現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

2016一橋大現代文ズバリ的中報告・解説・解答-長谷正人氏の論考

(1)一橋大学現代文(国語)ズバリ的中報告-来年度以降の予想問題も兼ねて

 このブログの予想問題記事、「予想問題-3・11津波ビデオ(個人撮影)の影響力に関する論考」(2016年1月26日発表)が、一橋大学現代文(国語)にズバリ的中したことを報告いたします。

 

 2016年一橋大学国語の大問[1]と全文一致、設問一致でした。

 大問[1]は、設問が4つです。

 漢字書き取り。

 語句の意味説明問題。

 記述問題(80字以内)が2つ。

 そのうちの、2つの記述問題は、私の予想問題記事で説明した箇所でした。

 まさに、ズバリ的中です。

 下の画像から、この予想問題記事に、リンクできます。

  

   

 予想問題として取り上げた論考は、長谷正人氏の「大量消費社会とパーソナル文化」(『世界思想』世界思想社・2015年春号所収・2015年発行)という論考です。

 

 長谷正人氏の著書は、以下の通りです。

『悪循環の現象学-「行為の意図せざる結果」をめぐって』(ハ-ベスト社)

『映像という神秘と快楽-"世界"と触れ合うためのレッスン』(以文社)

『映画というテクノロジ-経験』(青弓社)

『敗者たちの想像力-脚本家山田太一』(岩波書店)

『クイズ化するテレビ』(青弓社ライブラリー)

 以上のうち、『映像という神秘と快楽-゙世界゛と触れ合うためのレッスン』(ハーベスト社)と『敗者たちの想像力』(岩波書店)は、現代文(国語)・小論文入試頻出出典なので、読むことを、お勧めします。

 

 長谷正人氏の論考は、最近、北海道大学、早稲田大学の現代文(国語)問題として出題されたので、私は注目していました。

 私は、この「大量消費社会とパーソナル文化」という論考を読んだ時に、これは、近いうちに、難関国公立私立大学の現代文(国語)・小論文に出題されると思いました。

 なぜなら、この論考は、3・11東日本大震災に関連しているからです。

 私は、3・11以降の入試現代文(国語)・小論文の最新傾向として、3・11関連のテ-マ・論点が多く出題されていることを把握しています。

 

 しかも、この論考のレベル、そして、総字数が、難関大学の現代文(国語)・小論文問題として適切だと思ったからです。

 

(2)2016一橋大学国語[1](現代文)の解説・解答ー来年度以降の一橋大学現代文の対策を意識して解説します

 

 この記事を読むことで、一橋大学の独特な設問の作り方、問題作成者の出題意図・問題意識が分かり、来年度以降の一橋大学現代文(国語)の対策にも役に立ちます。

 一橋大学現代文(国語)対策としても、この記事を熟読してください。

 

 【】は、このブログで付加した入試問題本文の段落番号です。

 また、カタカナは、漢字書き取り問題です。

 なお、設問は、(問い1)~(問い4)です。

 

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問題1  次の文章を読んで後の問いに答えなさい。

(問題文本文)

【1】「テレビが溢れ出てくるようだ」と心の中で呟いていた。

(以下は、このブログによる要約→2011年3月の東日本大震災の津波の場面をテレビで見た時のことである。)

【2】(前半部は、このブログによる要約→むろん、テレビが津波映像の中に映っていたわけではないから、冒頭の言い方はおかしいかもしれない。だが、津波が押し流して行くその家屋の中には、テレビ等の電化製品がいっぱいに詰まっていただろう。)

 そうした電化製品に囲まれた安楽な文明生活が、津波の力でまるごと大地から引き剥がされて、いままさにその「安楽な」環境の中でテレビを見ている私の方向に向かって流れ出してくるかのような恐怖を覚えたのだ。実際、そうした電化された生活環境は、まさに「テレビ」というメディアの力によって(1960年代以降)、歴史的に作り出されてきたものではなかったか。だから私は、津波に押し流されているのは、私たちが共有しているテレビ的な文明生活それ自体であるようにさえ思えた。

 

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(問い3)傍線①「テレビが溢れ出てくるようだ」とあるが、なぜテレビなのか、文脈に即して答えなさい(80字以内)。

 

……………………………

(解説・解答)

 この設問については、このブログの予想問題記事において、以下のように説明しました。

 設問ズバリ的中です。

 

〈ちなみに、冒頭の「『テレビが溢れ出てくるようだ』」という文章は、著者によれば、「テレビの力によって作り出されてきた文明生活が、テレビを見ている自分に向かって流れ出してくるかのような恐怖」を表現したものとのことです。〉

 

 解答としては、「流れ出してくるテレビ」は、文明生活の「象徴」であるとともに、文明生活の、ある意味での「製作者」であることに注目して、上記の私の「説明」を、まとめると 、よいでしょう。

 

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(問題文本文)

【3】(このブログによる要約→逆に言えば、1950年代半ばまで日本の家庭生活は、家電製品を必要としていなかった。だから、さまざまな家電製品を備えた近代的家庭生活は、幸福な生活の記号・イメ-ジとして、テレビ・メディアによって普及されたものだった。)

【4】(前半部分は、このブログによる要約→60年代の人びとはひたすら豊かな生活というイメ-ジに囚われて走って行った。)

 だからそうした大量消費生活のありようは、60年代を席巻した高度経済成長の負の側面が、公害問題、石油危機、ドルショックなどによって露わになった70年代初頭になって、一挙に疑いの目を向けられるようになった。

【5】(このブログによる要約→だから、若者たちを中心に、文明的な便利さを拒絶して自然の中で精神的に豊かに生きようとするオルタナティブな生活を探求する運動が展開されたのだ。)

【6】(このブログによる要約→生活のありようを問い直そうとする70年代的な文化革命の潮流は、細々とした流れとして探求され続け、いつの間にか私たちの生活の隅々に流れ込んで人びとの生活感覚や意識を変化させつつあると言っても良いかもしれない。)

【7】ここで私が取り上げたいのは、パーソナル・コンピューターの普及によって起きた②生活文化の変容のことである。

(このブログによる後半部分の要約→むろん、否定的に考えれば、パソコンは大量消費社会の製品の一種にすぎないだろう。しかしにもかかわらず、このテクノロジ-は、一人一人の個人が自分のパーソナルな内面世界と向き合うための道具として発明された、反=テレビ文明的なテクノロジ-であることも間違いないのだ。)

【8】だから私たちの社会はこの機械の影響を受けて、知らず知らずのうちにパーソナルな内面的世界を表現する文化を育ててはいないだろうか。

(このブログによる後半部分の要約→私たちが感じた小さな心の動きを、自分なりのやり方で映像として表現することというような、映像文化のDIY化とでも呼ぶべき現象は、70年代に始まったパーソナル文化革命が私たちの生活の中に浸透してきたことの証左(傍線D・ショウサ)だと思う。)

【9】~【11】(このブログによる要約→最後に、もう一度津波の映像を思い出してほしい。私が衝撃あのパーソナルな映像は、実は私たちの世界観にそれは、匿名(傍線E ・トクメイ)の人びとの私的世界のありように自分の想像力を広げるようなパーソナルな欲望を育むための訓練となったのではないか。)

-長谷正人「大量消費社会とパーソナル文化」

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(問い4)傍線②「生活文化の変容」とあるが、どう変容したのか、答えなさい(80字以内)

……………………………

(解説・解答)

 この設問についても、このブログの予想問題記事で、本文の要約として、以下のように説明しました。

 設問ズバリ的中です。

 

 〈70年代的な文化革命の潮流は、細々と続き、人びとの生活感覚・意識を変化させつつあるのではないか。

 特に、取り上げたいのは、パソコンの普及により起きた生活文化の変容である。(→傍線②そのものです。)

 パソコンは、一人一人の個人が、自分の内面世界と向き合うための道具として発明された「反=テレビ文明的」側面があるからだ。

 だから、私たちの社会は、この機械の影響下で無意識のうちに、パーソナルな内面的世界を表現する文化を育てているのではないか。

 その一例が、東日本大震災の時の、あの個人撮影の津波の映像である。〉

 

 解答としては、以上の点を、まとめると、よいでしょう。

 

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(その他の設問・解答)

 

 なお、問い1、2の問題・解答を、ここに記述しておきます。

 

(問い1)傍線A・B・・・・Eのカタカナで書かれた語句を漢字で書きなさい。

 A→凄まじい

 B→狂奔

 C→隆盛(→最近の流行の漢字)

 D→証左(→最近の流行の漢字)

 E→匿名

 

(問い2)傍線ア「お仕着せ」、傍線イ「俯瞰」の意味を答えなさい。

 「お仕着せ」→外から一方的に与えられた物事。

 「俯瞰」→高い場所から見下ろすこと。(→意味を問う問題として頻出)

 

(3)総評-本問は決して易しくない。ただ、私としては、最終段落の名文を、もう少し聞いてきて欲しかった。この論考は来年度以降の現代文(国語)・小論文問題としても要注意。

 

 この問題は、決して易しくは、ありません。

 用語のレベルが、ハイレベルだからです。

 「オルタナティブ」「対抗文化」「サブカルチャー」のキーワードの意味を正確に理解していないと、本文を理解することはできないからです。

 これらのキーワードは、最近の流行のキーワードなので、「教養」として、前もって知っておくべきでした。

 一橋大学の現代文(国語)対策としては、ハイレベルのキーワードのマスターが不可欠です。

 

 

 ただ、私としては、【10】段落の「ホ-ムビデオのカメラで捉えられたあの津波映像は、実は私たちの世界観にパーソナルな感覚による変化をもたらしたのではないか。それは、匿名の人びとの私的世界のありように自分の想像力を広げるようなパーソナルな欲望を育むための訓練の一歩となったのではないか」の部分の意味を問う問題を出してほしかったと、考えています。

 この部分は、かなり本質的なことを論じています。

 長谷正人氏は、3・11東日本大震災をきっかけに、私達の「世界観」「人生観」が変化したことに言及しているのです。

 この点については、この問題にズバリ的中した予想問題記事を、よく読んでおいて下さい。

 もし、来年度以降に、他の難関大学の現代文(国語)・小論文で、この論考が出題されることがあれば、重要な設問になることと思われます。

 そのために、難関国公立私立大の現代文(国語)の対策を意識して、この記事を書いています。

 

 ともあれ、この論考は、来年度以降も他の難関大学で出題の可能性があります。

 良問は、つまり、レベル的にも、字数的にも、入試にふさわしい論考は、「入試頻出出典」になるのです。

 私は、そのような具体例を何度も見てきました。

 この論考は、そうなる可能性が大だと思います。

 一橋大学のこの文章を、よく読んでおいた方がよいでしょう。

 

(4)これからの、このブログの方針

 

 今年は、このブログの予想問題記事から、今までに判明しただけでも、一橋大学のほかに、

 

東京大学(←2016年2月10日発表・「予想問題・『日本の反知性主義』(2015年発刊)内田樹氏の論考」・下の冒頭記事画像からリンクできます。)、

 

静岡大学(←2016年2月13日発表・「予想問題・『日本の反知性主義』・鷲田清一氏の論考・異文化理解」)

にズバリ的中が出ました。

 

 私としては、これ以上の喜びは、ありません。

 これからも、大胆に予想問題記事を発表していくつもりです。

 長年の経験に基づいて。

  

   

 リンクできます↓

 

  予習した問題がズバリ的中した時の心構えについては、以下の記事の「(3)本番でズバリ的中が発生した時の注意点」を、ぜひとも、ご覧ください。

 


 

 

【私のプロフィール】

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(下の『敗者たちの想像力』は最近の入試頻出出典なので、おすすめします。Amazon にリンクできますので、ぜひ一度、ご覧になってみてください。)

  

 私は、ツイッタ-もやっています。こちらの方もよろしくお願いします。(リンクできます)

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