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現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

受験勉強・直前期・入試当日の心構えー天才棋士・羽生に学ぶ勝負哲学

 

(1)受験勉強・直前期・入試本番当日の心構えー将棋の天才・羽生善治氏の勝負哲学を参考にしよう

 

① なぜ、この記事を書くのか?

 

 生徒を指導していていると、生徒の精神面のサポートが合格実績に大きく影響することが実感できます。

 様々な場面で、特に、天才・プロ将棋棋士・羽生善治氏の「勝負哲学」の言葉を参考にしてアドバイスすると効果的です。

 生徒たちの肩から余計な力が抜け、実力以上の結果を出す感じです。

 そこで、このブログでも、「羽生善治氏の勝負哲学」を分かりやすく紹介することにしました。

 

 ② 「勝負哲学」の有用性

 

 大学入試・センター試験もプロ将棋も、「人生をかけた真剣勝負」という点で共通しています。

 大学入試・センター試験もプロ将棋も、さらに人生全体が、「決断の連続」であり、一瞬の躊躇(ちゅうちょ)が命取りとなりかねません。 

 プロ将棋の世界で、将棋史上最高の、驚異的な勝率、実績を誇る羽生善治氏の「勝負哲学」は、大学入試やその他の試験の場面でも、大いに参考になるでしょう。

 

 「心の持ちよう」が、勝負の結果に大きく影響します。精神論も重要です。

 以下では、羽生氏の著書、インタビュー記事、羽生氏に関するテレビの特集番組などから、受験勉強、特に、入試直前期、入試本番当日で役に立ちそうな、「羽生氏の勝負哲学」を引用しつつ、解説していきます。

 読者の皆さんの方で、個別的に興味を持った、共感した幾つかの項目を参考にしてください。

 なお、以下の「勝負哲学」は、大学入試・センター試験だけではなく、私立小学校入試、私立・公立中学入試、高校入試、就職試験、公務員試験、司法試験、公認会計士試験、税理士試験などの試験でも、さらにビジネスや日常生活の様々な場面でも、参考になると思います。

 

 

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(2)羽生善治氏の紹介

 

羽生善治(はぶ・よしはる)

1970年、埼玉県所沢市に生まれ、その後、東京・八王子市に移り住む。

史上3人目の中学生棋士となる。

1989年、竜王戦でタイトル戦に初登場。当時最年少記録の19歳で初タイトル獲得。棋界で名人位と並んで序列トップの竜王位に就いた。

1996年2月に将棋界で初の7タイトル独占を達成。2012年7月には十五世名人・大山康晴の通算タイトル獲得期数80期の記録を抜いた。全7タイトル戦のうち竜王戦を除く6つでの永世称号に加え、名誉NHK杯選手権者の称号を含め、史上初となる7つの永世称号を保持している。

 以下の記事で参考にする羽生氏の著書は、以下の通りです。

『決断力』 (角川oneテーマ21) 

『結果を出し続けるために(ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)』(日本実業出版社)

『捨てる力』 (PHP文庫)

『大局観:自分と闘って負けない心』(角川oneテーマ21) 

『迷いながら、強くなる』 (知的生きかた文庫 BUSINESS)(三笠書房)

『勝負哲学』(岡田武史・羽生善治)(サンマーク出版)

 最後の『勝負哲学』は、岡田武史氏との対談をまとめたものです。ここで、岡田氏の紹介をします。

岡田 武史(おかだ たけし)

サッカー日本代表前監督。1956年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、古河電工サッカー部(現ジェフユナイテッド市原・千葉)に入団。日本代表としても活躍する。1990年現役引退後、コーチ就任。その後、ドイツへのコーチ留学、ジェフユナイテッド市原のコーチを経て1994年日本代表コーチとなる。1997年日本代表監督に就任、ワールドカップフランス大会の日本代表監督を務める。コンサドーレ札幌、横浜F・マリノスで監督を歴任 。

 

 

(3)受験勉強中の、特に、入試直前期の心構え

 

決断力 (角川oneテーマ21)

 

 

 

 

 

 

①  「前進」の必要性→積極性が必要

 

 まず第一に、強調したいことは、「前進」の必要性です。

 具体的には、なるべく早く、少なくとも入試の3~4ヶ月前からは第1志望校の過去問をやるべきだ、ということです。

 実力がついているか不安があっても、とにもかくにも、第2志望以下の過去問の研究は切り上げて、第1志望校の過去問研究に取りかかるべきです。

 極端なことを言えば、第1志望校にだけ受かればよいのです。

 第1志望校に受かる実力がつけば、第2志望校以下にも合格します。

 ためらっている時間は、ないのです。

 

 この点で参考になるのは、以下の羽生氏の言葉です。

(赤字は当ブログによる「強調」です。青字は当ブログに「注」です)


「『決断』は、怖くても前に進もうという勇気が試される。

現状に満足してしまうと進歩はない。

物事を進めようとするときにリスクばかり強調する人がいるが、環境が整ってないことは逆説的にいえば非常に良い環境だと言える。

リスクの大きさはその価値を表していると思えばそれだけやりがいが大きい」

(『決断力』 )

 

②  「ルーティーン」の重要性→集中力を高める儀式的行為

 

 羽生氏に関するテレビの特集番組や、羽生氏についての評論から気付くことは、「ルーティーン(→「固定化・マニアル化された日常の作業・行為」という意味)」の重要性です。

 

 羽生氏は対局の日は、必ず、対局場の将棋会館の近くの駅から将棋会館まで、同じルートを歩くことで、集中力を高めているらしいです。

 歩行中は、何も考えないことを心掛けているようです。

 一度、頭の中を完全に空白にして、再び新鮮な心持ちで真剣勝負に向かう前の儀式的な雰囲気があります。

 あるインタビューで、羽生氏は、以下のような主旨のことを述べていました。

「その前の日までは、いろいろたくさん考えます。けれども、あえて、もう一回頭を空白にして、新たな気持ちで臨む方が気持ちに合っています。」

 

 対局に臨む時の羽生氏の一連の行動は、見事にルーティン化しているようです。

 「1日に1度は麺類を食べる」

 「盤の前に着座して、扇子の止め紙を静かに外す」

 「眼鏡を外し、眼鏡のレンズを、ゆったりと丁寧に拭く」。

 こうした一連の行動を通して、対局前の心を整えているようです。

 

 さらに、羽生氏は、長丁場の対局時の1時間程度の休憩時間には、必ず、少し離れたレストランに足を運ぶらしいです。

 そして、サンドイッチを頼み、淡々と食べる。

 食事後は、すぐに、対局室に戻る。

 この時、彼は将棋について考えていない。

 このルーティンが、脳に空白を、もたらすのです。

 

 一つのことに集中するには、日常生活における様々な些末な思考をカットすることが必要で、そのためには一連の規則化されたルーティーン的な行為がポイントになるのでしょう。

 集中力を高めるためのルーティンの重要性は、再評価されるべきでしょう。

 

 

③  集中力を持続させるために→集中力の基盤は根気・エネルギー・体力→目標の再確認をせよ→「自分の人生」の再確認

 

 受験勉強中には、特に直前期においては、いかに集中力を持続させるか、が問題になります。

 誰にも、ふっと気が抜けること、気が散ることなどが、得てしてあるからです。

 羽生氏の著書を読んでいて、感心したのは、以下の記述です。


「私は、集中力の基盤になるのは根気であり、その根気を支えるためには体力が必要だと思っている。
 体力は、別の言葉でいえばエネルギーである。エネルギーは生きる力だ。エネルギーが枯渇してしまうと、やる気はふくらまないし、持続しない。個人として、自分が大事にしていたり、何かに賭けていたり、究めたいと思っていたり。人生の中で目指しているもの(→「人生の目標」です。広く、「価値観、人生観」と考えても、よいでしょう)がはっきりしている人は、エネルギーがある。」(『決断力』)

 

 つまり、集中力を維持し、高めるためには、自分の「人生の目標」「価値観、人生観」を再確認・再評価するとよいのです。

 言い換えれば、視野を広げ、自分の人生の根本を見つめて、新たな気持ちになるということです。

 

 

④  不安・迷い・スランプ・プレッシャー対策→頂上は近い。心配するな→「もう一息の努力」が結果につながる

  「不安・迷い・スランプ・プレッシャーの対策」としては、「もう一息の努力が結果につながる」

ということを知っておくとよいでしょう。

 あきらめないことが、重要です。 

 「不安・迷い・プレッシャー」自体が、良いシグナルなのです。

 「不安・迷い・プレッシャー」を、一方的にマイナス評価している一般的な常識に、とらわれないようにしてください。

 羽生氏は、以下のように述べています。

 

 

プレッシャーがかかるということは、その状況自体、結構いいところまできている。
 緊張するということは、目標・勝利に近づいている証拠。

 ある程度、結果に期待できるレベルに到達していると自覚しているから、プレッシャーがかかるのです。

 プレッシャーがかかっている時は、山登りに例えると、8合目(→「頂上まで、あと一歩」という意味)まで来ているような状態です。

 自分の状態を俯瞰(ふかん)できないので、あと少しのところでひるんでしまい、ダメだと思ってしまう、努力をやめてしまうのです。

 しかし、そこからもうひと頑張りできるかどうかが、明暗を分けます。

 もうひと頑張りしてから、『やっぱリダメだった』と、判断すればいいのです」

(『結果を出し続けるために(ツキ、プレッシャー、ミスを味方にする法則)』)

 

 少々、楽観的な言葉ですが、私は一理あると思います。

 何よりも、せっかくの成功の可能性を手離さないという、羽生善治氏の力強い意志に、こちらまで、勇気づけられます。

 「自分を信頼する姿勢」も、爽(さわ)やかで、見習いたいものです。

 また、次の羽生氏の言葉も、素晴らしいです。

 

「強くなっていくプロセスの中で、右肩上がりに成長していければいいが、実際のところそういうことはありません。

 停滞している時期があったり、あんまり強くなっていないんじゃないかな、進歩していないんじゃないかなと、そういう迷っている時間ためらっている時間は、前に進んでいくためには、必要なプロセスなのです」(『迷いながら、強くなる』)

 

 また、スランプ、つまり、追いつめられた時こそが、「飛躍のチャンス」と思う気持ちも大切です。

 羽生氏の、「追いつめられた時の対処法」は、一味違います。

 「必ず訪れる人生の一場面」として、「追いつめられた時」にも、冷静に、ポジティブに対応することが大切と、羽生氏は言っています。

 以下に、羽生氏の言葉を紹介します。

 

「将棋は自分との孤独な闘いである。追い込まれた状況から、いかに抜け出すか。でも、人間はほんとうに追いつめられた経験をしなければダメである。追いつめられた時にこそ、大きな飛躍があるのだ。」(『決断力』)

「報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続してやるのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている」(『決断力』)

 

 ところで、「不安・不調・スランプ」から脱出するためには、具体的に、何をすればよいのでしょうか?

 この対策も、「予備知識」がある方が有利です。

 この点について、羽生氏は、以下のように述べています。

 

「不調から脱却するためには、基本を繰り返すことが大切です」(『大局観』)

 

 私も、この作戦には全面的に賛成します。

 この点について、私は以下のように考えます。

 「基本」を「低レベル・入門レベルのこと」と誤解している人もいるようですが、基本は、全ての物事の根本・基盤です。

 「基本」を繰り返すことにより、「目の前の課題・問題」の本筋に戻り、かつ、そのことが平常心を取り戻すきっかけになるのです。

 

 

 ⑤  大局観(全体・本質を見抜く力)の養成を、意識するべき→今からでも、間に合います→余裕を持とう

 

 直前期にこそ、大切なことは、「余裕」を持つことです。

 具体的には、常に、「全体を見る目」を持つことが重要です。

 この点について、羽生氏は、「大局観」として、解説しています。

 以下に、引用します。


全体を判断する目とは、大局観である。

 一つの場面で、今はどういう状況で、これから先どうしたらいいのか、そういう状況判断ができる力だ。(→「俯瞰(ふかん)・鳥瞰(ちょうかん)できる能力」と言ってもよいと思います)

 本質を見抜く力といってもいい。

 その思考の基礎になるのが、勘つまり直感力だ。

 直感力の元になるのは感性である」(『決断力 』)


 「大局観」は、自分の内外の大量の情報から、合理的な選択を行うために必要不可欠です。

 「大局観」の元になる「感性」を鍛えるには、 日頃から意識して「全体」を考えるようにすることが必要です。

 今からでも、間に合います。

 心がけるようにすると、よいでしょう。

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 (4)入試本番当日の心構え

 

①  勝負のポイント 

 

 「勝負のポイント」は、何でしょうか?

 羽生氏によると、「勝負のポイント」は、単純化すると、以下の3点です。

 

【勝負のポイント】

【1】恐れないこと→リスクを恐れない 

  【2】客観的な視点を持つこと→「中立」・「冷静」

  【3】相手の立場を考えること→入試では、「設問を重視」・「出題意図を考える」(『結果を出し続けるために』)

 スッキリと、単純化されていて、見事なものです!

 紙に書いて机の前に貼っておいたり、小さな紙に書いて本番の試験会場で見直すことを、オススメします。

 

 以下では、さらに、詳しく解説していきます。

 

 ②  積極性→リスクを恐れない→(上記【1】「恐れないこと」に関連します)

 

 入試本番当日の最大のポイントは、「積極性を持つこと」だと、私は思っています。

 「この気持ちを持てるか否か」が、入試の結果に多大な影響を及ぼします。

 この点について、羽生氏は、以下のように説明しています。

 説得力のある説明だと思います。

 

「二人の剣豪が決闘を始めたとする。怖いから後ろに下がりたい気持ちになるだろうが、一歩下がっても、相手に一歩間合いを詰められるだけだ。状況は変わらない。逆にいうと、下がれば下がるほど状況が悪くなるのだ。怖くても前に進んでいく、そういう気持ち、姿勢が非常に大事だと思っている」(『決断力』)

 

 「勝負には通らなくてはいけない道が存在すると私は思っている。リスクを前に怖じ気づかないことだ。恐れることも正直ある。しかし、勝負する以上、必ずどこかでそういう場面に向き合い、決断を迫られることになる。私は、そういうときには、『あとはなるようになれ』という意識(→「結果を気にしないで、全力を尽くす」ということです)で指している。どんな場面でも、今の自分をさらけ出すことが大事なのだ(→「現在の自分の実力以上の結果は出ない。とにかく全力を尽くす。覚悟を決める」ということです )」(『決断力』)。

 

 「積極性」を持つためには、以下に引用する羽生氏の見解のように、「自分への信頼」が必要になります。

 「自分への信頼」を実感できるまで、努力することが、前提ですが。

 

「どんな場面でも、今の自分を認めること(→今の自分に自信を持つ)

毎回石橋を叩いていたら、勢いも流れも絶対つかめない。

勝敗を決するのは、高いテンション、自分への信頼です」(『捨てる力』)

 

 ③  自然体・冷えた情熱→(上記【2】「客観的な視点を持つこと」に関連します)

 

 羽生氏は、『決断力』 の中で、 「決断力を高める方法」としては、「結局のところ、自然体が一番大事」と述べています。

 同様のことを、さらに、『勝負哲学』の中で、丁寧に説明しています。

 とても参考になると思いますので、以下に紹介します。

 

「  場になじむ、自然体ということが大切です。
 支配とか制するとかいうと、やはり強すぎる。もっとやわらかい感じです。『場になじんでいる』ような。場を見下ろすのではなくて、自分も風景のひとつとして場の中へ違和感なく溶け込めている(→まさに、「無我の境地」です)。そういうときは集中力も増すし、間違いなく、いい対局ができます」(『勝負哲学』)

「  こと将棋という競技においては、その闘争心がむしろ邪魔になることもあるのです。だから私は、戦って相手を打ち負かしてやろうと考えたことは全くといっていいほどありません。」(『勝負哲学』)

「将棋は結果だけが全てです。その世界で長年勝ち続けるためには、『相手を打ち負かしてやろう』と考えていては(→「勝とう」と思った瞬間に「無我」ではなくなるからです)、とても勝ち続けることは叶(かな)わないのです。
 それよりはむしろ、相手に展開をあずける委託の感覚(→「無我の境地」です。入試の場面でいえば、「設問の要求・指示に沿って素直に考える」ということです)や、もっといえば、相手との共同作業で局面をつくり上げていく協力意識や共有感のほうが大切になってくるのです。」(『勝負哲学』)

 

  上記の「相手との共同作業」については、羽生氏は『決断力』では「対局相手にアイディアを引き出してもらう」とまで表現しています。

 これを、入試の場面に置き換えると、「設問文、設問の選択肢、本文・本文のリード文・本文の注を、もう一度、丁寧に熟読・精読して、そこから再考してみる姿勢が大切」ということになります。

 設問・本文から離れた状態で、自分一人で、考え込まないことがポイントです。

 

 論点を「自然体」に戻します。

 問題は、「自然体」と「情熱」の関係、です。

 「情熱」を前面に出すと「自然体」の維持は困難になるからです。

 この微妙な関係について、羽生氏は、以下のような説明をしています。羽生氏の経験に基づいた説明だけに、読みごたえがあります。

 

勝負に『』は必要ですし、大切なものです。深い集中力も重要です。しかし一方で、私の経験は、そういう熱っぽい感情をできるだけ制御しないと勝負には勝てないことも教えています。

 勝負にいちばん悪影響を与えるのは『怒』とか『激』といった荒々しい感情です。つまり、カッとなったら負けなんです。

 これはボクシングなんかの勇猛なスポーツでも同じでしょう。動物的な闘争心は必要でも、それが自分の制御を超えて暴れ出してしまったら勝つことは難しくなります。
 だから私は、感情をコントロールすることが将棋の実力につながるんだと思って、闘争心をむき出しにするのではなく、それを抑制する方向に自分を訓練してきたつもりです。」(『勝負哲学』)


「『冷えた情熱』というか『熱い冷静さ』みたいなものです。そうでないと、『落ち着いた平凡な一手』は指せません。

 そのために、あまり気負わず、自然体(→「無我の境地」)でやっていきたい。そのほうが自分の力を出しやすいようにも思えます。」(『勝負哲学』)

 

 ところで、「冷静さ」を入手する「具体的な方法」は、あるのでしょうか?

 参考になるのは、羽生氏の以下の説明です。

 

「将棋に限らず、何事も激しく戦っているところに目が行きがちだ。しかし、最終的に決断して指す前に、もう1度全体を見ることだ。(→「鳥瞰的な視点を意識して、冷静になること」の重要性を強調しているのです)最終的な確認をすれば、ミスは少なくなるものなのだ。」(『結果を出し続けるために』)

 

 つまり、部分に集中していた気持ちを、全体を見ることにより、静めるということでしょう。

 この方法は、かなり効果的だと思います。

 

 

 ④  集中するためには→リラックス・休息の必要性

 「集中する手順」として、羽生氏は、以下の「自分なりの方法」を紹介していますが、この手順は、一般的に有効でしょう。

 

〔1〕集中するためには、少しずつ時間をかけて、その状態にもっていく

  〔2〕集中力をつけるために、何も考えない時間をもつ(『大局観』) 

 

 上記〔2〕について、さらに詳しく解説します。

 羽生氏は、 「頭の中に空いたスペースがないと集中できない」(『決断力』)と言っています。

 そして、「頭の中の空きスペース」を作るための「自分自身のやり方」まで、紹介してくれています。 

 以下に引用します。

 

集中するためには刺激を遮断する時間を作る

普通に歩くのでも、音楽を聴くのでも、絵を描くのでもいいのですが、何も考えずに頭に刺激が入らない状態にすることです。

 とくに都会に住んでいると刺激だらけなので、自分をそうした刺激から遮断するのです。別の静かな場所に行く、といったことをする必要もありません。普段の生活の中で、自然に歩いていたり、地下鉄の階段を昇り降りしたりすることでも、相当ポーッとできます

 つまり、メリハリをつけるというか、脳をうまく休ませることが大切です。情報・刺激を遮断して、脳を飢餓状態にする、お腹を空かせた状態にするのです。これは短い時間でも構いません。5分やるだけでも全然違います。」(『結果を出し続けるために』)

 

 この方法は、受験勉強中にも、入試直前期にも、役に立ちます。

 ぜひ、実践してください。

 

 

 ⑤  ポジティブ・シンキング→(上記【1】「恐れないこと」に関連します)

 

 『勝負哲学』の中で、羽生氏の対談相手の岡田監督は、「ポジティブ・シンキング」の重要性について、以下のようなことを述べています。

 

「岡田:ある用事でサッカー協会の人に電話をした時、その人の横にたまたまAという選手がいたことがありました。Aは海外でプレーする日本代表の選手で、帰国して自主トレの最中だったようです。その人が『Aがそばにいるんですけど代わりますか』というので、Aともしばらく話をしてなかったこともあって代わってもらったんです。
 そうしたら、Aは開口一番、あっけらかんと『ぼくのためにわざわざ電話ありがとうございます』なんていうんです。彼と話したくて私が電話をしたと思い込んでいるんですね(笑)。Aが海外で結果を残している理由の一端がわかった気がしました。プラス思考で、つねに自分中心で物事を考えているんです。でも、そのくらいのほうが勝負ごとでは力を発揮できますよ。

羽生:また、それくらいのほうが結果を引きずらないし、気分転換もうまいはずです。」(『勝負哲学』)

 

 「A選手」の「自分中心主義」的なプラス思考は、かなりハイレベルですが、見習いたいものです。

 羽生氏も、「A選手」の反応をプラス評価しているようです。

 この羽生氏の評価も、いかにも、おおらかな天才棋士らしい評価で、素晴らしいです。

 

 プラス思考について言えば、一般の人々もプラス思考を、どんどん持つべきだと、私は思っています。

 

 

 ⑥  プレッシャー対策

 

 プラス思考(ポジティブ・シンキング)が、「プレッシャー対策」に不可欠なことは、今や常識です。

 しかしながら、本来、人間の能力は「プレッシャー」に強いことを知れば、さらに、不安がなくなるはずです。

 この点について、『勝負哲学』の中で、岡田氏・羽生氏は、とても有益なことを指摘しています。

 「大ピンチのときには、人間は意外に正しい判断をする」と、言っているのです。

 真剣勝負の場面で、プレッシャーが心身の動きを鈍くすることは、誰しもが経験していることです。

 しかし、岡田氏も羽生氏も「重圧がかかった状態のほうが感覚が研ぎすまされて、集中力が高まることが多い」と発言しています。

 

 「自分が苦しい」と感じるのは、まだ、状況が最悪にまで落ちていないからです。

 最悪の状況、つまり、どん底にまで落ちて、どうしようもなくなれば、実は落ち着くようです。

 開き直るしかなくなれば、一切の雑念が消え、思考も冴えてくるということです。

 この指摘は、覚えておく価値があると思います。

 

 

 ⑦  周りの人から「信用の風」を送ってもらうように、努力する→自信につながる→ これは、案外、重要です

 

プロスポーツで、チャンスに強い選手が、周りの期待通りに活躍し、ヒーローインタビューで「ファンのみなさんのおかげです」と感謝する場面をよく見聞きします。

 あれは、決して、表面的な社交辞令ではないのです。

 「周囲の信用による後押し」が、ぎりぎりの勝負になってモノをいうのです。

 

「将棋に限らず、勝負の世界では、多くの人たちに、どれだけ信用されているか、風を送ってもらうかは、戦う際のうえでの重要なポイントであり、自分のパワーを引き出してくれる源である」と羽生氏は語っています。(『決断力』) 

 そして、「そのためにも、日頃から実力を磨き、周りからの信用を勝ち取ることが大切だ」と羽生氏は続けています。

 

 「風を送ってもらう」とは、羽生氏らしい個性的な詩的な表現です。

 確かに、「信用されている」という自信が、「自分自身の支え」になり、より大きなパワーを引き出す源になり得ます。

 「そのためにも日々の努力が大切だ」という羽生氏の言葉は、羽生氏の経験から発せられたものだけに、重味が重みがあります。

 充分に参考にする価値があるでしょう。

 

 ちなみに、羽生氏は、別の著書(『大局観』)で、

「傍から見たときに幸運に思える人は、幸運を掴む機会を増やしたり、不運を少しでも軽くするような準備をしていることが多い」と言っています。

 「幸運」・「不運」を軽視しない、謙虚な羽生氏の態度は、参考にするべきです。

 

  

⑧  万が一、ミスをした時の対策 

 

 羽生氏が長年のプロ棋士生活の中で編み出した「効果的なミス対策」は、かなり役に立ちます。

 これについては、『結果を出し続けるために』に、詳しく書いてあります。

 簡単に言うと、以下のようになるようです。

「ミスをしてしまったら、まずミスをした瞬間から、ミスする前の局面のことを頭から消すことだ。その瞬間に『これは初めて見た局面だ』と考え直し、新たに取り組むのだ」。

 

 羽生善治氏の「効果的なミス対策」(『結果を出し続けるために』)をまとめると以下のようになります。

 

【4つの気持ちの切り替え方】

①  まず、一呼吸おく→ミスが重なるのは、ミスの後に別のミスが起こりやすいから。原因は、最初のミスによる精神的な動揺。

 

②  現在に集中する→ミスをしてしまったら、その瞬間に、ミスする前の場面を頭から消す。そして、「これは初見の場面」と考え直して、新たに取り組むべき。

反省はしない。後でする。ミスの結果については、気にしないようにする。

 

③  優劣の判断を冷静に行う

 

④  すべてに完璧さを求めず、能力を発揮する機会、自分の可能性を拡大するチャンスと考えるようにする→ここでも、「ポジティブ・シンキング(プラス思考)」が効果的です。

 上記のについては、羽生氏は、『決断力』 で、次のようにも言っています。

 この積極的な生き方は、見習うべきだと思います。

「対局してみると、予想外のことが必ず起きます。そんな慣れていない状況になると、失敗する確率も当然高まりますが、未知の事態に踏み込むのを恐れるのでなく、そこに挑戦する楽しみを持つことが本当に大事なのです」(『決断力』)

 

 

 (5)今回の記事、「受験勉強・直前期・本番当日の心構え」の「まとめ」

 

「今回の記事のまとめ」として、羽生善治氏の以下の言葉を引用します。


「要するに勝負とは、奇襲作戦では通用しないということです。楽観せず、悲観もしない。ひたすら平常心で、勝負どころを期待せずにじっと待つ。これが『勝負の心構え』としての王道であり、本筋である。は向かい合う相手ではなく、自分自身なのだ。」(『決断力 』)

 

 今現在の羽生氏の人生観を反映している、哲学的な深い言葉です。

 特に、「勝負どころを期待せずにじっと待つ」の部分は、その冷静さに戦慄さえ感じます

 味わい深いので、何度か反芻することを、おすすめします。

 私は、この言葉に感動しました。

 

ーーーーーーーー

 

 今回の記事は、これで終わりです。

 次回の記事は、約10日後に発表の予定です。

 ご期待ください。

 

 

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