現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

2017早大国際現代文・解説・論点的中報告⑦・IT化社会・モラル

(1)2017では、センター現代文、東大、早大政経・法、学習院大、慶大経済(小論文)、大阪大、神戸大に続き、早大国際現代文にも、当ブログの予想論点記事が的中しました。

 2017でも、

①センター現代文(「科学論」)、  

②東大現代文(「科学と倫理」)、

③早大(政経)(法)現代文・学習院大現代文(「ポピュリズム」)、

④慶大経済小論文(「ソクラテス的思考」)、

⑤大阪大現代文(「文系の知」)、

⑥神戸大現代文(『考える身体』)

に続き、

早大国際教養学部現代文『「患者様」が医療を壊す』岩田健太郎)にも、当ブログの予想論点記事(  「 IT化社会の影・闇」、「科学論・モラル・信頼」 )が的中しました。

 つまり、2017早大国際現代文(『「患者様」が医療を壊す』岩田健太郎)に、当ブログの予想論点記事

「開設の言葉ー入試現代文の最新傾向ー重要な、気付きにくい2本の柱」

「国語予想問題『プロの裏切り・プライドと教養の復権を』神里達博」

が、的中しました。


 2016東大現代文ズバリ的中(全文一致)・2016一橋大現代文ズバリ的中(全文一致)に続く喜びです。

 そこで、今回は、2017早大国際現代文の問題解説をします。


 なお、これまでに発表した、

「2017の論点的中報告・問題解説記事①~④」については、

「2017の論点的中報告・問題解説記事⑤」に、リンク画像を貼っておきましたので、そちらを、ご覧ください。

  

gensairyu.hatenablog.com

 

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 2017年度の早大国際の現代文問題(『「患者様」が医療を壊す』岩田健太郎)では、以下のような内容の論考が出題されました。

 論点は「医者・患者の目指すべき関係」です。

 

 最近の「医者と患者の関係」の悪化の原因は、患者の権利意識の高まり(悪平等主義)ではないか。
 患者が自らの権利意識を背景に、インターネット等の情報に基づいて、医者に無理な要求をしたり、医者を糾弾しようとすればするほど、医者から良好な医療を得ることが困難となる。

 それは、患者にとって損失である。
 そこで筆者が提案するのは「お医者さんごっこ」である。
 つまり、医療の場で患者は医者を専門家(プロ)として信頼し任せる。また、医者は、患者とのコミュニケーションを充分にとって全力を尽くす。
 このように、患者も医者も、大人として、演技することが、「医者と患者の関係」を改善することの近道である。

 

 今回の問題(『「患者様」が医療を壊す』岩田健太郎 )は、

「IT化社(情報化社会)のマイナス面」→「専門家よりもインターネット上の情報を優先する」、
「自己中心主義」→「社会全体の幼児化現象」・「現代日本社会における共同性軽視の風潮」、
「『平等』の内容を誤解したことによる、極端な平等主義」→「悪平等主義」・「エリート・専門家を尊重しない風潮」、
「『権利』の内容を誤解したことによる、異様な権利意識」、
「科学に対する根拠不明な懐疑主義」→「一種の偶像破壊か?」、


つまり、「反知性主義」、「近代思想・現代思想そのもの」、

に関連しています。


 つまり、これらの現象に対して、

「医療の充実」・「真の共同性の復活」には、🍎「専門家のプライドを尊重するために、専門家を信頼することの必要性」、

ひいては、「良好な人間関係の構築には他者を尊重・信頼する必要があること」を呈示して、

根本的な現代文明批判」をしているのではないのでしょうか?

 

 このように考えると、今回の2017早大国際・現代文の問題は、かなりの良問と言えます。

 来年度の国語(現代文・評論文)・小論文対策のために、この問題は、よく理解しておくべきだと思われます。

 

 今回の早大国際の現代文問題は、当ブログの、当ブログの予想論点記事

「開設の言葉ー入試現代文の最新傾向ー重要な、気付きにくい2本の柱」

「国語予想問題『プロの裏切り・プライドと教養の復権を』神里達博」

を読んでおけば、かなり、分かりやすかったと思われます。

 

 これら二つの記事のポイントを、以下に、再掲します。

 

 まず、
「開設の言葉ー入試現代文の最新傾向ー重要な、気づきにくい2本の柱」で述べたキーワード、「IT化社会のマイナス面」、つまり、 「IT化社会の影・闇を記述した箇所を再掲します。

ーーーーーーーー(再掲、スタート)

 

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入試現代文(国語)・小論文の最新傾向として、注目するべきポイントとしては、2つの大きな柱があります。

 

【1】1つの柱は、「 IT化社会の光と影と闇」です。

 この論点・テーマは、3・11東日本大震災の前から登場していたので、割と有名ですが、最近のスマホ(スマートフォン)の爆発的な流行により、新たな論点・テーマが発生しています。

 スマホは、それまでの携帯電話とは、まるで違うものです。それだけに、プラス面、マイナス面も、携帯電話と比較して、拡大化・深刻化するのです。

 私が、「 IT化社会の光と影と闇」と書き、「光と影」だけにしなかったのは、事態の深刻性を強調するためです。

 

【2】もう1つの柱は、「3・11東日本大震災の各方面に対する影響」です。

 

ーーーーーーーー(再掲、終了)

 

 次に、
「国語予想問題『プロの裏切り・プライドと教養の復権を』神里達博」
の中の、「プロ・専門家を尊重する必要性」について記述した箇所を再掲します。

 

ーーーーーーーー(再掲、スタート)

 

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(2)「プロの裏切りープライドと教養の復権を」の解説

(神里達博氏の論考)(概要です)

(赤字は当ブログによる「強調」です。青字は当ブログによる「注」です)

「今年を振り返りながら改めて思うのは、「プロのモラル」に関わる事件が多かったということである。

 杭工事のデータ偽装(「三井不動産レジデンシャル」・「旭化成建材」)は典型例だろう。そのような行為は、企業ブランドを大きく傷つけ、また業界全体に対する不信を招きかねない、重大な裏切りである。

 今年は他にも、40年以上にもわたって組織的に行政の目を欺いてきた「化学及(および)血清療法研究所(化血研)」の不正や、「東芝」の不正会計など、類似する事例が多数、報じられた。これらに共通するのは、なんらかの専門性をもって社会に対して仕事を請け負っていた者が、主として経済的利益を増やすために、信頼に背く行為を行っていた、という点である。私たちは、このような「プロの裏切り」に対して、どう対処すべきなのか。すぐに聞こえてくるのは罰則や監視の強化を求める声だが、ここでは少し違う角度から考えてみたい。まず、専門家のモラルとは、どのように維持されてきたのか、歴史的な流れを確認しておこう。

     *

 日本語でいう「プロ」とは「プロフェッショナル」の略語だが、英語の「Profess=明言する」から派生した言葉だ。これは元々、キリスト教世界において、特別に神から召喚(→「人を呼び出す」という意味)されて就くべき仕事、すなわち、聖職者、医師、法曹家の三つを指していた。そこでは専門的な訓練とともに、職に伴う倫理が求められたのは言うまでもない。そして、それを担保するのは、個人の自律もあっただろうが、同業者の相互チェックも重要な意味を持っていたと考えられる。自分たちの仕事のいわば「品質保証」は、職能共同体による自治によって担われてきたのだ。

 この点は伝統的な「職人」の世界も似ている。倫理を下支えするのは、技に対するプライドというべきものであったはずだ。

 だが近代に入ると、さまざまな仕事が社会的分業によって行われるようになっていく。これはまさに、「専門家=エキスパート」と呼ばれる人たちの増大を意味するのだ。典型例は「科学者」であろう。職業としての科学者が出現してきたのは、19世紀の欧州である。

 このようにして、多数の専門家によって社会が運営されるようになってくると、伝統的な職能共同体に属する「プロ」や「職人」の倫理は、社会の背景へと退いていく。このような社会構造の変容に対して、最も早く警告を発した者の一人に、スペインの哲学者、オルテガがいる。彼は、大衆社会の出現とは、誰もが専門家となり、しかし自分の専門以外には関心を持たない、「慢心した坊ちゃん」の集まりになることだと看破した。そうやって「総合的教養」を失っていくヨーロッパ人を彼は「野蛮」と嘆いたのだ。

     *

 今、日本で起こっていることは、そのさらに先を行くものにも見える。素人には分からない狭く閉ざされた領域に住む「専門家」が、いつの間にか社会全体の規範から逸脱し、結局は自己利益の増大、あるいは自己保身のために、社会を欺く。この事態は実に深刻だ。

 とはいえ、この状況はいずれ、世界中を悩ます共通の難問となるかもしれない。なぜなら近代の重要な本質が「分業」である以上、この世界は専門分化によってどこまでも分断されていく運命にあるからだ。

 ならば、この流れに抗(あらが)う方法はあるのだろうか。

 おそらく鍵となるのは、かつての「プロ」や「職人」が持っていた「プライド」と、失われた「教養」であると考えられる。すなわち、「目先の利益」や「大人の事情」よりも、自らの仕事に対する誇りを優先させることができるか、そして自分の専門以外の事柄に対する判断力の基礎となる「生きた教養」を再構築できるかどうか、ではないか。

 そのために私たちにもすぐできることがある。それは利害関係を超えた「他者」に関心を持つこと、そして、その他者の良き仕事ぶりを見つけたら、素直に敬意(リスペクト)を表明することだ。人は理解され、尊敬されてはじめて、誇りを持てる。抜本的解決は容易ではないが、できれば罰則や監視ではなく、知性尊敬によって世界を変えていきたい。」
(「プロの裏切り・プライドと教養の復権を」  2015・12・18「朝日新聞」月刊安心新聞)

 ーーーーーーーー

 (当ブログによる解説)

 「プロのモラル違反」は、国民の生命・健康・財産に重大な悪影響を及ぼすことが多いので、深刻な問題です。それだけに、この問題の対策は、緊急の課題です。

 神里氏の言うように、確かに「罰則」・「監視」では、根本的・本質的な解決にはならないのです。しかも、厳重な「罰則」や「監視」の中では、専門家たちの意欲・やる気は、どうしても減退していくでしょう。それでは、長期的視点から見て、社会にとって賢明な対策とは言えません。

 私も、本質的解決は、「知性」・「敬意(リスペクト)」によるしかないと思います。たとえ、実現困難な道だ、としてもです。

 そのためには、日本社会は、今こそ、歪んだ「悪平等主義」・「悪平等思想」を見直すべきです。「高い専門性」・「高い能力」のある人間を素直に高評価するべきなのです。

 それこそ、真の「個性重視」ではないでしょうか。「個性」とは、ファッションなどの外見的なものではありません。能力・技能こそ「真の個性」の最たるものです。

 また、これこそ、「真のグローバル化」です。欧米では、医師・弁護士・IT技術者専門性の高い技術者などの専門家・プロ・エリートの高評価は、当然のことです。

 だとすれば、専門家・プロ・エリートには、「素直に」「敬意」を表し、様々な待遇面でも、「それなりの高待遇」をもって対応するべきです。

 専門家たちがプライド・誇りを持って、気持ちよく、レベルの高い、きちんとした仕事をすれば、それが社会の長期的利益につながるのです。

 歪んだ「悪平等思想」から離れ、長期的視点から、物事を考えることこそが、賢明な道なのです。
 これこそが、今回の問題の根本的な解決策だと思います。

ーーーーーーーー(再掲、終了)

 

 「患者様」が医療を壊す (新潮選書)

 

 

 

 

 

 

(2)2017早大国際教養現代文の解説ー『「患者様」が医療を壊す』岩田健太郎

 

(問題文本文)(概要です)

(赤字は当ブログによる「強調」です)

(青字は当ブログによる「注」です)

 

「  賢い患者になりましょう。
 こんな言葉がもてはやされたことがあります。実は僕も、「患者はもっと賢くあるべきだ」と思っていたクチです。
 薬の名前くらいちゃんと覚えておかねばならない。病気についてもちゃんと勉強しておく。賢い患者にならねばならない、という理念はアメリカでは常識的で、僕も「それが正しい」と固く信じていました。
 〔  a  〕「賢い患者になる」というコンセプト(→「概念・考え方」という意味)は「勝ち組になりましょう」というコンセプトです。これは勝ち組の立場からの意見であり、上から見た見解です。もちろん、賢くなって良いですよ。でも、そうでなければならない、と決めつけるのはよくないのです。
 最近僕は、患者さんにだっていろいろなあり方があって良いのだと思うようになってきました。〔   b   〕、繰返しの名前とかしっかり覚えてくるのはよいことですよ。インターネットで自分の病気について勉強するのも素晴らしいでしょう。しかし、何事も過ぎたるは及ばざるがごとし。僕らは病気と闘うため「だけ」に生きているわけではないのです。〔   c   〕こういうことに固執しすぎて、目を〔   X   〕と輝かせて、病気のことだけ考えている患者さんを診ると、僕はちょっと困ってしまいます。〔                 〕
 「先生にお任せします」
とにこにこと平和な顔でおっしゃる患者さんは実に幸せそうに見えることができた。そこまで無条件に主治医を信頼しているのですから。どんな薬を出されてもこういう患者さんは幸福です。こんな人にお節介を焼いて、

「医療の言っていることが正しいなんて保証はないんだから、ちゃんと薬の名前くらいチェックしておかなきゃダメよ。もしかしたら副作用が多かったり、値段の高い薬を押しつけられているかもしれないわよ。賢い患者にならなきゃ」なんて言ってはいけないのですね。〔  2    〕 

 「先生にもらった薬なんですが、名前は・・・・ああ、なんて言いましたっけ」
というのも結構じゃあないですか。これこそ信頼の表れではありませんか。良好な「お医者さんごっこ」がそこでおっしゃる行われているのです。
 別に薬の名前を調べたり、インターネットで病気の勉強をするな、というのではありません。どんどん勉強したらよいのです。でもそれが医者を糾弾する「がために」行う勉強であれば、本末転倒。「医者の揚げ足を取ってやろう」的な目的で行う知識の取得は邪悪な性質を帯びてしまい、それは長い目で見るとその患者さん自身の〔   Y   〕を損なっていくという非常に不幸な経緯をたどることになるのです。これでは何のために「賢い患者」になったのだか分かりません。
 本当に賢い人は、実は凡愚のように見えるものです。黒澤明の『椿三十郎』じゃないですが、抜き身の刃物を出しっぱなしにしているのは本当の賢さではないのです。「ここでは全てあなたにお任せ・・・・という態度が適切な振る舞い方だな」と認識できるならば、その人はさらに「一段高い賢さ」を備えているのだと僕は思います。
 「この先生は私のために生まれてきてくれたのだ」
 と考えることが出来れば、「お医者さんごっこ」として上出来なのだ、という話をしました。今からまったく逆の話をします。Aという正論の逆はBという暴論なのではありません。同時に 甲  矛盾する二つの概念が成立してしまうのが大人の世界です。〔 Z 〕「目の前の主治医はあなたのためにいるかけがえのない存在だ」と認識した方が良いのですが、その実、医者というのはあなたのためだけにいるわけではないのです。そういうことも同時に頭の片隅には置いておく。矛盾する概念を両方頭の引き出しに入れておいて、自由に都合良く活用する。これが「お医者さんごっこ」です。

 病気を診ず、患者を診る。

 という言葉があります。実は、僕の大嫌いな言葉です。通常は「良い言葉」とされるこの言葉が、なせば僕の神経を逆撫でしてしまうのでしょう。
〔   d   〕、病気と患者というのは対立概念ではありません。〔  3  〕患者があって病気があり、病気があるから人は「患者」と呼ばれるのです。両者は本来お互いを内包する、共存する概念で、少しも対立していません。
 少しも対立していないものを無理矢理対立させる。これは二項対立(→入試頻出キーワード)の好きな、単純思考な人たちの常套手段です。日本のマスメディアの常套手段でもあります。
 このようにありもしない対立概念を作ってしまい、仮想敵たる「病気しか診ない医師」に対するルサンチマン(→「恨み・憎悪」という意味)をつのらせ、そして自分はそうではない、正義の「患者を診る医者」であるべき、「こっち側」に引っ込む。テレビで見てると、こんな番組ばっかりでしょ、最近は。
 そのような恣意性と偽善性を僕は嫌うのです。  
 同じような理由で僕の嫌いな表現に「全人的に患者を診る」という言葉があります。全人的? 患者を全人的に診るなんてたいていの医者にあるとてもむりです。〔  4  〕そういう出来もしないことをべらべらと口にする軽薄さが好きになれない。こういうことを軽々しく口にしてはいけない。患者の「本当の気持ち」なんてそう簡単に分かるわけがないのに、「分かったようなふり」をする軽薄さが気に入らない。」  ( 岩田健太郎『「患者様」が医療を壊す』より )


ーーーーーーーー


(問題)

問1  空欄a~dに入る最も適切なものを次の中から、それぞれ一つ選べ。

 

あまり   ロ しかし   ハ そもそも

ニ ところで   ホ もちろん

 

問2  X~Zに入る最も適切なものを次の中からそれぞれ一つ選べ。

 

X  イ うるうる  ロ ぎらぎら  ハ くりくり

      らんらん  ホ りんりん

Y  イ 健康  ロ 常識  ハ 精神  ニ 知性  ホ 分別

Z  イ 偽善的には  ロ 現実的には

      ハ 合理的には  ニ ドグマとしては

      ホ ファンタジーとしては

 

問3  次の文は、本文中の空欄1~4 のどこかに入る。最も適切な場所を次の中から一つ選べ。

病気なんて、所詮(しょせん) 人生の一要素に過ぎないのですから。

 イ 1     ロ 2     ハ 3     ニ 4  

 

問4  傍線部甲「矛盾する二つの概念」が具体的に指すものとして最も適切なものを次の中から一つ選べ。

 

イ  賢い医者と愚かな医者

ロ  賢い患者と愚かな患者

ハ  病気しか診ない医者と患者を診る医者

ニ  唯一無二の主治医と万人のための医者

ホ  病気の勉強をする患者と主治医にお任せの患者

 

問5  「お医者さんごっこ」という表現が本文中に複数回出てくるが、筆者はこの表現をどのような意味で使っているか。最も適切なものを次の中から一つ選べ。

 

イ  患者は医者に無条件に従う。

ロ  患者は医者より劣っているようにふるまう。

ハ  主治医は私(患者)のためにいるのだと心から信じる。

ニ  医者と患者が共に建前と本音を上手に使い分ける。

ホ  心の中では医者を信じていなくても、口では「先生にお任せします」と言う。

 

問6  本文の内容と合致するものを、次の中から二つ選べ。

 

イ  医者を信頼する態度を示す患者は賢い。

ロ  凡愚のように見える人は、本当は賢い。

ハ  物事を固定的な二項対立として考えることは非生産的である。

ニ  賢い患者は病気のことを医者にすべてまかせてしまう。

ホ  インターネットで薬のチェックをしている患者は賢くない。

へ  病気しか診ない医者の方が患者しか診ない医者より優れている。

  

ーーーーーーーー

 

(解説・解答)

問1(接続語の空欄補充問題・選択問題)

 空欄前後の文脈を精読・熟読するようにしてください。

 自分でメモした要約を元に考えることは、やめるべきです。

 私は、当ブログのこれまでの記事で、受験生による「要約のメモ」に基づく読解が、いかに有害無益か、を何度も説明してきました。

 実際に、入試本番で、時間不足、精読・熟読の不足、自分の不完全な要約メモに依存することによる混乱、などで失敗した受験生は、私の意見に納得してくれるはずです。

 入試本番の厳しい時間制限を考慮しない、極度に理想主義的な指導者の言葉に、そのまま従うのは、賢明ではありません。

 

(解答) a ロ   b ホ   c イ   d ハ

 

問2(空欄補充問題・選択問題)

X  慣用表現です。一つ一つ、地道に覚えていくだけです。

 

Y  別に薬の名前を調べたり、インターネットで病気の勉強をするな、というのではありません。どんどん勉強したらよいのです。でもそれが医者を糾弾する「がために」行う勉強であれば、本末転倒。「医者の揚げ足を取ってやろう」的な目的で行う知識の取得は邪悪な性質を帯びてしまい、それは長い目で見るとその患者さん自身の〔 Y 〕を損なっていくという非常に不幸な経緯をたどることになるのです。

の文脈を、丁寧に把握してください。

 「医者に行く」ということは、健康の回復が目的です。 

 しかし、「医者の揚げ足を取ってやろう」的な目的で行う知識の取得は、本来の目的に反するということを、ここでは言っているのです。

 

Z 直後の「その実」に着目してください。

   「[    Z ]「目の前の主治医はあなたのためにいるかけがえのない存在だ」と認識した方が良いのですが、その実、医者というのはあなたのためだけにいるわけではないのです。

となっていますから、[  Z  ]その実」は、対応関係になります。

 

(解答)  X ニ   Y イ   Z ホ

 

問3(脱文挿入問題)

 空欄 Ⅰ の2文前の表現との関係に注目してください。

   「僕らは病気と闘うため「だけ」に生きているわけではないのです。〔 c 〕こういうことに固執しすぎて、目を〔 X 〕と輝かせて、病気のことだけ考えている患者さんを診ると、僕はちょっと困ってしまいます。

 つまり、筆者は、「病気」を、それほど重大視しては、いないのです。

 

(解答) イ

 

問4(傍線部説明問題)

 直後の文脈に着目するとよいでしょう。

[    Z ]目の前の主治医はあなたのためにいるかけがえのない存在だ」と認識した方が良いのですが、その実、医者というのはあなたのためだけにいるわけではないのです。そういうことも同時に頭の片隅には置いておく。矛盾する概念矛盾する概念を両方両方頭の引き出しに入れておいて、自由に都合良く活用する。これが「お医者さんごっこ」です。

 赤字に注目して熟読するとよい、と思います。

 

(解答)  ニ

 

問5(説明問題)

 空欄を含む文の、2つ後ろの文の表現がポイントになります。

同時に甲矛盾する二つの概念が成立できるしてしまうのが大人の世界です。〔 Z 〕「目の前の主治医はあなたのためにいるかけがえのない存在だ」と認識した方が良いのですが、その実、医者というのはあなたのためだけにいるわけではないのです。そういうことも同時に頭の片隅には置いておく。矛盾する概念を両方頭の引き出しに入れておいて、自由に都合良く活用する。これが「お医者さんごっこ」です。

 

(解答)  ニ

 

問6(内容判定問題)

 この問題は、本文を読む前に、選択肢を先に読んで、ポイントをチェックしておくべきです。

 

(解答)  イ・ハ

 

 (3)解説

 

 筆者は、最近の「医者と患者の関係」の悪化の原因を、患者の過度の権利意識の高まりが、原因ではないかと述べています。最近の患者の中には、いろいろと、面倒な人もいるようです。インターネット上の不正確な情報をもとに治療方針に注文をつける場合もあるようです。

 患者が「自らの権利意識」や「インターネット上の不正確な情報」を背景に、医者に無理な要求をすればするほど、医者から得られるべき良好な医療を得ることが困難となると、筆者は主張しています。

 ここで、筆者の提案するのは、「お医者さんごっこ」です。つまり、患者は医者を専門家として尊重して、信頼し任せる。一方、医者は、患者を「お客様」として扱うのではなく、患者とのコミュニケーションを充分にとって全力を尽くす。充分にコミュニケーションをとって全力を尽くす。
 このように患者も医者も振舞う(演技する)ことが、「患者と医者の関係」を改善することの近道であるとしています。
 確かに、医者も人間ですから、患者から信頼されれば、気持ちよく仕事ができます。
 結局、お互いを尊重して、充分なコミュニケーションをとることで、良い医療が得られるのではないかと、筆者は考えます。

 

 (4)本書の筆者紹介


岩田 健太郎(イワタ ケンタロウ)

1971年、島根県生まれ。島根医科大学(現・島根大学医学部)卒。米国アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院勤務などを経て、神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学分野教授。

 

著書に

『主体性は教えられるか』(筑摩選書)、

『悪魔の味方ー米国医療の現場から』(克誠堂出版)、

『感染症外来の事件簿』(医学書院)、

『感染症は実在しないー構造構成的感染症学』(北大路書房)、

『予防接種は「効く」のか?ーワクチン嫌いを考える』(光文社新書)

『1秒もムダに生きないー時間の上手な使い方』(光文社新書)、

『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、

『ためらいのリアル医療倫理ー命の価値は等しいか?』(技術評論社)、

など多数がある。

 

ーーーーーーーー

 

今回の記事は、これで終わりです。

次回の記事は、約1週間後に発表の予定です。

ご期待ください。

 

   

 

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