なる形で、多様かつ多層的な共同体の人々の合意を尊重し、民主主義の正当性を高め、強化しようとする企てである。」

 

 要するに、吉田氏は、「ポピュリズムの危険性を避けつつ、ポピュリズムを乗り越え、ポピュリズムの目標を達成するための方策」として、「政治の情念的次元にあるポピュリズムと、理性的次元にある参加民主主義との間で戦線協定を結び、現状変革への意思とすること」を主張しているのです。

 

(4)吉田徹氏の紹介

  

吉田 徹(よしだ  とおる)

1975年生まれ。日本の政治学者。東京都出身。
1997年 慶應義塾大学法学部政治学科卒業2002年 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学修士課程修了。ドイツ研究振興協会DIGES II(Diploma for German Studies and European Studies)修了。2005年 東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学博士課程単位取得退学。
専門は、比較政治・ヨーロッパ政治。北海道大学法学研究科教授。芹沢一也主宰のシノドスアドバイザー。フランス社会科学高等研究院日仏財団リサーチ・アソシエイト。

 

【著書】

『ミッテラン社会党の転換―社会主義から欧州統合へ』(法政大学出版局、2008年)
『二大政党制批判論―もうひとつのデモクラシーへ』(光文社新書、2009年)
『ポピュリズムを考える―民主主義への再入門』(日本放送出版協会、2011年)
『感情の政治学』(講談社選書メチエ、2014年)
『「野党」論―それは何のためにあるのか』(ちくま新書、2016年)
などがある。

 

(5)当ブログにおける「ポピュリズム」・「トランプ現象」・「民主主義」に関する記事の紹介

 

 「ポピュリズム」・「トランプ現象」・「民主主義」は、2017年度の入試国語(現代文)・小論文における流行・頻出論点です。2018年度入試においても、流行が続く可能性が高いと思います。国語(現代文)・小論文対策として、ぜひ、参照してください。

  

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今回の記事は、これで終わりです。

次回の記事は、約1週間後に発表の予定です。

ご期待ください。

 

    

 

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