センター小説満点のコツ・ポイント/解説・小説の純客観的解法
(1)「センター小説」解法・はじめに・「センター小説」をめぐる問題点を指摘する
今回の記事は、当ブログの「2008センター小説解説」、「2017センター小説解説」の2つの記事をベースにしつつ、新たに、「センター小説で満点を取るコツ・ポイント」を提示することを目的として、大幅な加筆を加えた内容になっています。
加筆部分は太字 ( 赤太字、青太字にする場合もあります)にしておきます。
なお、上記の記事についてのリンク画像を下に貼っておきます。
浪人生に敗因を聞くと、センター試験でも、難関大学入試でも、小説問題が敗因だったという声が多いことに驚きます。
確かに、小説問題は、国語(現代文)の中でも特に解きにくい側面があります。
主観的文章を客観的に読解・分析する作業は、日常的に慣れている精神的活動ではありません。
しかし、この作業は、「設問に寄り添って考えること」、「筆者の立場に立ち、筆者の心情に寄り添えばよい」だけです。
「この作業」に「慣れ」さえすれば、よいのです。
ただ、この作業の手順マニュアルは、あまり普及していないようです。
その理由として考えられるのは、大学受験の現場に蔓延中の「主体的な読み」という、受け狙いのキャッチコピーです。
主体的に読むのは当然です。わざわざ言うことではない、無意味な言葉です。このキャッチコピーの誤解が「客観的読解軽視」、「設問軽視」の元凶でしょう。
問題は、「主体的な読み」という受験界の神話から、いかに脱却するか、でしょう。
ここで問題にしているのは、一部の、大衆受けを狙う指導者、解説書、組織がこの神話を大々的に掲げていることです。
このキャッチコピーが、ある程度の支持を得ているということは、過度の「個性重視」・「アイデンティティ重視」という歪んだ世間の風潮が背景にあるのでしょうか。
話題を元に戻します。
ともあれ、少し工夫することで、つまり、対策を意識することで、小説問題を得意分野にすることが、可能です。
あきらめないことが肝心です!
センター本番では、平均点が5~6割になるように、基礎的・標準的問題を多くしているのです。
その点で、受験生に親切な問題とも言えるのです。
受験生の実力を信用していないとも言えますが。
(2)小説問題を得意分野にしよう→なぜ、小説問題は不得意分野になりやすいのか?→問題点と対策(今回の記事の追加部分です)
①苦手意識、その対策
センター小説に苦手意識を持っている受験生が多いようです。固い内容の小説自体に苦手意識を持っているのでしょう。
日常的に固い内容の小説を敬遠していることと、高校の指導方法・教科書に問題があるようです。
高校において、固い内容の小説の読解の時間が少なすぎるのではないでしょうか。
対策としては、日頃から意識して、娯楽小説・エンターテイメント小説以外の小説を読むようにするとよいでしょう。
②解説書、指導者の問題点、その対策
センター小説は、それほどハイレベルではありません。
私は、問題は解法書と指導者にあるように感じています。
つまり、不必要に複雑化して解説している解説書が、「小説問題は案外とハイレベル」「小説問題は悪問が多い」という風潮を助長している感じです。
そして、自分で考えることをしないで、それを参考にしている指導者が、そのような風潮を助長しているように思います。
受験生レベルでも、問題を熟読して自分で考えると、基礎的問題が多いことが分かるはずです。
従って、複雑化の著しい解説に出会った時には、解説書を疑うことも必要だと思います。
センターの本番の小説問題で、無意味に複雑な設問は一度も出題されたことはないのですから。
③模擬問題・模擬試験問題の問題点、その対策
センター演習は過去問のみにするべきです。模擬問題はレベル・内容の点から、やらない方が賢明です。
模試は時間内にやる訓練のみに有効です。自分にとって分かりにくい設問を飛ばす訓練のために。
時間が余ったら、飛ばした問題をやり直してみるとよいでしょう。
模擬試験の小説問題の復習は、単語チェックくらいにしてください。丁寧な復習は時間の無駄です。
センター過去問は直近から遡り、最近の傾向を知るとよいでしょう。最近は、見事に易化しているのです。特に、小説問題は、平易になっています。
生徒のレベル低下に合わせて、一定の平均点を確保するためだと思われます。
ちなみに、生徒のレベル低下は、小・中・高の国語の授業時間数の低下に関連しています。今の受験生は「ゆとり教育」・「総合学習」等という、基礎学科の授業時間を減少する「教育実験」の犠牲者になっています。
「教育の場」での「実験」は、生徒にとって迷惑でしか、ありません。生徒の親等は、積極的に反対の声を上げるべきでしょう。国民レベルの議論も必要でしょう。
センター現代文 は時間が壁になっています。
しかし、論理的に効率的に処理すれば満点も可能なのです。
あきらめないことが肝心です!
(3)小説問題解法のポイント・注意点
センター試験の国語では毎年出題されます。
難関国公立・私立大学では頻出です。
また、難関国公立・私立大学の小論文の課題文として、出題されることもあります。
小説問題については、「解法(対策)を意識しつつ、慣れること」が必要となります。
本来、小説は、一文一文味わいつつ読むべきです。国語自体が本来は、そういうものです。
が、これは入試では、時間の面でも、解法の方向でも、有害ですらあります。
あくまで、設問(そして、選択肢)の要求に応じて、主観的文章を設問の要求に応じて、純客観的に分析しなくてはならないのです。(国語を純客観的に分析? これ自体がパラドックスですが、ここでは、この問題には踏み込みません。日本の大学入試制度の問題点です。)
この点で、案外、読書好きの受験生が、この種の問題に弱いのです。
ただ、読書好きの受験生は、語彙力があるので、あとは、問題対応力を養成すればよいのです。
それほど心配する必要はありません。
「入試問題の要求にいかに合わせていくか」という方法論を身に付けること、つまり、小説問題に、「正しく慣れる」ことで、得点力は劇的にアップするのです。
そこで、次に、「小説問題の解法のポイント」をまとめておきます。
【1】5W1H(つまり、筋)の正確な把握
① 誰が(Who) 人物
② いつ(When) 時
③ どこで(Where) 場所
④ なぜ(Why) 理由→これが重要
(→今回の記事における補充説明→必ず、理由の記述は傍線部の近くにあるので、心配する必要はありません。小説家としても、「ある行為・心理の理由」を説得力豊かに、リアリティを感じさせるように記述することは、腕の見せ所なのです。従って、「理由の記述」は、傍線部の近くにあるものなのです。このことは、覚えておくべきことです。)
⑤ なにを(What) 事件
⑥ どうした(How) 行為
上の①~⑥は、必ずしも、わかりやすい順序で書いてあるとは限りません。
読む側で、一つ一つ確認していく必要があります。
特に、④の「なぜ(理由)」は、入試の頻出ポイントなので、注意してチェックすることが大切です。
【2】人物の心理・性格をつかむ
① 登場人物の心理は、その行動・表情・発言に、にじみ出ているので、軽く読み流さないようにする。
② 情景描写は、登場人物の心情を暗示的・象徴的に提示している場合が多いということを、意識して読む。
③ 心理面に重点を置いて、登場人物相互間の人間関係を押さえていく。
④ 登場人物の心理を推理する問題が非常に多い。その場合には、受験生は自分をその人物の立場に置いて、インテリ的に(真面目に、さらに言えば、人生重視的に)、一般的に、考えていくようにする。
⑤ 心理は、時間とともに流動するので、心理的変化は丁寧に追うようにする。
⑥ 気持ちを表している部分に傍線を引く。登場人物の心情を記述している部分に、薄く傍線を引きながら本文を読むことが大切です。
以上を元に、「いかに小説問題を解いていくか」を以下で解説していきます。
(4)センター試験・小説問題の解法のポイント・コツ
【1】本文熟読の前に、先に、本文以外の、本文のリード文・設問・本文の「注」などをチェックして設問の全体像を把握する。
センター試験の小説問題の本文は、難関大学の小説問題以上の長文の場合が多いのです。
そこで、センター試験小説問題を効率的に解くための1つ目のコツは、本文を読む前に本文以下の、本文のリード文・設問(特に、設問文)・本文の「注」に目を通すことです。
すぐにこれらに目を通し、「何を問われているか」を押さえてください。
「設問で問われていること」を意識しつつ、本文を読むことで、時間を短縮化することができます。
【2】消去法を、うまく使う
センター試験の小説問題の選択肢は、最近は、少々、長文化しています。
しかし、明白な傷のある選択肢が多いので、消去法を駆使していくことで、効率的に処理することが可能です。
消去法については、上記のリンク画像の「センター小説問題・解説記事」、下の「小説問題・解説記事」リンク画像も参考にしてください。
【3】傍線部説明問題については、傍線部自体に注目する
このことは、案外と盲点になっているようです。
以下で、さらに「センター過去問」を使用して具体的に説明します。
(5)本文熟読の前に、本文のリード文・設問文等から「あらすじ」・「問題のポイント」・「問題の全体像」を把握する。→2008センター過去問による解説
以下は、2008センター小説問題の、本文のリード文・設問文のみをピックアップしたものです。これらを読み、5分程度で、「本文のあらすじ」・「問題のポイント」・「問題の全体像」を把握してみてください。
私の見解は、この下に提示します。
問 次の文章は、夏目漱石の小説『彼岸過迄(ひがんすぎまで)』の一節である。「僕」と従妹(いとこ)の田口千代子は、幼いうちに「僕」の母が将来の結婚を申し入れた間柄である。父の死後、母は「僕」と千代子との結婚を強く望むが、「僕」は積極的に千代子を求めようとしない。以下の文章は、田口家の別荘を「僕」と母が訪れた場面である。これを読んで、後の問いに答えよ。
問2 傍線部A「この男は生まれるや否や交際場裏に棄てられて、そのまま今日まで同じ所で人となったのだと評したかった」とあるが、そのように高木を評する「僕」の思いを説明したものとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
問3 傍線部B「僕をして執念く美しい人に附纏わらせないものは、まさにこの酒に棄てられた淋しみの障害に過ぎない」とあるが、この部分で「僕」は自分をどのようにとらえているか。その説明として最適なものを次の中から一つ選べ。
問4 傍線部C「僕はどうしても僕の嫉妬心を抑え付けなければ自分の人格に対して申し訳がないような気がした」とあるが、なぜ「僕」はこのような気持ちになったのか。その理由として最適なものを次の中から一つ選べ。
問5 傍線部D「僕が僕の占いの的中しなかったのを、母のために喜んだのは事実である。同時に同じ出来事が僕を焦燥しがらせたのも嘘ではない」とあるが、この部分での「僕」の心情はどのようなものと考えられるか。その説明として最適なものを次の中から一つ選べ。
問6 この文章における表現の特徴についての説明として適当なものを、次の中から二つ選べ。
① 初めて嫉妬に心を奪われることになった経緯を、「僕」の心情の描写よりも、高木をめぐる母と叔母の噂話、千代子と高木とのやりとり、高木の「僕」に対する態度の描写などを通して示している。
② 「落ち着いた今の気分でその時の事を回顧してみると」とあるように、出来事全体を見渡せる「今」の立場から、《当時の「僕」の心情や行動》について原因や理由を明らかにしながら描いている。
③ 「僕」自身の心情を回顧的に語る部分に現在形を多用することで、別荘での出来事から遠く隔たった現在においても、「僕」の内面の混乱が整理されないまま未だに続いていることを示している。
④ 「凝結した形にならない嫉妬」「存在の権利を失った嫉妬心」などのように、漢語や概念的な言葉で表現することによって、「僕」が自分の心情を対象化し分析的にとらえようとしていることがわかる。
⑤ 笑いながらの千代子の発言を「罵られた」と述べたり、玉突きの経験がないことを「幸いにして」と述べたりすることによって、出来事をそのままには受け取ろうとしない「僕」の屈折したユーモアを示している。
⑥ 「自然が反対を比較する」「会話を僕の手から奪った」「自然から使われる自分」などの表現から、擬人法を用いることで、「僕」が抽象的なものごとをわかりやすく説明しようとしていることがわかる。
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(私の見解)
把握するべきポイントを赤字と「→→」で明示します。
問 次の文章は、夏目漱石の小説『彼岸過迄(ひがんすぎまで)』の一節である。
「僕」と従妹(いとこ)の田口千代子は、幼いうちに「僕」の母が将来の結婚を申し入れた間柄である。父の死後、母は「僕」と千代子との結婚を強く望むが、「僕」は積極的に千代子を求めようとしない。以下の文章は、田口家の別荘を「僕」と母が訪れた場面である。これを読んで、後の問いに答えよ。
→ここには、主な登場人物と、人間関係が説明されています。特に、「僕と田口千代子」、「僕と『僕の母』」の関係は、要注意です。→【1】
問2 傍線部A「この男は生まれるや否や交際場裏に棄てられて、そのまま今日まで同じ所で人となったのだと評したかった」とあるが、そのように高木を評する「僕」の思いを説明したものとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
→「僕」が高木をのマイナス評価していることが分かります。→【2】
問3 傍線部B「僕をして執念く美しい人に附纏わらせないものは、まさにこの酒に棄てられた淋しみの障害に過ぎない」とあるが、この部分で「僕」は自分をどのようにとらえているか。その説明として最も適当なものを次の中から一つ選べ。
→この部分では、「僕」の「自己評価」の内容が問われています。→【3】
問4 傍線部C「僕はどうしても僕の嫉妬心を抑え付けなければ自分の人格に対して申し訳がないような気がした」とあるが、なぜ「僕」はこのような気持ちになったのか。その理由として最も適当なものを次の①~⑤のうちから一つ選べ。
→「僕」と「僕の嫉妬心」の「関係」が問われています→【4】
問5 傍線部D「僕が僕の占いの的中しなかったのを、母のために喜んだのは事実である。同時に同じ出来事が僕を焦燥しがらせたのも嘘ではない」とあるが、この部分での「僕」の心情はどのようなものと考えられるか。その説明として最も適当なものを次の中から一つ選べ。
→「僕の占い」とは「何か」に注目する必要があります。→【5】
問6 この文章における表現の特徴についての説明として適当なものを、次の中から二つ選べ。
① 初めて嫉妬に心を奪われることになった経緯を、「僕」の心情の描写よりも、高木をめぐる母と叔母の噂話、千代子と高木とのやりとり、高木の「僕」に対する態度の描写などを通して示している。
② 「落ち着いた今の気分でその時の事を回顧してみると」とあるように、出来事全体を見渡せる「今」の立場から、当時の「僕」の心情や行動について原因や理由を明らかにしながら描いている。
③ 「僕」自身の心情を回顧的に語る部分に現在形を多用することで、別荘での出来事から遠く隔たった現在においても、「僕」の内面の混乱が整理されないまま未だに続いていることを示している。
④ 「凝結した形にならない嫉妬」「存在の権利を失った嫉妬心」などのように、漢語や概念的な言葉で表現することによって、「僕」が自分の心情を対象化し分析的にとらえようとしていることがわかる。
⑤ 笑いながらの千代子の発言を「罵られた」と述べたり、玉突きの経験がないことを「幸いにして」と述べたりすることによって、出来事をそのままには受け取ろうとしない「僕」の屈折したユーモアを示している。
⑥ 「自然が反対を比較する」「会話を僕の手から奪った」「自然から使われる自分」などの表現から、擬人法を用いることで、「僕」が抽象的なものごとをわかりやすく説明しようとしていることがわかる。
→この設問では、赤字部分に注目してください。→【6】
→また、③と④は、矛盾的内容になっていることにも着目してください。→【7】
→短時間にザッと見ただけでも、以上の【1】~【7】の「有用な情報」を入手することができます。
(6)「センター小説問題」特有の「文章表現問題」を処理するポイント→先に設問をチェックする→2017センター小説・問6
以下の問題を見て、最初に、どこに目をつけるべきでしょうか? 5分間くらい考えてみてください。
問6 この文章の表現に関する説明として適当でないものを、次の①~⑥のうちから二つ選べ。
① 語句に付された傍点には、共通してその語を目立たせる働きがあるが、1行目「あんよ」、24行目「あらわ」のように、その前後の連続するひらがな表記から、その語を識別しやすくする効果もある。
② 22行目以降の落葉や46行目以降の日本画の描写には、さまざまな色彩語が用いられている、前者については、さらに擬音語が加えられ、視覚・聴覚の両面から表現されている。
③ 38行目「透明な黄色い光線」、55行目「真珠色の柔らかい燻したような光線」のように、秋晴れの様子が室内外に差す光の色を通して表現されている。
④ 43行目「直子は本統(ほんとう)は画(え)の事などは何にも知らぬのである」、44行目「画の具のなさえ委(くわ)しくは知らぬ素人である」は、直子の無知を指摘し、突き放そうとする表現である。
⑤ 55行目「暫時うるさい『品定め』から免れた悦(よろこ)びを歌いながら、安らかに休息してるかのように見えた」は、絵画や彫刻にかたどられた人たちの、穏やかな中にも生き生きとした姿を表現したものである。
⑥ 直子が、亡くなった淑子のことを回想する68行目以降の場面では、女学生時代の会話が再現されている。これによって、彼女とのやり取りが昨日のことのように思い出されたことが表現されている。
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(解説)
要注意ポイントは赤字で、解説は青字で明示します。
問6 この文章の表現に関する説明として適当でないもの(→要注意❗)を、次の①~⑥のうちから二つ選べ。
① 語句に付された傍点には、共通してその語を目立たせる働きがあるが、1行目「あんよ」、24行目「あらわ」のように、その前後の連続するひらがな表記から、その語を識別しやすくする効果もある。
② 22行目以降の落葉や46行目以降の日本画の描写には、さまざまな色彩語が用いられている、前者については、さらに擬音語が加えられ、視覚・聴覚の両面から表現されている。
③ 38行目「透明な黄色い光線」、55行目「真珠色の柔らかい燻したような光線」のように、秋晴れの様子が室内外に差す光の色を通して表現されている。
④ 43行目「直子は本統(ほんとう)は画(え)の事などは何にも知らぬのである」、44行目「画の具のなさえ委(くわ)しくは知らぬ素人である」は、直子の無知を指摘し、突き放そうとする表現 (→「直子の無知を指摘し、突き放そうとする表現」は「極端表現」です。まず、この④を先に検討するべきです❗→このような、いかにも怪しい選択肢は、要注意です。このことは、意識しておいてください)である。
⑤ 55行目「暫時うるさい『品定め』から免れた悦(よろこ)びを歌いながら、安らかに休息してるかのように見えた」は、絵画や彫刻にかたどられた人たちの、穏やかな中にも生き生きとした姿 (→「生き生きとした姿」は「安らかに休息してるかのように見えた」と矛盾しているのではないでしょうか?→まず、この⑤を先に検討するべきです❗→選択肢自体の中に「矛盾した表現」がある場合には、要注意です)を表現したものである。
⑥ 直子が、亡くなった淑子のことを回想する68行目以降の場面では、女学生時代の会話が再現されている。これによって、彼女とのやり取りが昨日のことのように思い出されたことが表現されている。
→「各行数」と赤字部分をチェックしてください。
……………………………
(設問の解説・解答)
④ 本文の他の記述を考慮しても、43行目・44行目の表現が「直子の無知を指摘し、突き放そうとする表現」と評価することは、無理です。
⑤ 「『品定め』から免れた悦(よろこ)びを歌いながら、安らかに休息してるかのように見えた」の説明としては、「絵画や彫刻にかたどられた人たちの、穏やかな中にも生き生きとした姿」は、ズレている、と言えます。
従って、不適当です。
他の選択肢は、本文と照合すると、「適当」と評価されます。
→本設問は、素直で単純な問題でした。選択肢だけで、ある程度、正解が絞れました。
(解答) ④・⑤
(7)「小説・傍線部説明問題」の解法→「傍線部説明問題」については、「傍線部自体」に注目する必要があります。具体的には、以下のような手順で処理すると効率的です。→2008センター小説過去問
次の設問を解いてください。
問 次の文章は、夏目漱石の小説『彼岸過迄(ひがんすぎまで)』の一節である。「僕」と従妹(いとこ)の田口千代子は、幼いうちに「僕」の母が将来の結婚を申し入れた間柄である。父の死後、母は「僕」と千代子との結婚を強く望むが、「僕」は積極的に千代子を求めようとしない。以下の文章は、田口家の別荘を「僕」と母が訪れた場面である。これを読んで、後の問いに答えよ。
田口の叔母は、高木さんですと云って丁寧(ていねい)にその男を僕に紹介した。彼は見るからに肉の緊(し)まった血色の好い青年であった。年からいうと、あるいは僕より上かも知れないと思ったが、そのきびきびした顔つきを形容するには、是非とも青年という文字(もんじ)が必要になったくらい彼は生気に充(み)ちていた。僕はこの男を始めて見た時、これは自然が反対を比較するために、わざと二人を同じ座敷に並べて見せるのではなかろうかと疑(うたぐ)った。無論その不利益な方面を代表するのが僕なのだから、こう改まって引き合わされるのが、僕にはただ悪い洒落(しゃれ)としか受取られなかった。
二人の容貌(ようぼう)がすでに意地の好くない対照を与えた。しかし様子とか応対ぶりとかになると僕はさらにはなはだしい相違を自覚しない訳にいかなかった。僕の前にいるものは、母とか叔母とか従妹とか、皆親しみの深い血族ばかりであるのに、それらに取り巻かれている僕が、この高木に比べると、かえってどこからか客にでも来たように見えたくらい、彼は自由に遠慮なく、しかもある程度の品格を落す危険なしに己(おのれ)を取扱かう術(すべ)を心得ていたのである。知らない人を怖(おそ)れる僕にいわせると、この A この男は生まれるや否や交際場裏(こうさいじょうり)に棄(す)てられて、そのまま今日まで同じ所で人となったのだと評したかった。彼は十分と経(た)ないうちに、凡(すべ)ての会話を僕の手から奪った。そうしてそれを悉(ことごと)く一身に集めてしまった。その代り僕を除(の)け物にしないための注意を払って、時々僕に一句か二句の言葉を与えた。それがまた生憎(あいにく)僕には興味の乗らない話題ばかりなので、僕はみんなを相手にする事もできず、高木一人を相手にする訳にも行かなかった。彼は田口の叔母を親しげにお母さんお母さんと呼んだ。千代子に対しては、僕と同じように、千代ちゃんという幼馴染(おさななじ)みに用いる名を、自然に命ぜられたかのごとく使った。そうして僕に、先ほどお着きになった時は、ちょうど千代ちゃんと貴方(あなた)の御噂(うわさ)をしていたところでしたと云った。
ーーーーーーーー
(設問)
問2 傍線部A「この男は生まれるや否や交際場裏に棄てられて、そのまま今日まで同じ所で人となったのだと評したかった」とあるが、そのように高木を評する「僕」の思いを説明したものとして最も適当なものを、次の中から一つ選べ。
① 初対面の人にも全くものおじせず、家族のように親しげに周囲の人の名を呼ぶので、羨ましく思っている。
② 明るく話し上手で人づきあいに長けているうえ、そつのない態度で会話を支配するので、不快に思っている。
③ 周囲のすべての人に配慮しつつも、その態度はおしつけがましいものでもあるので、うっとうしく思っている。
④ 品格もあり容貌も立派な人物だが、完全無欠な態度によって「僕」の居場所を脅かすので、憎らしく思っている。
⑤ 洋行帰りという経歴の持ち主であり、自分をよく見せる作為的な振る舞いをするので、面白くなく思っている。
……………………………
【解説・解答】(主人公(「僕」)の心理を問う問題)
(解説の太字は、今回の記事で追加した「補充説明」です)
「生まれるや否や交際場裏に棄てられて、そのまま今日まで」という露骨な悪意に満ちた表現のニュアンスから、「僕」は高木を不快に思っていることが分かります。
また、
「交際場裏に棄てられ」という表現と、
傍線部の直前の「僕の前にいるものは、母とか叔母とか従妹とか、皆親しみの深い血族ばかりであるのに、それらに取り巻かれている僕が、この高木に比べると、かえってどこからか客にでも来たように見えたくらい、彼は自由に遠慮なく、しかもある程度の品格を落す危険なしに己を取扱かう術(すべ)を心得ていた」とから、
「高木」は美辞麗句を駆使して、その場の人々を、自分に有利なように巧妙に操るテクニック(社交術)を自然に身に付けている、と言いたいのです。
つまり、「高木」は、ほぼ、詐欺師的なイヤな人間ということです。『坊っちゃん』における「赤シャツ」をイメージするとよいでしょう。
【「傍線部説明問題」の解法のポイント・コツ】
「傍線部それ自体」を、「精密に分析」していくことが必要です。
(以下は、今回の記事による補充説明です)
本番入試では、「傍線部それ自体」に、「露骨なヒント・ポイント」があることが、かなり多いのです。傍線部の説明をするのですから、傍線部自体にヒントがあるのは、よくあることです。
(ただし、模擬試験には、このことは、当てはまりません。気付かないのか、知っていても、一般大衆受けしないので営業上この種の問題を回避しているのか、は不明です。)
「傍線部それ自体に、露骨なヒント・ポイントがあること」については、「センター試験過去問の検討」を通して実感しておいてください。この作業は、各人が、自分自身で地道に進める必要があります。
様々な解説書を、そのまま信用することなく、一つ一つ丁寧にチェックしていってください。
特に、納得しにくい、妙に複雑化されている解説に出会ったら、この作業は必須です。短時間で終わるので、面倒に思わずに取りかかってください。
有名出版社発行の解説書が、当該設問の「傍線部それ自体に、露骨なヒント・ポイントがあること」に気付かず、誤解の迷路に迷い込んで、勝手に難問化して解説していることが、よくあります。「悪問だ」と評価していることさえ、あります。この種のミスは、毎年度の解説に発生している感じです。
笑ってください。苦情の通知は出す必要は、ありません。すぐに訂正されますが、あなたの努力が報われることはありません。思考力のない他の受験生の得点力アップに貢献するだけです。
「プロ」の、いい加減な本質を見抜いたことで、よい「人生勉強」になったと思えばよいのです。
そして、より一層、入試問題に限らず、「何事も自分自身の頭で考えることの大切さ」を、自覚してください。
受験勉強をすることの最大の価値は、この点にある、と私は思っています。
「プロ」の書いた解説の、基本的なミスに気付くことにより、「プロ」を疑い、「プロを高評価する世の中」を疑うこと、つまり、「プロ」も「世の中」も完全には信用しないこと、この姿勢が大切なのです。
これは、小説問題だけではなく、評論問題でも必要なことです。
厳しい時間制限があるので、「傍線部それ自体」の「精密分析」に、すぐに着手してください。
段落要約・全体要約を書いている時間的余裕は、ありません。
センター試験では、小説問題は25分前後で処理する必要があるのです❗
各選択肢を検討します。
①は、「羨ましく思っている」の部分が不適で、誤りです。
②は、上記の解説より、これが最適であり、正解です。
③は、「周囲のすべての人に配慮」の部分が誤りです。「僕」は「配慮」されていません。
④・⑤は、「交際場」との関連性がないので、誤りです。
以上のように、実に基礎的な、単純な問題です。
実態を知れば、小説問題に対する苦手意識は不要だと分かるはずです。
(解答) ②
ーーーーーーーー
今回の記事は、これで終わりです。
次回の記事は、約1週間後に発表の予定です。
ご期待ください。
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