現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

予想問題/「安くておいしい国の限界」小熊英二『朝日新聞』/国際化

(1)なぜ、この記事を書くのか?

 

 「グローバル化(国際化)」に関する論点は、入試頻出論点です。

 最近、「グローバル化」、「観光立国」についての、入試頻出著者秀逸な論考(「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」小熊英二/2018・5・31『朝日新聞』「論壇時評」)が発表されたので、国語(現代文)・小論文対策として、今回の記事で解説します。

 小熊英二氏は、入試頻出著者です。

 

 なお、今回の記事の項目は以下の通りです。

 記事は約1万字です。

(2)予想問題/「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」(小熊英二・2018・5・31『朝日新聞』「論壇時評」)

(3)当ブログによる解説

(4)当ブログにおける「グローバル化」関連記事の紹介

 

 

朝日新聞デジタル

朝日新聞デジタル

 

 

 

(2)予想問題/「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」(小熊英二・2018・5・31『朝日新聞』「論壇時評」)

 

(本文は太字です)

(概要です)

(赤字は当ブログによる「強調」です)

(青字は当ブログによる「注」です) 

 

 国際会議で外国に行くと、観光客の急増に驚く。パリやニューヨークはもちろん、ベイルート、バンコク、北京などもそうだ。「マナーの悪い観光客に困っている」という話はどこでも聞いた。

 国連世界観光機関(UNWTO)の統計では、2000年から17年に世界の国際観光客到着数は2倍に増えた。17年は7%の「高度成長」ぶりだ。昔より航空券も安いし、ネットで簡単に予約できるのだから当然だろう。

 16年のランキングだと、日本は国際観光客到着数で世界16位。ただし増加率が高く、12年から17年に3倍以上になった。今や観光は日本第5位の産業だが、多すぎる観光客のせいで「観光公害」が出ているという声もある。

 

 

(当ブログによる解説)

 「観光公害」とは、観光が原因となる種々の弊害です。

 例えば、車の騒音・排気ガス・渋滞、ゴミの不法投棄、開発、景観破壊、環境破壊などです。

 「観光公害」は、観光客急増による様々な弊害が目立ち始めた現在の日本において使われ始めている造語です。


 日本では、世界遺産登録直後に見られる訪問者数の激増が顕著な例です。例えば、白川郷では前述のほぼ全ての事象が報告されています。

 

 「観光公害」は、「グローバル化」のマイナス面と評価できるでしょう。

 

 「観光公害」に関連して、『「夜遊び」の経済学 世界が注目する「ナイトタイムエコノミー」』(光文社新書)に以下のような記述があります。

 明快な説明で、かなり参考になります。

「  観光客は「ただそこに来る」だけでは経済効果は生まず、むしろそれを受け入れる側の地域にとっては、一義的に「コスト要因」に他ならない。観光客が訪問先でゴミを発生させれば、それを処理するのは地域の自治体であり、その原資は地域に住む住民の治める税である。観光客が歩く公道、使用する公衆トイレは全て自治体財源によって維持管理される公共物であり、ましてや観光客を迎え入れるために新たなインフラ整備を行うということになれば、当然そこには地域住民の血税が投入されることとなる。

 そのような様々な財源部分の話をさっぴいたとしても、そもそも域外から得体の知れない人間が多数来訪し、道端でワイワイガヤガヤと大騒ぎし、私有地や進入禁止地域にまで入り込み、「旅の恥はかき捨て」とばかりにトラブルを巻き起こすなどというのは、地域の住民にとって必ずしも歓迎されるものではない。

 はっきり言ってしまえば、観光客というのはそこに根ざして生活する人間にとっては、根源的に厄介者であり、迷惑以外の何ものでもないのである。

(『「夜遊び」の経済学』 木曽 崇)

 

 

 

 

(「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」)

 なぜこれほど急に増えたのか。アジアとくに中国が経済成長し、近場の日本が観光先になったことも一因だ。だが私が世界各地を訪ねた経験からいうと、別の理由がある。観光客からみれば、日本は「安くておいしい国」になったのだ。

 ここ20年で、世界の物価は上がった。欧米の大都市だと、サンドイッチとコーヒーで約千円は珍しくない。香港やバンコクでもランチ千円が当然になりつつある。だが東京では、その3分の1で牛丼が食べられる。それでも味はおいしく、店はきれいでサービスはよい。ホテルなども同様だ。これなら外国人観光客に人気が出るだろう。1990年代の日本は観光客にとって物価の高い国だったが、今では「安くておいしい国」なのだ。

 なお、00年から16年に、フランスは国際観光客数が7%しか伸びていない。それに対し、日本は400%も伸びている。国際観光客数ランキング30位までの国で400%以上伸びたのは、日本・インド・ハンガリーの三つだ。この三カ国は、外国人観光客からみて「安くておいしい国」だといえるだろう。

 このことは、日本の1人当たりGDPが、95年の世界3位から17年の25位まで落ちたことと関連している。「安くておいしい店」は、千客万来で忙しいだろうが、利益や賃金はあまり上がらない。観光客や消費者には天国かもしれないが、労働者にとっては地獄だろう。

 

 

(当ブログによる解説)

 上記の「安くておいしい」については、『観光立国の正体 』(藻谷浩介・山田桂一郎)が、かなり参考になります。


 本書によれば、「観光業」においては、単なる「価格競争」ではなく、「地域全体の活性化」を考えないと、長期的に見れば、うまくいくことはないのです。

 

 このことについて詳しく解説してある箇所を、本書より引用します。

(スイスのツェルマットでは)レストランで使う食材やホテルの備品にしても、「地元で買う・地元を使う」の思想は徹底しています。

 多少コストが高く付いたとしても、地域内でお金を使ってキャッシュフローを活発にした方が、結局は地元のためになる。

 この考え方はツェルマットが観光・リゾート地としてスタートした19世紀末から一貫して変わりません。もちろん、質が悪いものを扱うと厳しく指摘されますから、経営努力を怠ることはできません。
 今、日本の観光・リゾート地に一番欠けているのが、この「地域内でお金を回す」という意識ではないでしょうか。特に近年は、目先の価格競争に気を取られ、1円でも安い業者から食材・資材を購入しようと躍起になっている事業者が増えています。しかし、そうやって無理に利益を出しても、地元の生産者や業者が倒れてしまえば、結局はその地域の活力そのものがなくなってしまいます。 (『観光立国の正体 』藻谷浩介・山田桂一郎)

 

 つまり、日本の観光地の事業者には、長期的視点に欠けていると言うことです。

 観光客は、人々が幸福に暮らしている土地にこそ長期滞在したいし、リピーターになりたいのです。

 「活力のある地域」が好まれるのは、当然でしょう。

 

 この点について、本書は以下のように述べています。

「  何度でも訪れたくなる「強い観光地」の基礎となるのは、そこで暮らす人たちの豊かなライフスタイルです。そこにリアリティをもたらすためには地元ならではの生活文化や伝統風習、自然環境や景観の良さ、地場産業が提供する本格的な価値に裏打ちされたきめ細やかな商品や製品、サービスの提供が必要になります。

「  残念ながら日本の観光・リゾート地のほとんどは、そういった厳しいリピーター獲得競争を知らないまま、ひたすら一見客だけを相手に商売を続けてきました。特に高度成長期からバブル期、近年までずっと一拍だけの団体客メインでやってきたために、せっかく二泊、三泊と連泊を希望している個人のお客様に対して、二泊目以降の夕食を出せなくなってしまう旅館やホテルが未だに存在しています。もしくは、そういう個人客にも団体用のビュッフェスタイルの食事でごまかしています。

 経営的に見ればどう考えても長期滞在者の方がありがたいはずなのに、そういう一番大切な顧客を満足させるノウハウを持っていないのです。このことは、日本の観光業界において「リピーターあってこそのサービス業」というビジネスの常識すら共有されていない証拠と言えます。

 昔々、画一的な団体旅行が主流だった時代は、それでも問題なかったかもしれません。しかし、これだけ価値観が多様化し、インターネットでいくらでも情報が得られる時代、その手法が通用しないのは明らかです。実際、宿泊者数ではなく消費額ベースで見ると、団体客のシェアはすでに全体の約1割です。つまり業界の売上の約9割が、今では個人によって支えられています。しかし、そういう現実は理解していても、古いタイプの事業者というのは自らマーケティングをしてきた経験もありません。そもそも自分たちの魅力について真剣に考えたこともないため、どういう層のお客様にどのような商品提供や情報発信をすればよいかも分からないのです。その結果、やみくもな価格競争に巻き込まれてしまうケースが多くなってしまうのです。

(『観光立国の正体 』藻谷浩介・山田桂一郎)

 

 

観光立国の正体 (新潮新書)

観光立国の正体 (新潮新書)

 

 

 

(「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」)

 元経済産業省官僚の古賀茂明はこう述べる。「日本には、20代、30代で高度な知識・能力を有する若者が、高賃金で働く職場が少ない。稼げないから、食べ物も安くなるのだろう」。古賀は米国で経営学修士を取って起業した若者のこんな声を紹介する。「日本に帰る理由を考えたけど、一つもなかった。強いて挙げれば、そこそこおいしいご飯がタダ同然で食べられることかな。(→当ブログによる解説→まともな金額ではない、ということです。一種の狂気的状況です) アメリカだと、日本の何倍もするからね」

 

 

(当ブログによる解説)

「日本には、高度な知識・能力を有する若者が、高賃金で働く職場が少ない。米国で経営学修士を取って起業した有能な若者にとって、日本に帰る理由が、ただ、そこそこおいしいご飯がタダ同然で食べられることしかない」とは情けないことです。

 有能な若者が厚待遇で働ける場がないということは、日本は、もはや、まともな先進国ではないということです。

 情けない状況と言えます。

 


(「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」)

 一方で日本では、観光客だけでなく留学生も増えた。12年度の約16万人が、17年度には約27万人だ。もっとも世界全体でも00年の約210万人が14年の約500万人に伸びてはいるが、これまた日本の増え方には特徴がある。

 福岡日本語学校長の永田大樹はいう。「世界で活躍するには英語圏への留学が有利だが、日本は非英語圏で、日本語習得は難しい。それでも留学生が集まるのは、『働ける国』だからだ」。日本では就労ビザのない留学生でも週に28時間まで働ける。だが米国では留学生は就労禁止だ。独仏や豪州、韓国は留学生でも就労して生活費の足しにできるが、日本より時間制限が厳しい。そのため「日本に来る留学生の層は、おのずと途上国からの『苦学生』が多くなる」という。

 いま日本では年に30万人、週に6千人の人口が減っている。17年末の在留外国人は前年末から7%増えたが、外国人の労働者で就労ビザを持つ人は18%。残りは技能実習生、留学生、日系人などだ。受け入れ方が不透明なので、労災隠しなどの人権侵害も数多い。こうした外国人が、コンビニや配送、建設、農業など、低賃金で日本人が働きたがらない業種を支えている。

 


(当ブログによる解説)

 外国人は増加の一途を辿っています。

「  実は、そもそも日本が「移民」に門戸を開いていないという認識そのものが間違いだ 

と『コンビニ外国人』の著者・芹澤健介氏は指摘し、以下のように述べています。

 

「  政府は表向き、移民については「真摯に検討を進める」という立場で、「受け入れ」を認めてはいないという立場です。当然、法整備も整っていません。

 安倍首相も、「移民政策をとることは断じてありません」と何度も明言しています。でも、実際には日本で働く外国人は増えています。コンビニだけで数千人の外国人店員がいます。実は外国人の流入者数を見れば、すでに2014年の時点で経済協力開発機構(OECD)加盟国のうち、日本は世界第5位の「移民流入国」だという報告すらあるのです

(『コンビニ外国人』芹澤健介)

 


(「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」)

 いま政府は、産業界の要請に応じ、実習生の滞在期間を延長したうえ、留学生の就労時間延長も検討している。その一方、政府が促進してきた「高度人材」の誘致は停滞したままだ。アジアの経済成長に伴い、実習生の募集は年々厳しくなっている。外国人で低賃金部門の人手不足を補う政策は、人権軽視であるだけでなく、早晩限界がくるだろう。

 外国人のあり方は、日本社会の鏡である。外国人観光客が喜ぶ「安くておいしい日本」は、労働者には過酷な国だ。そしてその最底辺は、外国人によって支えられているのである。

 私は、もう「安くておいしい日本」はやめるべきだと思う。客数ばかり増やすより、良いサービスには適正価格をつけた方が、観光業はもっと成長できる。牛丼も千円で売り、最低賃金は時給1500円以上にするべきだ。「そんな高い賃金を払ったら日本の農業や物流や介護がつぶれる」というなら、国民合意で税金から価格補助するか、消費者にそれなりの対価を払ってもらうべきだ

 そうしないと、低賃金の長時間労働で「安くて良質な」サービスを提供させるブラック企業の問題も、外国人の人権侵害も解決しない。デフレからの脱却もできないし、出生率も上がらないだろう。(→当ブログによる解説→低賃金が「少子化社会」の根本原因の一つです)

 日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くて良いサービスを消費することで晴らしてきた。そんな生き方は、もう世界から取り残されている。

(「観光客と留学生 『安くておいしい国』の限界」 小熊英二/2018・5・31『朝日新聞』「論壇時評」)

 

 

(3)当ブログによる解説

 

 上記の「日本の人々は、良いサービスを安く提供する労働に耐えながら、そのストレスを、安くて良いサービスを消費することで晴らしてきた。」の部分は、悲哀に満ちた内容になっています。

 いじめられた子供が、さらに弱い子供をいじめる構造に似ています。

 異様で巧妙なガス抜き構造とも言えます。

 他の世界を見る余裕がないのでしょうか?

 「自己喪失」、「アイデンティティの崩壊」でしょうか?

 もともと、自己、アイデンティティがないのでしょうか?

 いずれにしても、日本人の素質の問題か、教育の失敗でしょう。

 

 「ある程度高くて高品質」、「安ければ、それなりのもの」。

 これが正当な判断です。

 「低価格高品質」の背景には、悲惨な歪みが存在していることを考察するべきでしょう。

 この考察は、それほどハイレベルな考察ではないはずです。

 生産者、販売者、消費者として「安くて良いもの」を追求する日本人は、「長期的視点」が決定的に欠けているようです。

 

 「長期的視点」(時間性)については、入試頻出著者・内田樹氏が『日本の反知性主義』(編・内田樹)に詳しく解説しているので、以下に紹介します。

 

 『日本の反知性主義』では、以下のように述べられています。

「  知性が知性的でありうるのは、それが「社会的あるいは公共的性格」を持つときだけである

「  社会性、公共性とは、過去と未来の双方向に向けて、時間的に開放されているかどうか、それが社会性・公共性を基礎づける本質的な条件だろうと私は思う

「  私は先に反知性主義の際立った特徴はその「狭さ」、その無時間性(→当ブログによる解説→「目先の利益」のみということです)にあると書いた。長い時間の流れの中におのれを位置づけるために想像力を行使することへの忌避、同一的なものの反復(→「同じ表情、同じ言葉づかいで、同じストックフレーズを繰り返し、同じロジックを繰り返すこと (本書P54)」)によって時間の流れそのものを押しとどめようとする努力、それが反知性主義の本質である

(『日本の反知性主義』編・内田樹)

 

 

日本の反知性主義 (犀の教室)

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 「時間性」(長期的視点)とは、内田氏によれば、「長い時間の流れの中におのれを位置づけるために想像力を行使すること」です。

 つまり、「想像力を駆使して、長期的に見ること」です。

 そのことが、内田氏のいう「過去と未来の双方向に向けて、時間的に開放されていること」なのです。

 そして、これこそが、真の「社会性」・「公共性」の本質的基盤なのです。

 この部分が、「一般的・常識的な『社会性』・『公共性』の理解」とは、大きく違う卓越した発想です。


 特に、日本人は、「時間性」(長期的視点で、ものを考える姿勢)に関しては、大きな弱点を有しているようです。

 その顕著な具体例が、地方の主要駅前の「シャッター商店街」です。

 見たことのある人は、皆、息をのみます。

 人通りの絶えた道、閉じられたまま、錆びついてしまったシャッター。

 もう何年間も、そのままなのでしょう。

 なぜ、その商店街は、そこまで完全に滅亡したのでしょうか?(

 

 商店街の経営努力不足もあったのでしょうが、何よりも、地元民が、その商店街を見捨ててしまったことが最大の理由です。

 たぶん、郊外の道路に面した、大駐車場完備の大企業系列の大型スーパーに通うようになったのでしょう。

  安さ、便利さ、大量の品揃え、それらは、全て魅力的なポイントです。

 それらに、ひかれて、そこに集まっていくというのも、ひとつの合理的な選択です。

 しかし、その結果として、何が発生したのでしょうか?

 

 地域経済の疲弊、地元雇用の減少、人口の減少。

 あげくには今や、「地方消滅」という概念、キーワードすら発生しています。

 「地方消滅」は、地元民の経済的活動だけが原因では、ないでしょうが、大きな要因です。

 今の自分たちの行動が、結果として何を発生させるのか?

 地元の商店街で日々の買い物をしない、食事もしない、地元産の農林水産物を買わない。

 それが地元経済の衰退を招来し、そして、地元の消滅。

 そんなことは、想像力を少し働かせれば、分かることです。

 ほんの僅かな「想像力」さえ働かせれば。

 

 「長期的視点」から、ものを考えるという「時間性」は、西欧では当然の「生活習慣」です。

 これは、伝統重視ということでもあります。

 だからこそ、フランスでも、イタリアでも、スペイン、ポルトガルでも、地元のカフェ、レストラン、地元の伝統的料理、地元産の農林水産物を大切にして、ひいては、自分たちを大切にしてきたのです。

 フランスの、歩道に大きくはみ出た、古くから続いているカフェの大量のテーブルと椅子。

 そこに、寛ぐ地元民たち。

 伝統を大切にし、自分たちを大切にしている賢明な人びとの、自信に包まれた安息が、そこには、あります。

 

 「地元の商店街を大切にすること」は、「自分たちを大切にすること」なのです。

 過去・未来について長期的視点を持って考えれば、こんな当たり前のことが、日本では一般的には通用しないのです。

 過去・伝統は、古臭くて、ほとんど無価値と考える極端な偏見すら、存在しています。

 今、盛んに議論されている「教育改革問題」に参加している論者の中には、そのような熱病的偏見にとりつかれたとしか思えない発言をする人がいるようです。

 国際化、グローバル化というマスコミの掛け声に踊らされて、右往左往する日本人。

 「完璧」ではなく、「適度」の「グローバル化」で良いのでは、ないでしょうか

 「完璧なグローバル化」は、「完璧な欧米化」と同義ですが、それで真に幸福になる日本人が、いったい、どれほど、いるのでしょうか。


 地元重視、日本の伝統重視という当たり前の視点は、いつの間にか、現代の日本人の脳内からかなり蒸発しているのでしょう。(それでも、最近は、地元重視、伝統重視の風潮が少し復活しつつあるのは、良い傾向だと思います)

 
 「長期的視点」から、ものを考えるという「時間性」の発想。

 これが経済中心主義、効率中心主義のアメリカでは、あまり尊重されません。

 アメリカを、お手本としつつも、それをさらに悪化させたのが、日本と言えそうです。

 

 これに対して、モーリス・ブランショ等のフランス現代思想を研究した内田氏は、フランス等の西欧の価値観をも学んだのでしょう。

 内田氏のいう「時間性」は、伝統重視、未来尊重の思想です。

 自己を、現在に存在するだけの一点と考えるのではなく、過去と未来をつなぐ直線上の一点と考える思想です。

 自己を「完全な孤立的存在」とは、考えません。

 従って、自己には存在理由があり、それと同時に、未来に対する責任もあります。
 

  内田氏は、現代日本の加熱気味のグローバル化から、日本の良き伝統を守るべく、この本書の編著者となったのでしょう。

 現在、日本はグローバリズムとの様々な軋轢の中で揺れています。

 そして、日本の一部の知識層は、「無秩序なグローバル化」に反対しています。

 が、もし、日本人の大部分が、内田氏の言うような形で反知性主義化しているのであれば、グローバル化の大波に翻弄されて、日本社会はいずれ崩壊するでしょう。

 もはや、今は、その過程に過ぎないのかもしれません。

 そうなれば、素直になりすぎた日本人は、日本の真の実相を知ろうという発想すらなく、その中でニコニコと「幸福」そうに生きていくのでしょう。

 これは、考えすぎでしょうか。

 
  ここで、入試傾向の話をします。

 「グローバル化と日本人」、あるいは、「日本人論」、「知性とは何か」、「伝統」は、入試現代文・小論文の頻出論点・テーマです。

 グローバル化が急速に進展して来た、ここ10年位は、出題率が増加傾向にあります。

 内田氏の論考の基本的方向性は、難関大学の入試現代文・小論文から見ると、まさに正統派です。

 「日本人の弱点」を徹底的に摘出して、日本人に反省を促す啓蒙的な論考が、難関大学の入試問題では、正統派なのです。

 

 

(4)当ブログにおける「グローバル化」関連記事の紹介

 

 グローバル化(国際化)は流行論点・頻出論点です。

 背景知識を貪欲に吸収するべきでしょう。

 

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 今回の記事は、これで終わりです。

 次回の記事は、約1週間後に発表の予定です。

 ご期待ください。

  

  

 

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