現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

2018予想論点/体系的整理①/東日本大震災と哲学的論考

(1)入試直前特集/2018予想論点・予想出典/体系的整理①/東日本大震災と哲学的論考

 

 今回の記事は、「入試直前特集/2018予想論点・予想出典/体系的整理①/東日本大震災と哲学的論考」です。

 

 当ブログは以下の基本的方針で作成しています。

 この基本的方針は、現在も変わっていません。

 以下に、当ブログの第一回記事の「開設の言葉」を引用します。

 

gensairyu.hatenablog.com

 

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(引用開始) 

(青字は当ブログによる「注」です)

(赤字は当ブログによる「強調」です)

(以下、同じです)

 

(2)入試現代文(国語)・小論文の最新傾向ー重要な、気付きにくい2本の柱

 今現在の入試現代文(国語)・小論文の最新傾向として、注目するべきポイントとしては、2つの大きな柱があります。

 

【1】1つの柱は、「IT社会の光と影と闇」です。

 この論点・テーマは、3・11東日本大震災の前から登場していたので、割と有名ですが、最近のスマホ(スマートフォン)の爆発的な流行により、新たな論点・テーマが発生しています。

 スマホは、それまでの携帯電話とは、まるで違うものです。それだけに、プラス面、マイナス面も、携帯電話と比較して、拡大化・深刻化するのです。

 私が、「IT社会の光と影と闇」と書き、「光と影」だけにしなかったのは、事態の深刻性を強調するためです。

 

【2】もう1つの柱は、「3・11東日本大震災の各方面に対する影響」です。

 「各方面」は、実に多方面にわたっています。

 入試現代文(国語)・小論文の問題を読んでいると、現代文明論(文明論)、科学批判(近代科学論・現代科学論)以外に、自己論(アイデンティティ論)・環境論・人間関係論・人生論・政治論(民主主義論等)等、「影響」が思いもしない方面にまで及んでいる事に、驚かされます。

 「影響」は、「単なる影響」のレベルでは、ありません。今までないくらいに大きく、底知れぬほど深く、長期的なものと言えます。

 2015年の入試現代文(国語)・小論文にも、その影響は続いています。

  私は、2013年3月に出版した自分の参考書(『頻出 難関私大の現代文』開拓社)の「あとがき」に以下のように書きました。

 

  「2011年の東日本大震災・福島原発事故は、これ以降の難関大入試の現代文・小論文に、かなり大きな影響を与えたようだ。あの事件は、今振り返ってみても、第二次世界大戦に匹敵する出来事なのだと思う。

  2012年の難関大の入試問題を精査してみると、それまでよりも、本質的・哲学的文章、人間関係・人間存在・生命・科学批判・安全・時代の混乱に焦点を絞った文章が、目立ってきている。

 私は、この変化をとても好ましいものだと思っている。本来、現代文の入試問題は、本質的・哲学的文章であるべきだと思っているからだ。

 あらゆる学問の基礎には哲学的視点が不可欠であり、これは欧米では当然の前提である。日本の高校・大学の教育にそれが不足している事に、私はこれまで、少なからず危機感を感じていたのである。

 今回、この参考書の依頼が来た時、私は難関大入試におけるこの傾向の変化を、いかに本書に取り入れるかに腐心した。

 東日本大震災以降、日本人全体の価値観は、大きく変わったのだと感じる。まだ明確には、その全体は把握できないが、何かが大きく変わったのは確かだ。

 よく分からないが、良い方向への変化だとは感じる。

 その実体を探ることは、我々の日々の課題だと思う。

 そして、より良い方向へと進路を変えていくことも」

 

 2015年の難関大学の入試問題(現代文(国語)・小論文)を概観しても、あの時と同じ感想を持ちました。入試現代文(国語)・小論文は、まっとうな道を選んでいるようです。

(引用終了)

 

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(今回の記事の記述)

 2016・2017年度の入試国語(現代文)・小論文に出題された問題を概観しても、上記の傾向に変化はないようです。

 私は、以上の「IT社会の光と影と闇」・「3・11東日本大震災の各方面に対する影響」の2つの視点(入試頻出論点・流行論点)を重視して、最近の論考を読んでいます。そして、特に注目するべきものを、「予想出典」・「予想問題」として、週に1回のペースで当ブログで記事を発表しています。

 2017年度も、その方針で、約50の記事を発表しました。

 

 東日本大震災以後は、ハイレベルで良質な哲学的論考が多く発表されたこともあったので、今年の記事には、哲学論考の割合が増加しました。

 そこで、今回の記事では、難関大学国語(現代文)・小論文対策として、「東日本大震災」に関連した「哲学」・「哲学的論考」を題材にした「予想出典記事」・「予想問題記事」を紹介していきます。一部、2016年度に発表した記事も含みます。

 

 東日本大震災以後、良質な哲学的論考が多く発表されています。

 下の『ニコ生思想地図』の告知コピーは、この現象を象徴している感じです。

 

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(引用開始)
  「暇」と「退屈」という日常的で身近なものごとから哲学のコアへと、一気に急行していく『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎・朝日出版社)は、哲学という学の持つポテンシャルを見事にみせつけています。

 収束しない原発問題に、復調の兆しが見えない日本経済。

 危機が覆っているにもかかわらず、日常がいまだ続いているかに見える震災以後の現在。

そうした壁を突破するために、いまこそ「哲学」が本気を出すべき時が来たのではないでしょうか。

  『思想地図β』編集長で「哲学者」でもある『一般意志2.0』の著者東浩紀と國分氏が、震災以後の哲学の可能性を徹底的に語ります!
(『ニコ生思想地図』「震災以後、哲学とは何か」國分功一郎×東浩紀)

 (引用終了)

 

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 (今回の記事の記述)

今回の記事の項目は以下の通りです。記事は約1万字です。

 

(2)國分功一郎氏・関連記事の紹介

 ① 予想問題『暇と退屈の倫理学』國分功一郎/消費社会・真の豊かさ

 ② 予想問題「好きなこととは何か?」『暇と退屈の倫理学』國分功一郎

 ③『中動態の世界』國分功一郎/哲学/現代文・小論文予想出典(前編)

 ④『中動態の世界』國分功一郎/哲学/現代文・小論文予想出典(後編)

(3)予想問題『ゲンロン0 観光客の哲学』東裕紀/哲学/グローバリズム

(4)予想問題『日本文化の論点』宇野常寛/2014早大社会過去問

(5)予想問題『しんがりの思想 反リーダーシップ論』鷲田清一・地域社会

(6)予想問題「シン・ゴジラ」御厨貴・「戦後」と「災後」・東日本大震災

(7)ニヒリズム→「予想問題 「ナウシカとニヒリズム」 重田園江・2014学習院大過去問」

(8)科学批判①→「2017東大国語第1問(現代文・評論)的中報告・解説・科学と倫理」

(9)科学批判②→「2012東大国語第1問(現代文)解説『意識は実在しない』河野哲也」

 

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)

 

 

(2)國分功一郎氏・関連記事の紹介

 

① 予想問題『暇と退屈の倫理学』國分功一郎/消費社会・真の豊かさ

 

gensairyu.hatenablog.com

 

(今回の記事の記述) 

 國分功一郎氏は、最近の入試頻出著者です。『暇と退屈の倫理学』は、入試頻出著書になっています。最近発表された『中動態の世界』も内容的にみて、入試頻出著書になる可能性が高いでしょう。

 当ブログでは、今年、『暇と退屈の倫理学』と『中動態の世界』に関して、それぞれ2本ずつの予想問題記事を発表しました。以下で紹介します。

 

  『暇と退屈の倫理学』は、東日本大震災以後、日本に蔓延する同調圧力に対する異議として書かれた側面があります。そのことは、以下の、2つの「BOOK紹介」から推測されます。 

 

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●朝日新聞やニューヨークタイムズのインタビューで注目を浴びる気鋭のスピノザ研究者が、「3・11以降の生き方」を問う。はつ剌と、明るく、根拠をもって「よりよい社会」を目指す論客のデビュー。

何をしてもいいのに、何もすることがない。

だから、没頭したい、打ち込みたい・・・・。

でも、ほんとうに大切なのは、自分らしく、自分だけの生き方のルールを見つけること。

 

●昨年 発表した著書、『暇と退屈の倫理学』が、哲学書としては異例のヒットを記録。
國分さんは、このテーマを追求することで、去年の3月11日以降、私たちが大切にするべきものは何なのかを問いかけ、多くの反響を受けています。

『暇と退屈の倫理学』「Book紹介」

 

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(今回の記事の記述)

   「予想問題『暇と退屈の倫理学』國分功一郎/消費社会・真の豊かさ」の記事における重要部分を以下に紹介します。

 

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(引用開始)

(当ブログによる解説)

 第四章以下では「消費と労働」、「疎外」について考察しています。
 つまり、現代人は、ある程度の「豊かさ」と「暇」を入手したが、その「暇な時間」に何をしたいのか、よく分からない人が多い。人類は他の動物と異なり、環世界を変幻自在に飛び回ることができる自由な存在であるために、退屈を嫌う。その点に企業・広告業界等が注目し、人々が余暇に行うであろう欲望の対象を用意し、広告宣伝等により誘導する。つまり、私たちの需要・欲求は、あらかじめ企業等の供給側によって支配されているという構造があるのです。
 これに対して、國分氏は、受動的で際限のない、虚しい「消費」を批判し、「真の豊かさ」としての「浪費」の意義を強調しています。
 そして、真の豊かな「浪費」を享受するために、浪費を味わえるようにする一定の訓練と、動物的「とりさらわれ」(→「熱中。集中」という意味)の重要性を主張するのです。

 (引用終了)

 

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② 予想問題「好きなこととは何か?」『暇と退屈の倫理学』國分功一郎

 

gensairyu.hatenablog.com

 

(今回の記事の記述)

  以下に、「予想問題「好きなこととは何か?」『暇と退屈の倫理学』國分功一郎」

 の冒頭部分を紹介します。

 

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(引用開始)

 最近、当ブログでは、流行出典である『暇と退屈の倫理学』の入試頻出箇所(「第4章 暇と退屈の疎外論ーー贅沢とは何か?」) について、予想問題記事を発表しましたが、同じく、頻出箇所である「序章 好きなこととは何か」を題材にして、予想問題(予想論点)を解説することにしました。

 問題としては、「2013年度同志社大学過去問」と「当ブログによる予想問題」を使用します。

 (引用終了)

 

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③『中動態の世界』國分功一郎/哲学/現代文・小論文予想出典(前編)

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 (今回の記事の記述)

  『中動態の世界』は、『暇と退屈の倫理学』の「真の自由追求のテーマ」をさらに深め、発展させようとしているのでは、ないでしょうか?

 「真の自由とは、決して、自己の自由意志を行使することではない。それは、近代に特有の誤解であり、偏見にすぎない。」

 本書を読み、私は、「國分氏は、そのように主張しているのだ」と感じました。

 本書は、近代批判・現代文明批判・現代文明論・現代社会論の名著です。

 

 以下に「『中動態の世界』國分功一郎/哲学/現代文・小論文予想出典(前編)」の重要部分を再掲します。

 

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 (引用開始)

『中動態の世界』(前編) 以下では、「能動/受動の二分法」と「意志・責任」の「密接な関係」についての記述が展開されます。本書の最重要部分です。大げさに言えば、この世の中の隠されたスリラーについて、冷静に記述されています。

「 『能動と受動の区別』は、すべての行為を『する』か『される』かに分配することを求める。しかし、この区別は、以上のことを考えてみると、非常に不便で不正確なものだ。だが、それにもかかわらず、われわれはこの区別を使っている。そしてそれを使わざるをえない。どうしてなのだろうか。」(P21)

「  能動/受動の区別の曖昧さとは、要するに、意志の概念の曖昧さなのではないか? 一方、能動や意志という概念は実に都合よく使われるものである。」(P24~26)

 

 上記の「能動や意志という概念は実に都合よく使われるものである」については、以下のように説明しています。

「  能動における『する』という行為の出発点は『私』にあり、また『私』こそがその原動力であることを強調する。だから、そこには『意志』の存在が喚起されてくる。そして、自分の『意志』で自由に選択した行為であるからには、そこには『責任』が伴ってくることにもなる。」(P22)

「  責任を負うためには人は能動的でなければならない。人は能動的であったから責任を負わされるというよりも、責任あるものと見なしてよいと判断されたときに、能動的であったと解釈されるということである。意志を有していたから責任を負わされるのではない。責任を負わせてよいと判断された瞬間に、意志の概念が突如出現する。

  『夜更かしのせいで授業中に居眠りをしているのだから、居眠りの責任を負わせてもよい』と判断された瞬間に、その人物は、夜更かしを自らの意志で能動的にしたことにされる。

 つまり、責任の概念は、自らの根拠として行為者の意志や能動性を引き合いに出すけれども、実はそれらとは何か別の判断に依拠しているということである。」(P25・26)

  (引用終了)

 

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『中動態の世界』國分功一郎/哲学/現代文・小論文予想出典(後編)

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 (今回の記事の記述)

 上記の記事から重要部分を紹介します。

 

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 (引用開始)

 『中動態の世界』は、最近のベストセラーになっています。

 近代的常識や「べき論」の牢獄からの穏当な脱走を提案する、現代人救済のための哲学書です。

 近代批判の良書です。

 丁寧に、分かりやすく記述されているので、難関大学を目指す受験生、高校生であれば、充分に楽しめることでしょう。高校生、受験生は、最低1冊は、國分功一郎氏の著書を読んでおくべきでしょう。

 入試のレベルで見ると、入試出典として採用されやすい論考には、一定のポイントがあります。未知のユニーク視点、日本語として美しい文、明快な論理構造などです。
 本書は、これらのポイントを充分に満たしています。

 本書が、来年度以降の国語(現代文)・小論文問題として出題される可能性は、かなり高いと思われます。

 そこで、国語(現代文)・小論文対策として、予想出典記事を発表します。

  『中動態の世界』は密度の濃い論考であり、「入試題材の宝庫」なので、今回の予想出典記事は、前編・後編の2回に分けて発表します。

 今回は前回の「『中動態の世界』國分功一郎/哲学/現代文・小論文予想出典(前編)」(→主に本書の前半を中心に解説しました)に続く、その「後編」(→主に本書の後半を中心に解説します)です。

 『中動態の世界』の後半では、アレント、ハイデッガー、スピノザ等の偉大な哲学者達の説を、國分氏が解明した「中動態の世界」の視座から読み直すことで、彼らの説をより明快に解説しています。

 ただ、國分氏は、偉大な哲学者達の論理や直感に一定の評価をして、彼らの学問的価値を高めようとしています。彼らへの畏敬の念が感じられる論考です。

  『暇と退屈の倫理学』と合わせ読むと「人間性の真の解放」の意味が実感できます。

 

 今回の記事は、「第5章意志と選択」・「第8章中動態と自由の哲学」を中心に解説していきます。今回の記事の項目は、以下のようになっています。

 (引用終了) 

 

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ゲンロン0 観光客の哲学

 

 

(3)予想問題『ゲンロン0 観光客の哲学』東裕紀/哲学/グローバリズム

  

gensairyu.hatenablog.com

 

 (今回の記事の記述)

 『観光客の哲学』は、「福島第一原発観光地化計画」・「ダークツーリズム」

(→「福島第一原発観光地化計画」→東浩紀が中心となって2012年から企画する福島第一原子力発電所跡地付近の復興計画。福島原発事故の記憶を風化させず歴史に残すことを目的とする。事故後25年後にあたる2036年頃、除染が進んで福島原発跡から数百メートルの距離まで一般市民が防護服なしに近づけるようになった状態を想定し、事故跡地付近に建設する施設や、そこでの展示などを提案する)

(→「ダークツーリズム」→日本では、作家の東浩紀やジャーナリストの津田大介が、チェルノブイリ原子力発電所を対象とした紀行を発表し、その後、書籍として福島第一原子力発電所を『福島第一原発観光地化計画』(思想地図βvol.4-2・2013年)として刊行したことで、一般的に知られるようになった)

から発展した名著と言えるでしょう。

 

   『ゲンロン0 観光客の哲学』執筆の背景として、東氏は、ツイートで以下のように述べています。本書理解の参考になると思われるので、以下に引用します。

「ゲンロン0は哲学と文学を扱った本ですが、その背景には、震災(→東日本大震災)後、『いまここ』の現実に右往左往することしかできなくなった人文学と批評全体への静かな怒り、というか(自戒を込めた)絶望が宿っています。そんなことを書きました。」(東浩紀@ゲンロン6発売中 @hazuma 2017・4・8)

 

 東日本大震災以後、良質な哲学論考が多く発表されています。下の『ニコ生思想地図』の告知コピーは、この現象を象徴している感じです。

  《「暇」と「退屈」という日常的で身近なものごとから哲学のコアへと、一気に急行していく『暇と退屈の倫理学』(國分功一郎・朝日出版社)は、哲学という学の持つポテンシャルを見事にみせつけています。》

 

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日本文化の論点 (ちくま新書)

 

 

(4)予想問題『日本文化の論点』宇野常寛/2014早大社会過去問

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 

 (今回の記事の記述)

 上記の記事の冒頭部分を引用します。

 

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(引用開始)

「評論家・宇野常寛氏は、最近の入試頻出著者です。

 宇野氏は継続的に、 「3・11東日本大震災、福島原発事故」について、深い考察をしています。

 今回の宇野氏の論考(『日本文化の論点』)は、「3・11東日本大震災、福島原発事故」と「世界観・終末観の変化」という、入試国語(現代文)・小論文における、頻出で重要なテーマを論じているので、予想問題記事として取り上げることにしました。」

  (引用終了) 

 

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しんがりの思想 ―反リーダーシップ論― (角川新書)

 

 

 (5)予想問題『しんがりの思想 反リーダーシップ論』鷲田清一・地域社会

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 (今回の記事の記述) 

 上記の記事の冒頭部分、重要部分を引用します。

 

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 (引用開始)

「鷲田清一氏は、ほとんどの難関大学の入試現代文(国語)・小論文で一度は出題されている、トップレベルの頻出著者です。
 最近では、センター試験、東京大学、東北大学、早稲田大学、慶應大学、上智大学等で出題されています。」

 

「 最近、鷲田氏は『しんがりの思想 反リーダーシップ論』(角川新書・2015年発行)を発表しました。

 本書は、早くも入試頻出出典になっています。具体的には、群馬大学、大阪教育大学、鹿児島大学、早稲田大学(社会科学部)、明治大学、法政大学、立命館大学等の国語現代文小論文に出題されています。そこで、今回は本書のポイントであり、かつ、最頻出の箇所について、当ブログの予想問題を発表することにしました。」

 

『しんがりの思想』の本文(概要)

「【2】社会がいやでも縮小してゆく時代、「廃」炉とか「ダウン」サイジングなどが課題として立ってくるところでは、先頭で道を切り開いてゆく人よりも、むしろ最後尾でみなの安否を確認しつつ進む登山グループの「しんがり」のような存在、退却戦で敵のいちばん近くにいて,味方の安全を確認してから最後に引き上げるような1 「しんがり」の判断が、もっとも重要になってくる。実際、震災復興にあっても、ひたすら「防災」のためのハード面での公共事業に取り組むのではなく、地域が震災前から抱え込んでいた問題を見据えながら、そこでの日々の暮らしを〔 A=創造的 〕に再興する取り組みと結びついた経済活性化策を講じなければならないだろうし、また、もし、そうした社会全体への気遣いや目配りができていれば、建築資材と労賃の高騰を招くことで東北での復興事業を大きく遅延させることが必定な〔 B=東京五輪 〕の誘致など、だれも発想しなかっただろう。こういう全体の気遣いこそ、ほんとうのプロフェッショナルが備えていなければならないものなのであり、また、よきフォロワーシップの心得というべきものである。そして、こうした心得を、ここで《しんがりの思想》と呼んでみたい。

【3】リーダーが、その「しんがり」の務めに戻るべきときが、いま来ている。ダウンサイジングという、 「右肩上がり」の時代のリーダーたちがいちばん不得手な難問が山積しているという状況が目の前にある。」

   (引用終了)

 

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オーラル・ヒストリー―現代史のための口述記録 (中公新書)

 

 

(6)予想問題「シン・ゴジラ」御厨貴・「戦後」と「災後」・東日本大震災

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 (今回の記事の記述)

 上記の記事の重要部分を引用します。

 

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(引用開始)

(御厨氏の論考)(概要です)

(【1】・【2】・【3】・・・・は当ブログで付記した段落番号です)

【1】「この国はまだまだやれる」。映画「シン・ゴジラ」の中で、ゴジラ対策の任を負った官邸の政治家・矢口蘭堂のセリフに、ホッとした。今、社会現象となった話題の映画「シン・ゴジラ」は、大人の鑑賞に堪える、いや大人向けの政治映画である。スクリーンに2時間くぎ付けとなること間違いなしだ。

【2】始まってすぐ、これは3・11東日本大震災と福島原発事故、そして日米安全保障条約が絡んだ物語だと誰しも分かる。この5年間を経験した日本人につきつけられた「非常時にどう立ち向かうか」の問いに、見る者は待ったなしの感覚を持たされる。これ、考えないようにしてきたなと。 

   

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(当ブログの解説)

 今回のこの映画は、シン・ゴジラが東日本大震災・福島原発事故の暗喩であることを、堂々と出してきています。


 この作品は、「3・11東日本大震災とは何だったのか」を、改めて問い直したものです。この作品は、大震災当時の官邸・自治体・自衛隊の行動、米国からの働きかけ等を、かなり、なぞっているようです。その上で、この作品は、仮想的「災害」への対応のシミュレーションを示すばかりではなく、さらに、一応の解決がなされた後の不安定な状況と、将来の展望まで提示しようとしている野心作と言えるでしょう。

   (引用終了)

 

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ミシェル・フーコー: 近代を裏から読む (ちくま新書)

 

 (7)ニヒリズム→「予想問題 「ナウシカとニヒリズム」 重田園江・2014学習院大過去問」

 

gensairyu.hatenablog.com

 

  (今回の記事の記述)

 東日本大震災・福島原発事故の際に、多くの科学者たちは「想定外」という言葉を乱発しました。しかし、科学を信頼してきた国民にとって、この「想定外」発言は失望そのものでした。

 さらに、原発事故直後の情報混乱等により、国民の科学に対する不信感が増大しました。それとともに、世の中に「ニヒリズム」が蔓延しました。

 「ニヒリズム」に関する秀逸な哲学的論考として重田園江氏の「ナウシカとニヒリズム」を「予想問題」として記事化したので、以下に紹介します。

 

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 (引用開始)

 (1)なぜ、この記事を書くのか?
 現代社会は「ニヒリズム(虚無主義)」が蔓延している時代だ、と言われています。現代思想を理解するうえで、「ニヒリズム」の理解は必要不可欠です。入試現代文(国語)・小論文においても、「ニヒリズム(虚無主義)」は、頻出論点・流行論点になっています。

 一方で、宮崎駿氏の作品に関する論考も、最近では頻出です。例えば、2014年度には名古屋市立大で、鎌田東二氏の「鎮守の森から見たトトロ論」が出題されています。

 このような状況で、重田園江氏の「ナウシカとニヒリズム」(『世界思想』2013 春号) が、2014年度の学習院大(経済)が出題されました。

 重田氏の論考は、本質的で明解です。頻出出典になる可能性があるので、今回は、この論考を現代文(国語)・小論文対策として、記事にすることにしました。

   (引用終了)

 

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(8)科学批判①→「2017東大国語第1問(現代文・評論)的中報告・解説・科学と倫理」

 

gensairyu.hatenablog.com

 

  (今回の記事の記述)

 最近発表されている論考を概観すると、「科学批判」・「科学論」は、2017年度入試に続き、2018年度入試でも、流行・頻出論点になりそうです。

 そこで、「2017東大国語第1問(現代文・評論)的中報告・解説・科学と倫理」の記事を紹介します。

 

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(引用開始)

(1)2017東大国語第1問・的中報告

→2017センター試験国語第1問(現代文・評論文)に続き、2017東大国語第1問にも当ブログの予想論点記事 (「科学論」「科学と倫理」)が的中しました。2016東大現代文ズバリ的中・一橋大現代文ズバリ的中(共に全文一致)に続く喜びです。そこで、今回は、2017東大国語第1問(現代文・評論)の解説をします。

 

 当ブログでは、東日本大震災」・「福島原発事故」・「人工知能」などを素材として、「科学の急激な発展」、「科学の暴走」、「科学コミュニケーション」、「科学と倫理」について考察した予想論点記事を発信してきました。

 詳しくは、下のリンク画像をご覧ください。

 

 そして、2017センター試験国語第1問で、「科学コミュニケーション」が出題され、2017東大国語第1問で「科学と倫理」が出題されました。

 「科学コミュニケーション」の重要な目的の1つが、「科学的倫理基準の民主的コントロール」であることを考慮すると、2つの問題は、『「科学の暴走」と「人類の危機」』という同一の問題意識が背景にあると言えるでしょう。

 2017センター試験国語第1問、2017東大国語第1問ともに、「科学の暴走」という、現代の重大な問題を真正面から取り上げた、「誠実」かつ「真摯(しんし)」な問題だと思います。

 2つの問題の作成チームに敬意を表します。

 「人工知能」・「遺伝子操作」・「分子生物学」・「原発」・「先端医療」等を考えると、今回の2問は、来年度入試においても、国語(現代文)・小論文における重要論点・テーマとなるはずです。

 従って、よく理解しておく必要があるでしょう。

 

gensairyu.hatenablog.com

 

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(2)2017東大国語第1問(現代文・評論)・解説ー『芸術家たちの精神史』伊藤徹

(問題文本文)(概要です)

「【1】テクノロジーには問題を自ら作り出し、それをまた新たな技術の開発によって解決しようとするかたちで自己展開していく傾向が、本質的に宿っているように私には思われる。科学技術によって産み落とされた環境破壊が、それを取り戻すために、新たな技術を要請するといった事例は、およそ枚挙にいとまないし、感染防止のためのワクチンに対してウィルスが耐性を備えるようになり、新たな開発を強いられるといったことは、毎冬のように耳にする話である。東日本大震災の直後稼働を停止した浜岡原発に対して、中部電力が海抜二二メートルの防波堤を築くことによって、「安全審査」を受けようとしているというニュースに接したときも、同じ思いがリフレインするとともに、こうした展開にはたして終わりがあるのだろうかという気がした。技術開発の発展が無限に続くとは、たしかにいいきれない。次のステージになにが起こるのか、当の専門家自身が予測不可能なのだから、先のことは誰にも見えないというべきだろう。けれども科学技術の展開には、人間の営みでありながら、有無をいわせず人間をどこまでも牽引(けんいん)していく不気味なところがある。」

  (引用終了)

 

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意識は実在しない 心・知覚・自由 (講談社選書メチエ)

 

 

(9)科学批判②→「2012東大国語第1問(現代文)解説『意識は実在しない』河野哲也」

 

  (今回の記事の記述)

 「科学批判」・「科学論」を考える際には、頻出著者・河野哲也氏の以下の頻出論考を外すことは、できません。

 上記の記事の重要部分を紹介します。

 

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(引用開始)
 
 (3)河野哲也『意識は実在しない』ー2012年度の流行出典ー東大と早稲田大(教育)で、同一箇所から出題

 

 ①【科学批判のテーマ】

 本問題は、「科学批判」(近代科学論・現代科学論)がテーマになっている問題です。

 3・11東日本大震災・福島原発事故以降、入試現代文(国語)・小論文に出題される「科学批判」(科学論)のテーマは、より先鋭化し、出題率も増加しています。

 3・11以前も、環境汚染、自然破壊、地球温暖化、チェルノブイリ原発事故等により、「科学批判」のテーマは、一定量の出題がみられました。

 しかし、3・11以降は、「科学」に対する批判は明白に先鋭化し、「科学批判」のテーマは出題率が増加しています。

 

 これは、考えてみれば、当然のことです。

 福島原発事故の際の、原子力村の学者達、地震学者達の無責任な「想定外」の連呼。

 崩壊した「安全神話」。

 今だに完全には収束していない福島原発の処理。

 これらをみれば、「科学」に対する厳しい批判的論考は、増えこそすれ、減ることはないでしょう。

 大学における現代文(国語)・国語入試問題作成者の「問題意識」も同じでしょう。

 たとえ、問題作成者の「問題意識」がそうでないとしても、入試現代文(国語)・小論文の世界は、「出典」の関係で論壇・言論界・出版界の影響を受けるのです。

 

 2012年度の東大と早稲田大(教育)では、河野哲也氏の『意識は実在しない』の「序論 環境と心の問題」の冒頭部分から出題されました。

 東大と早稲田大(教育)を比較すると、問題文本文の最終段落は同じですが、最初の部分が違います。

 早稲田大(教育)の方が、最初の2段落分だけ多くなっています。

 以下に、早稲田大(教育)の問題文本文の最初の2段落の概要を記述します。

 ①②・・・・は、早稲田大(教育)に特有な段落番号です。

「① 人類が全体として取り組まなければならない大問題はいくつもある。

② 2012年3月に起きた東北関東地方での大地震で私たちは、地震と津波に打ちのめされると同時に、原子力発電の危険性をあまりに強烈な形で思い知らされた。

 この大災害には、人災の要素がもちろん存在し、長期的に私たちが環境とどのようにつきあっていくべきなのか、自然と社会のあり方が抜本的に問われている。

 

 ここから分かるように、今回の河野氏の論考は、3・11東日本大震災をきっかけとして書かれたものです。

 まさに、3・11東日本大震災以降の、3・11を意識した先鋭的で哲学的な「科学批判」の代表格の論考です。

 内容的にも、視点が秀逸で、ハイレベルな本質的な論考です。

 いかに素晴らしい先鋭的・哲学的な論考かは、これから説明します。

 これから、長期的に現代文(国語)・小論文の入試頻出出典となる可能性の高い論考と言えます。

   (引用終了)

 

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今回の記事は、これで終わりです。

次回の記事は、約1週間後に発表の予定です。

ご期待ください。

 

  

 

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