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現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

予想問題(出典)・山崎正和氏の「科学批判」ー「人間とは何か 問い直す時」 

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(1)なぜ、山崎氏の論考に注目したのか?

 山崎正和氏は、ほとんどの難関国公立私立大学の、入試現代文(国語)・小論文に、一度は出題されている、トップレベルの頻出著者です。

 その山崎氏が、最近、読売新聞社に発表した「科学批判」の論考が、また、とても素晴らしいのです。

 近いうちに、センター試験、難関国公立私立大学の現代文(国語)・小論文の問題として出題される可能性が高いので、現代文(国語)・小論文対策として、このブログで紹介します。

 

  

 (2) 山崎氏の論考の概要 

 2015年4月19日の読売新聞社(朝刊)(「地球を読む」)に発表された、「科学技術万能論・『ナノボット』で人間改造・人間とは何か 問い直す時」で、山崎氏は、哲学的視点から、鋭く「科学技術万能論」を批判しています。

 この論考の前半において、山崎氏は、最近注目されている、レイ・カーツワイル氏の『ポスト・ヒューマン誕生』(日本放送出版協会)の内容を好意的に紹介しています。

 『ポスト・ヒューマン誕生』の内容ついては、

「遺伝学、ナノ技術、ロボット工学が爆発的発展を遂げ、2040年ごろには、人間そのものを改造するだろう、という論文である」

と、まとめています。

 そして、「人工知能をナノボットに搭載して脳内に送り込み人間を飛躍的に賢明にする」、という著書の一節を紹介しています。

 しかし、山崎氏は、その論考の後半で、巻末の「なぜ特定の自分が判断していると感じるのかわからない」と、カーツワイル氏が悩んでいる一節に注目します。

 山崎氏は、「この悩みの根本には、哲学上の重要問題である、『自己』『身体』『人間とは何か』の問題が存在している」、と分析しています。

 「問題は、カーツワイル氏が『身体』というまとまりを分解しようとしていたことである」、としています。

 また、「自己の持つ全ての属性を自己でないものとして外部に置いたことにも、問題がある」としています。

 「なぜなら、そのとたんに、操作主体であるべき自己は内容を喪失してしまうからだ」、と論理を展開しています。

 つまり、「カーツワイル氏が、自己が主体と客体の両義性を持つという人間の持つ曖昧さを見失った」、と評価しているのです。

 そして、最後に、「人間の科学的改造は歴史的趨勢としても、だからこそ今必要なのは人間とは何かという哲学だと痛感させられる」と、力説しています。

 ここは、重要な部分です。

 議論の根本は、「人間とは何か」という「哲学」です。

 

 

(3) 斎藤隆による考察

 山崎氏の語り口は、比較的穏やかですが、内容は、かなり重大な問題を含んでいるように、私には思えます。

 つまり、「科学」の学問的基盤・基本的方針に対する、哲学的立場からの、「懐疑的問題提起」を含んでいるように思われるからです。

 そもそも、「身体を分解して部品として分析すること」というのは、現代医学の根本的方針です。

 また、「自己が持つ全ての属性を自己でないものとして外部に置くこと」は、「客観性」を設定することであり、「近代科学」の前提条件です。

 山崎氏は、カーツワイル氏の著書に対する批判として、「身体の分解」と「自己の全ての属性を非自己として外部に置くこと」を、根本的な間違いであると、批判しています。

 が、この批判は、そのまま、「近代科学」に対する「根本的批判」、さらに言えば、「根本的懐疑」となるのでは、ないのでしょうか。

 私が、このように考えるのは、山崎氏の論考の最後の方に、以下の記述があるからです。

 「人間の本質は限界を持つ存在であって、それゆえに幸福にもなれた」

 「困難の克服は幸福なのである」

 この二つの文章は、結局は、何を言おうとしているのでしょうか。

 「限界」「困難」は「人間存在」の本質的な一面である、ということでは、ないでしょうか。

 つまり、「不完全性」こそ「人間存在」の本質であり、従って、それらを、無理に消去しようとする「科学的操作」は、「人間存在」の本質に、何らかの歪みを発生させるのではないか。

 いや、「人間」を、もはや人間とは言えないものに変質させてしまうのでは、ないか。

 このように、山崎氏は危惧しているのではないか、と私は感じるのです。

 このことは、山崎氏においても、一般人の予想を遥かに越える、一部の「生命科学」、「ロボット工学」などの「科学」の飛躍的発展に対する、何とも言えない、漠然とした不安が背景にあるのではないか、と思うのです。

 私も、山崎氏の、この論考を読み、同様のぞっとするような戦慄を改めて感じました。

 

 それにしても、短い文章ながら、本質に迫った、鋭い切れ味を持った論考です。

  ここまで考えた時、私は、山崎氏の、説得力のある論理構成、深い洞察力に敬服してしまいました。

 やはり、この論考は、そのうち、センター試験、難関国公立私立大学の現代文・小論文の問題として出題されそうです。

 なお、この山崎正和氏の論考の全文を読みたい方は、読売新聞の「地球を読む」(2015年4月19日)を、ご覧になって下さい。

 

   

  

  

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