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現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

2017センター試験国語第2問・問題解説・小説の純客観的解法

2017年センター国語第2問は、素直に解けば、20分程度で満点の取れる問題です。以下に、今回の問題を通して小説問題の効率的な解法を説明していきます。

 

(1)2017年センター試験国語第2問(小説)の解説

 

 2017年センター試験国語の小説問題は、文語文・擬古文的で読みにくい側面はありますが、設問・選択肢が素直なので、良問だと思います。

 今後の小説問題対策として、有用な問題と考えてたので、今回、記事化することにしました。

 以下では、次の項目を解説していきます。

 今回の記事は、約1万2千字です。

 

(2)「小説問題解法」のポイント・注意点

(3)「センター試験小説問題」の解法のポイント・コツ

(4)2017センター試験国語第2問の解説

(5)今回の小説問題本文の「あらすじ」

(6)野上弥生子氏の紹介

(7)当ブログの「夏目漱石」関連記事の紹介・一覧

(8)当ブログの「小説問題解説」関連記事の紹介・一覧

(9)当ブログの「センター試験国語解説」記事の紹介・一覧

(10)2017センター試験国語第1問に「当ブログの予想論点記事(科学論)」が的中(著者・論点)したこと、についての報告記事、の紹介

 

 

(2)「小説問題解法」のポイント・注意点

 

 小説・エッセイ(随筆)問題の入試出題率は、相変わらず高く、毎年約1割です。

 まず、センター試験の国語では、毎年、出題されます。

 次に、難関国公立私立大学では、頻出です。

 東大・京都大・大阪大(文)・一橋大・東北大・広島大・筑波大・岡山大・長崎大・熊本大等の国公立大、早稲田大(政経)(文)(商)(教育)(国際教養)(文化構想)、上智大、立命館大、学習院大、マーチ(明治大・青山学院大・立教大・中央大・法政大)(特に文学部)、女子大の現代文では、特に頻出です。

 また、難関国公立私立大学の小論文の課題文として、出題されることもあります。

 

 小説・エッセイ問題については、「解法(対策)を意識しつつ、慣れること」が必要となります。

 本来、小説やエッセイは、一文一文味わいつつ読むべきです。(国語自体が本来は、そういうものです。)

 が、これは入試では、時間の面でも、解法の方向でも、有害ですらあります。

 あくまで、設問(そして、選択肢)の要求に応じて、主観的文章を(設問の要求に応じて)純客観的に分析しなくてはならないのです。(国語を純客観的に分析? これ自体がパラドックスですが、ここでは、この問題には踏み込みません。日本の大学入試制度の問題点です。)

 この点で、案外、読書好きの受験生が、この種の問題に弱いのです。(読書好きの受験生は、語彙力があるので、あとは、問題対応力を養成すればよいのです。)

 

 しかし、それほど心配する必要はありません。

 「入試問題の要求にいかに合わせていくか」という方法論を身に付けること、つまり、小説・エッセイ問題に、「正しく慣れる」ことで、得点力は劇的にアップするのです。

 そこで、次に、小説・エッセイ問題の解法のポイントをまとめておきます。

 

【1】5W1H(つまり、筋)の正解な把握

 

① 誰が(Who)     人物

② いつ(When)      時

③ どこで(Where) 場所

④ なぜ(Why)   理由→これが重要

⑤ なにを(What)    事件

⑥ どうした(How) 行為

 

 上の①~⑥は、必ずしも、わかりやすい順序で書いてあるとは限りません。

 読む側で、一つ一つ確認していく必要があります。

 特に、④の「なぜ(理由)」は、入試の頻出ポイントなので、注意してチェックすることが大切です。

 

【2】登場人物の心理・性格をつかむ

 

① 登場人物の心理は、その行動・表情・発言に、にじみ出ているので、軽く読み流さないようにする。

 

② 情景描写は、登場人物の心情を暗示的・象徴的に提示している場合が多いということを、意識して読む。

 

③ 心理面に重点を置いて、登場人物相互間の人間関係を押さえていく。

 

 登場人物の心理を推理する問題が非常に多い。その場合には、受験生は自分をその人物の立場に置いて、インテリ的に(まじめに→さらに言えば、人生重視的に)、一般的に、考えていくようにする。

 

⑤ 心理は、時間とともに流動するので、心理的変化は丁寧に追うようにする。

 

 以上を元に、いかに小説問題を解いていくか、を以下で解説していきます。

 


(3)「センター試験小説問題」の解法のポイント・コツ

 

【1】先に設問をチェックする

 

 センター試験の小説問題の本文は、難関大学の小説問題か、それ以上の長文の場合が多いのです。

 そこで、センター試験小説問題を効率的に解くための1つ目のコツは、本文を読む前に設問(特に、設問文)に目を通すことです。

 すぐに設問文に目を通し、「何を問われているか」を押さえてください。

 「設問で問われていること」を意識しつつ読むことで、時間を短縮化することができます。

 

【2】消去法を、うまく使う

 

 センター試験の小説問題の選択肢は、最近は、少々、長文化しています。

 しかし、明白な傷のある選択肢が多いので、消去法を駆使していくことで、効率的に処理することが可能です。

 

 

(4)2017センター試験国語第2問の解説

  

野上彌生子全小説 〈1〉 縁 父親と3人の娘

 

 

 

 

 

 

(設問文のリード文)

(青字は、当ブログによる「注」です)

(赤字は、当ブログによる「強調」です)

一昨年の秋、夫が旅行の土産にあけびの蔓(つる)で編んだ手提げ籠(かご)を買ってきた。直子は病床からそれを眺め、快復したらその中に好きな物を入れてピクニックに出掛けることを楽しみにしていた

 →問題のリード文(説明文)は、設問のヒントになることが多いので、注意してください。今回も、問2のヒントになっています。

 

(本文の概要)

(青字は、当ブログによる「注」目です)

(赤字は、当ブログによる「強調」です)

病床にあった時、夫に買ってもらった手提げ籠を眺めて秋のピクニックに行きたいと思っていた。しかし、健康になったものの、特別に出かけようという気にもならなかった。

 その内、世間で話題になっている文部省の絵の展覧会の話がを聞いて、早く行ってみようと思った。けれども、具体的に行こうと思いついたのは、全く偶然な出来心だった。

 ある時、夕焼け空を見て明日の晴れやかな秋日和を想像すると、全く偶然な出来心で、夫の土産の籠を持ち、ぶらぶら遊びながら展覧会に出かける気になった。

 「それが可(よ)い。展覧会は込むだろうから朝早くに出掛けて、すんだら上野から何処(どこ)か静かな田舎に行く事にしよう。」とそう思うと、A  誠に物珍らしい楽しい事が急に湧いたような気がして、直子は遠足を待つ小学生のような心で明日を待った。

 

  ……………………………

 

(設問)

問2 傍線部A「誠に物珍しい楽しい事が急に湧いたような気がして」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

 

① この秋はそれまでの数年間と違って体調がよく、籠を持ってどこかへ出掛けたいと考えていたところ、絵の鑑賞を夫から勧められてにわかに興味を覚え、子供と一緒に絵を見ることが待ち遠しくなったということ。


② 長い間患っていた病気が治り、子供も自分で歩けるほど成長しているので一緒に外出したいと思っていたところ、翌日は秋晴れのようだから、全快を実感できる絶好の日になるとふと思いついて、心が弾んだということ。


③ 珍しく秋に体調がよく、子供とどこかへ出掛けたいのに行き先がないと悩んでいたところ、夫の話から久しぶりに絵の展覧会に行こうとはたと思いつき、手頃な目的地が決まって楽しみになったということ。


④ 籠を持って子供と出掛けたいと思いながら、適当な行き先が思い当たらずにいたところ、翌日は秋晴れになりそうだから、展覧会の絵を見た後に郊外へ出掛ければいいとふいに気がついて、うれしくなったということ。

 

 ⑤ 展覧会の絵を早く見に行きたかったが、子供は退屈するのではないかとためらっていたところ、絵を見た後にどこか静かな田舎へ行けば子供も喜ぶだろうと突然気づいて、晴れやかな気持ちになったということ。

 

……………………………

 

(解説・解答) 心情把握問題

→すぐに選択肢を見て、選択肢に合わせて考えるようにしてください。「記述式として解く」(一度、自分で解答を書く❗)という解法もあるようですが、解答の幅が広がりすぎ(特に、小説問題では)、効率性の面からみて、おすすめできません。私の推奨する「小説の純客観的解法」は、「設問にも客観的に対応すること」、つまり、「設問に素直に対応すること」を含みます。

 

 「小説の筋をまとめる」だけの、単純な設問です。「どの程度まで、まとめていくか」については、設問・選択肢の要求に素直に従ってください。

 ④は、直前の「筋」を過不足なく、まとめているので、これが正解です。

 

    「籠を持ってまずは遊びながら展覧会を見てみようと思いついた」のは、「其前日の「全く偶然な出来心」によるのですから、「夫の勧めなどにより、そのようにしたいと思った」としている①・③は、不適当です。

 また、「夫の土産の手提げ籠」に言及していない②・⑤も、不適当です。

 

 正解は④です。

 

ーーーーーーーー

 

 (本文の概要)

何処か小学校の運動会と見えて、沢山な子供の群れがいた。近づいて見ると、長方形に取り囲まれた見物人の人垣の中に小さい一群れの子供が遊戯を始めているところであった。一張りの白いテントの内からは、ピアノ音がはずみ立って響いた。くたびれて女中に負(おぶ)さった子供は、初めて見る此珍しい踊りの群れを、呆(あ)っけにとられた顔をして熱心に眺めた。直子も何年ぶりかでこんな光景を見たので、もの珍しい心を以(もっ)て立ち留まって眺めていたが、五分許(ばか)りも見ている間に、ふと訳もない涙が上瞼(うわまぶた)の内から熱くにじみ出して来た。訳もない涙。直子はこの涙が久しく癖になった。何に出る涙か知らぬ。何に感じたと気のつく前に、ただ流れ出る涙であった。子供に乳房を与えながら、その清らかなまじめな瞳を見詰めている内に溢(あふ)るる涙のとどめられなくなる時もあった。可愛いと云うのか、悲しいと云うのか、美しいからか、清らかなゆえにか、なんにも知らぬ。今目の前に踊る小さい子供の群れ、秋晴れの空のま下に、透明な黄色い光線の中をただ小鳥のように魚のように、手を動かしたり足をあげたりしている、ただその有様(ありさま)が胸に沁(し)むのである。直子はそんな心持から女中の肩を乗り出して眺め入ってる自分の子供を顧みると、我知らず微笑まれたが、B  この微笑みの底にはいつでも涙に変(かわ)る或物(あるもの)が沢山隠れてような気がした。 」

 

……………………………

 

(設問)

問3 傍線部B「この微笑みの底にはいつでも涙に変(かわ)る或物(あるもの)が沢山隠れているような気がした」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

 

① 思わずもらした微笑みは、身を乗り出して運動会を見ている子供の様子に反応したものだが、そこには病弱な自分がいつも心弱さから流す涙と表裏一体のものがあると感じたということ。


② 思わずもらした微笑みは、小学生たちの踊る姿に驚く子供の様子に反応したものだが、そこには無邪気な子供の将来を思う不安から流す涙につながるものがあると感じたということ。


③ 思わずもらした微笑みは、子供の振る舞いのかわいらしさに反応したものだが、そこには純真さをいつまでも保ってほしいと願うあまりに流れる涙に結びつくものがあると感じたということ。


④ 思わずもらした微笑みは、幸せそうな子供の様子に反応したものだが、そこにはこれまで自分がさまざまな苦労をして流した涙の記憶と切り離せないものがあると感じたということ。


⑤ 思わずもらした微笑みは、子供が運動会を見つめる姿に反応したものだが、そこには純粋なものに心を動かされてひとりでにあふれ出す涙に通じるものがあると感じたということ。

 

 ……………………………

 

(解説・解答) 心情把握問題

 傍線部の「この微笑の底」に注目すれば、極めて素直な問題だと分かります。

 「この微笑の底」とありますから、直前に着目すると「直子はそんな心持から女中の肩を乗り出して眺め入ってる自分の子供を顧みると、我知らず微笑まれたが」とあるので、さらに遡ることになります。

 その際には、傍線部の「涙に変(かわ)る或物(あるもの)」を意識して遡ることに注意してください。

 すると、「小学校の運動会の遊戯の光景を五分程度見ている間に、ふと訳もない涙が熱くにじみ出して来る。子供に乳房を与えながら、その清らかなまじめな瞳を見詰めている内に溢(あふ)るる涙のとどめられなくなる時もあった。」が、解答のポイントだということが分かるはずです。

 正解は⑤です。

 

①~④はそれぞれ、以下の部分が不適当です。

① 「病弱な自分がいつも心弱さから流す涙と表裏一体のものがある」の部分。

②  「小学生たちの踊る姿に驚く子供の様子」、「無邪気な子供の将来を思う不安から流す涙につながるものがある」の部分。
③    「思わずもらした微笑みは、子供の振る舞いのかわいらしさに反応したもの」の部分。
④    「そこにはこれまで自分がさまざまな苦労をして流した涙の記憶と切り離せないものがあると感じた」の部分。

 

 ーーーーーーーー

 

 (本文の概要)

(展覧会で、直子は「幸ある朝」という絵の前に立ちつつ、その絵の作者である画家の義妹であり、直子の古い学校友達の「淑子さん」に関する思い出に浸る。)

直子は今「幸ある朝」の前に立って丁度その頃のことがいろいろ思い出されたのであった。淑子さんはそれから卒業すると間もなくお嫁に行って、そして間もなく亡くなられた。今はもうこの世にない人である。彼(あの)「造花」の画のカンヴァスから此(こ)のカンヴァスの間にはかれこれ十年近くの長い日が挟まっているのだけれども、ちっともそんな気はしない。ほんの昨日の出来事で、今にもあの快活な紅い頬をしたお転婆な遊び友達の群れが、どやどやと此室に流れ込んで来そうな気がする。そして其中に交じる自分は、ひとり画の前に立つ此の自分ではなくって全く違った別の人のような気がする。直子はその親しい影の他人を正面に見据えて見て、笑い度いような冷やかしたいような且(かつ)憫(あわれ)み度(た)いような気がした。而(しか)してふり返る度にうつる過去の姿の、如何(いか)にも価なく見すぼらしいのを悲しんだ。直子は C  こうした雲隠れのような追懐に封じらてる 内に、突然けたたましい子供の泣き声が耳に入った。

 

 …………………………… 

 

(設問) 

問4 傍線部C「こうした雲のような追懐に封じられてる」とあるが、それはどういうことか。その説明として最も適当なものを、次の1~5のうちから一つ選べ。

 

 ① 絵を見たことをきっかけに、淑子さんや友人たちと同じように無邪気で活発だった自分が、ささなことにも心を動かされていたことを思い出した。それに引きかえ、長い間の病気が自分の活発な気質をくもらせてしまったことに気づき、沈んだ気持ちに陥っている。

 

② 絵を見たことをきっかけに、淑子さんをはじめ女学院時代の友人たちとの思いでが次から次へと湧き上がってきた。当時のことは鮮やかに思い出されるのに淑子さんはすでに亡く、自分自身も変化していることに気づかされて、もの思いから抜け出すことができずにいる。

 

③ 絵を見たことをきっかけに、親しい友人であった淑子さんと自分たちとの感情がすれ違ってしまった出来事を思い出した。淑子さんと二度と会うことができなくなった今となっては、慕わしさが次々と湧き起こるとともに当時の未熟さが情けなく思われて、後悔の念に胸がふさがれてる。

 

④ 絵を見たことをきっかけに、女学校の頃の出来事や友人たちの姿がとりとめもなく次々に浮かんできた。しかし、すでに十年近い時間が過ぎてしまい、もうこの世にいない淑子さんの姿がかすんでしまっていることに気づいて、件名に思い出そうと努めている。

 

⑤ 絵をみたことをきっかけに淑子さんが自分たちに仕掛けたかわいらしい謎によって引き起こされた、さまざまな感情がよみがえり、ふくれ上がってきた。それをたどり直すことで、ささやかな日常を楽しむことができた女学生の頃の感覚を懐かしみ、取り戻したいという思いにとらわれている。

 

 ……………………………

 

(解説・解答) 心情把握問題

 

 問3と同様に、傍線部の「こうした」に注目することがスタートです。直前を精読してください。

 傍線部Cの「追懐」というのは、直子自身やその友達の「淑子さん」たちに関する記憶です。また、その追憶に「封じられる」というのは、「その状態」に、「拘束されていること。捕らわれていること」を意味しています。

 

 ただ女学生のころのことを思い出しているというだけでは、ありません。

ほんの昨日の出来事で、今にもあの快活な紅い頬をしたお転婆な遊び友達の群れが、どやどやと此室に流れ込んで来そうな気がする。そして其中に交じる自分は、ひとり画の前に立つ此の自分ではなくって全く違った別の人のような気がする。直子はその親しい影の他人を正面に見据えて見て、笑い度いような冷やかしたいような且(かつ)憫(あわれ)み度(た)いような気がした。而(しか)してふり返る度にうつる過去の姿の、如何(いか)にも価なく見すぼらしいのを悲しんだ。」とあるように、直子は、「女学生のころの直子」と「今の直子自身」とは「全く違った別の人のような気がする」という思いに、捕らわれているのです。

 このことを踏まえている選択肢を選んでください。

 正解は②です。

 他の選択肢は「女学生時代の直子」と「今の直子自身」との「違い」の説明が不十分です。

 

ーーーーーーーー 

 

(設問)

問5 本文には、自分の子供の様子を見守る直子の心情が随所に描かれている。それぞれの場面の説明として最も適当なものを、次の①~⑤のうちから一つ選べ。

 

① 子供が歩き出すことを直子が想像したり、成長していたずらもするようになったことが示されたりする場合には、子供を見守り続ける直子の心情が描かれている。そこでは、念願だった秋のピクニックを計画する余裕もないほどに、子育てに熱中する直子の母としての自覚が印象づけられている。

 

② 「かァかァかァ。」と鴉の口まねをするなど、目にしたものに子供が無邪気に反応する場面には、子供とは異なる思いでそれらを眺める直子の心の動きが描かれている。そこでは、長い間病床についていたために、ささいなことにも暗い影をみてしまう直子の不安な感情が暗示されている。

 

③ 運動会の小学生たちを子供が眺める場面には、その様子を注意深く見守ろうとする直子の心情が描かれている。そこでは、直子には見慣れたものである秋の風物が、子供の新鮮な心の動きによって目新しいものになっている様が表わされている。

 

④ 初めて接する美術品を子供が眺めている場面には、その反応を見守ろうとする直子の心情が描かれている。そこでは、美術品の中に自分の知っているものを見つけた子供が無邪気な反応を示す様を、周囲への気兼ねなく楽しく直子ののびやかな気分が表わされている。

 

⑤ 「とや、とや。」と言って子供が急に泣き出した場面には、自分の思いよりも子供のことを優先する直子の心の動きが描かれている。そこでは、突然現実に引き戻された直子が、娘時代はもはや遠くなってしまったと嘆く様が表わされている。

 

 ……………………………

 

(解説・解答) 心情把握問題


 まず「初めて接する美術品を子供が眺めている場面」という指定に従って、42行目以下を精読します。(本文については、各種解説書や、Web 上の予備校の速報などを参照してください)

 すると、子供が絵を眺める際の反応を見守ろうとしている直子の心情が記述されています。

 ④との関連で、特に注意するべきは、50行目以下の部分です。概要を引用します。

「子供はたまたま自分の知った動物とか鳥とか花とかの形を見出した時には非常に満足な笑い方をした。女の裸体像を見つけては、『おっぱい、おっぱい』とさも懐(なつか)しそうに指(ゆびさ)しをするのには直子も女中も一緒に笑い出した。まだ朝なのでこうした戯れも誰の邪魔にもならぬ位(くら)い入場者のかげは乏しかったのである」

 以上の部分から、④が正解になります。

 

  

 他の選択肢は、以下の点で誤りです。


① 「念願だった秋のピクニックを計画する余裕もないほどに、子育てに熱中する直子の母としての自覚」は、本文に、このような記述は、ありません。


② 「ささいなことにも暗い影を見てしまう直子の不安な感情」は、本文に、このような記述は、ありません。


③ 「直子には見慣れた ものである秋の風物が、子供の新鮮な心の動きによって目新しいものになっている様」は、本文に、このような記述は、ありません。


⑤「娘時代はもはや遠くなってしまったと嘆く様」のような表現は、本文に、ありません。

 

ーーーーーーーー

 

 (設問)

問6 この文章の表現に関する説明として適当でないものを、次の①~⑥のうちから二つ選べ。

→他の設問もそうですが、この設問も問題5と同様に、本文より先に設問を見ておけば、ラクな問題です。本文を読みながら、一つ一つの選択肢をチェックしていくようにしてください。

  

① 語句に付された傍点には、共通してその語を目立たせる働きがあるが1行目「あんよ」、24行目「あらわ」のように、その前後の連続するひらがな表記から、その語を識別しやすくする効果もある。


② 22行目以降の落葉や46行目以降の日本画の描写には、さまざまな色彩語が用いられている、前者については、さらに擬音語が加えられ、視覚・聴覚の両面から表現されている。


③ 38行目「透明な黄色い光線」、55行目「真珠色の柔らかい燻したような光線」のように、秋晴れの様子が室内外に差す光の色を通して表現されてい

 

④ 43行目「直子は本統(ほんとう)は画(え)の事などは何にも知らぬのである」、44行目「画の具のなさえ委(くわ)しくは知らぬ素人である」は、直子の無知を指摘し、突き放そうとする表現である。

 

⑤ 55行目「暫時うるさい『品定め』から免れた悦(よろこ)びを歌いながら、安らかに休息してるかのように見えた」は、絵画や彫刻にかたどられた人たちの、穏やかな中にも生き生きとした姿を表現したものである。

 

⑥ 直子が、亡くなった淑子のことを回想する68行目以降の場面では、女学生時代の会話が再現されている。これによって、彼女とのやり取りが昨日のことのように思い出されたことが表現されている。

 

……………………………

 

(解説・解答) 表現に関する問題

 

④ 本文の他の記述を考慮しても、43行目・44行目の表現が「直子の無知を指摘し、突き放そうとする表現」と評価することは、無理です。

 

⑤ 「『品定め』から免れた悦(よろこ)びを歌いながら、安らかに休息してるかのように見えた」の説明としては、「絵画や彫刻にかたどられた人たちの、穏やかな中にも生き生きとした姿」は、ズレている、と言えます。 

 従って、不適当です。

 

 他の選択肢は、本文と照合すると、「適当」と評価されます。

 →本設問は、素直で単純な問題でした。選択肢だけで、ある程度、正解が絞れました。

 

(解答) ④・⑤

 

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(5)今回の小説問題本文の「あらすじ」

 

 病床にあった時、夫に買ってもらった手提げ籠を眺めて秋のピクニックに行きたいと思っていた。しかし、健康になったものの、特別に出かけようという気にもならなかった。

 その内、世間で話題になっている文部省の絵の展覧会の話がを聞いて、早く行ってみようと思った。けれども、具体的に行こうと思いついたのは、全く偶然な出来心だった。

 ある時、夕焼け空を見て明日の晴れやかな秋日和を想像すると、全く偶然な出来心で、夫の土産の籠を持ち、ぶらぶら遊びながら展覧会に出かける気になった。

 秋の一日、主人公・直子は、子供(幼児)と一緒に文部省美術展覧会(文展)を見に行く。その会場に着くまでの運動会の場面、会場内での出来事が描かれている。

 直子が流す涙、美術品を見て女学校時代を思い出す場面などがメインになっている。

 

 

(6)野上弥生子氏の紹介

 


野上 弥生子(のがみ やえこ、本名:野上 ヤヱ(のがみ やゑ)、旧姓小手川、1885年~ 1985年) は、日本の小説家。大分県臼杵市生まれ。14歳で上京。

 1906年明治女学校高等科卒業。同年野上豊一郎と結婚,その縁で夏目漱石門下となり『縁 (えにし) 』 (1907) を発表。以来、『海神丸』 (22) ,『大石良雄』 (26) などを書き,昭和に入ると『真知子』 (28~30) ,『若い息子』 (32) ,『迷路』 (6部,36~56) などの社会小説を発表。

豊一郎の妻。夏目漱石の門下。弥生子は漱石の会に出る夫を通じて、夏目漱石の指導を受けた。「海神丸」で文壇的地位を確立。広い社会的視野と教養主義を統一した作風を築いたと評価される。没するまでに読売文学賞、女流文学賞、文化勲章、日本文学大賞などを受賞。

 

 

(7)当ブログの「夏目漱石」関連記事の紹介・一覧

 

 私は2016年12月30に以下のようなツイートをしました。

 

#ブログ更新しました
「 #トランプ現象 と #夏目漱石 →反グローバリズム的発言と文明開化批判」
今年は漱石没後100年、来年は生誕150年という節目。また、来年度の入試では、トランプ現象に関する論考が流行になる可能性が大です。https://t.co/ne30miUrDT

 

 この直後の、センター試験国語第一2問題に野上弥生子氏の『秋の一日』が出題されましたので、2017年1月31日に以下のツイートをしました。

 

 #ブログ更新中
#2017センター試験国語 に出題された #野上弥生子 は #夏目漱石 の弟子。私の予想通りに、今年も、早くも、漱石関連の著作が出題されました。2016は漱石没後100年、2017年は #漱石生誕150年 。この調子で、今年は漱石関係の著作が多く出題されそうです。 https://t.co/yKIJlAIIwU

 

 ここ数年は、これまで以上に、漱石関係の著作に注目する必要があると思われます。

 そこで、当該ブログの最近の「漱石関係」の記事のリンク画像を以下に貼っておきます。ぜひ、ご参照ください。

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 

(8)当ブログの「小説問題解説」関連記事の紹介・一覧

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 

(9)当ブログの「センター試験国語解説」記事の紹介・一覧

 

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 

(10)「2017センター試験国語第1問・的中報告・問題解説」記事の紹介

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 以下の記述は、上の記事の冒頭部分です。上の記事を、ぜひ、ご参照ください。

 

 ……………………………


「(1)当ブログの予想論点記事が2017センター試験国語[1]に的中(著者・論点)しました。

2016東大・一橋大・静岡大ズバリ的中(3大学ともに全文一致→下にリンク画像があります)に続く快挙です。

 2016・12・13に発表した当ブログの記事((「国語予想問題『プロの裏切り・プライドと教養の復権を』神里達博」→下にリンク画像を貼っておきます)が、2017センター試験国語(現代文)問題[1](「科学コミュニケーション」・小林傳司)に、的中(著者・論点→科学論→科学コミュニケーション)しましたので、この記事で報告します。

 

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今回の記事は、これで終わりです。

次回の記事は、約1週間後に発表の予定です。

 

   

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 今回の試験問題になった「秋の一日」が収録されています。

野上彌生子全小説 〈1〉 縁 父親と3人の娘

野上彌生子全小説 〈1〉 縁 父親と3人の娘

 

 

下の本は、私の制作した問題集です。文語文・擬古文対策をポイントにしています。早稲田大学政経学部などで出題された、文語文・擬古文(夏目漱石・高村光太郎・正岡子規・柳宗悦など)の過去問を7問解説しています。

頻出難関私大の現代文 (αプラス入試突破)

頻出難関私大の現代文 (αプラス入試突破)

 

 

下の本は、私の制作した問題集です。小説問題(夏目漱石・芥川龍之介・幸田文など)が6問収録されています。

5週間入試突破問題集頻出私大の現代文―30日間スーパーゼミ (アルファプラス)

5週間入試突破問題集頻出私大の現代文―30日間スーパーゼミ (アルファプラス)

 

 

私は、ツイッタ-も、やっています。こちらの方も、よろしくお願いします。

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