現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

予想問題『疑似科学入門』池内了/理科系論点/早大文学部過去問

(1)この記事を書く理由ー最近、流行している、理科系の論点・テーマに注目しよう

 

 最近は、大学入試の現代文(国語)・小論文の世界に、理科系論点・テーマが、多く出題されるようになってきました。

 現代文明においては、地球温暖化・核廃棄物等の問題を見ても分かるように、我々人類の生存・存立に多大な影響を及ぼすような理科系論点・テーマが発生しているからです。

 これらの問題は、文科系、理科系の壁を越えて、今や、人類全体にとって、緊急な重大な問題になっているのです。

 

 たとえば、理科系論点・テーマにおける、トップレベルの入試頻出著者である池内了氏(宇宙物理学者・天文学者)の論考の最近の出題状況は、以下の通りです。

 

早稲田大学(文)ー「擬似科学入門」

早稲田大学(国際教養)ー「物理学と神」

新潟大学ー「物理学と神」

福井大学ー「本の棲み分け」

中央大学ー「科学の限界」

奈良教育大学ー「科学の限界」

明治学院大学(小論文)ー「人間と科学の不協和音」

立教大学ー「科学の限界」

愛媛大学(小論文)ー「科学と人間の不協和音」

立命館大学ー「擬似科学入門」

 以上のように、池内了氏の論考は、最近のトップレベルの頻出出典です。

 

 理科系論点・テーマは、最近の流行です。

 理科系論点・テーマについては、予備知識・背景知識が、より重要になるので、このブログでは特に重視しています。

 

 理科系論点(理系論点)は、人生にも役立つような、興味深い内容のものが多いのです。食わず嫌いは、いろいろな意味で、「もったいないこと」と言えます。

 理科系の知識の不足が、マスコミや医者を絶対化して、彼らの指示通りに、無意味な食事制限、ダイエット、定期健康診断等に右往左往する健康ヒステリー、人間のロボット化、自己喪失化、自己疎外化を招くのです。

 積極的に、理科系の論考に取り組みようにしてください。

 理科系の入試頻出著者の論考は、新書で多数、出版されています。

 今回の記事で取り上げた論考も、人生に、かなり役に立つ内容です。

 

  なお、今回の記事の項目は、以下の通りです。記事は約1万字です。

(2)予想問題・『擬似科学入門』池内了/理科系論点/早大文学部過去問

(3)要約

(4)池内了氏の紹介

(5)当ブログにおける他の「理科系論点・解説」記事の紹介

(6)当ブログにおける他の「早大現代文・解説」記事の紹介

 

 

疑似科学入門 (岩波新書)

 

 

(2)予想問題・『擬似科学入門』池内了/理科系論点/2009早大文学部過去問

 

(問題文本文)(概要です)

(【1】・【2】・【3】・・・・は当ブログで付記した段落番号です)

(赤字は当ブログによる「強調」です)

(青字は当ブログによる「注」です) 

【1】人間は、以上のような、知覚、記憶、思考の各過程の組み合わせの結果としてある種の判断を下すのだが、その一連の認知行為のなかで各過程のエラーが積み重なり強め合って知らぬ間に判断エラーをしてしまうことになる。


【2】人はある事象を見たとき必ず何らかの信念(例えば、B型の血液の人間は二面性がある)を持ち、その信念に沿って「こんなことが起こるだろう」と予期し(彼はB型だから矛盾した行動をとるだろう)、結果を見たとき予期に合致するよう〔 ① 〕しようとする傾向がある。その結果、予期していた通りのことが起こったとしか見ないから信念がいっそう強められる。つまり、信念→予期→予期を強化するよう結果を解釈→いっそう強い信念になる、というプラスのフィードバックがはたらき、ますます頑固に信じるようになるのだ。

【3】この場合、「こんなことが起こるだろう」と予期する段階において「こんなことは起こりえないだろう」とは一切思わず、また結果を見たとき予期に反する事実は無視してしまう傾向がある。また、予期に沿った情報は記憶しやすいが、〔 ② 〕には注意がいかないこともある。例えば、女性ドライバーは運転が下手だという信念の持ち主は、そのような目で常にドライバーを見ており、実際に下手な女性ドライバーを目撃すると信念をいっそう強める。運転が上手な女性ドライバーがもっと多くいても記憶に残らず無視してしまうのだ。〔 イ 〕

 

ーーーーーーーー

 

(設問)

問1 空欄①・②に入る最適な語句を、それぞれ次の中から選べ。

① イ  結果を提示   

     ロ  安易に解釈 

     ハ  選択的に解釈   

     ニ  結論的に提示

 

② イ  反証となる情報   

     ロ  信念にあう事実 

     ハ  予期された事実   

     ニ  結論となる情報

 

……………………………

 

(解説・解答)

問1(空欄補充問題)

①  【2】段落「人はある事象を見たとき必ず何らかの信念を持ち、その信念に沿って「こんなことが起こるだろう」と予期し、結果を見たとき予期に合致するよう〔 ① 〕しようとする傾向がある。つまり、信念→予期→予期を強化するよう結果を解釈→いっそう強い信念になる、というプラスのフィードバックがはたらき、ますます頑固に信じるようになるのだ。」、

【3】段落「この場合、「こんなことが起こるだろう」と予期する段階において、結果を見たとき予期に反する事実は無視してしまう傾向がある。」

という文脈(→赤字部分に注目してださい)より、ハ(→「選択的な解釈」)が正解になります。

 

(解答) ハ


② 【3】段落「また、予期に沿った情報は記憶しやすいが、〔 ② 〕には注意がいかないこともある。例えば、女性ドライバーは運転が下手だという信念の持ち主は、そのような目で常にドライバーを見ており、実際に下手な女性ドライバーを目撃すると信念をいっそう強める。運転が上手な女性ドライバーがもっと多くいても記憶に残らず無視してしまうのだ。」という文脈より、イ (→「反証となる情報」)が正解になります。

 

(解答) イ

 

ーーーーーーーー

 

(問題文本文)(概要です)

【4】このプラスのフィードバックによって、予期が結果を決めるだけでなく、予期したことが実現してしまうという逆転した状況も生まれかねない。先生が「この子はできが悪い」と思い込む(予期してしまう)と、どのような行動もできの悪さに結びつける。そのため、ますますできが悪いという解釈が積み重なり、(せっかく本人が努力していても目に入らず)結局その子どもは「落ちこぼれ」になってしまう。この場合、先生の予期が原因となった落ちこぼれだから、実は「落ちこぼし」なのである。〔 ロ 〕

【5】もう一つの判断エラーは、サンプルの数が多いと平均的な値に近づく(これを数学で「大数の法則」という)が、サンプルの数が少ないと平均からのズレが大きいのが普通であるのに、それがあたかも平均であるかのように誤認してしまうというケースである。「あの医者は名医だ」という噂があり、事実多くの患者がそう言う場合は信用できる。ところが、「あの医者にかかると女の子が多く生まれる」という噂となると怪しいのだ。〔 ハ 〕

【6】それと似たことで、B 「平均への回帰」という現象がある。ある生徒の学校のテストの成績は上下するのがつきものだが、何回かで平均すると、ある一定のレベルになるのが普通である。各回のテスト結果は平均の力プラス誤差として出るのだが、誤差は体調や集中度や寝不足などによって良かったり悪かったりと変化するから、成績は平均点の上下を変動する。しかし、何回もテストをすれば平均に回帰するものである。だから、一回ごとの成績に一喜一憂することなく、自分の平均はこの程度だと見定められればいいのである。普段はいい成績を取っているのに、ある時(誤差で)悪い成績を取ってしまい、自暴自棄になってしまうことがある。少数のサンプルだけで判断すると誤る例である。〔 ニ 〕

【7】野球で「二年目のジンクス」ということがよく言われる。一年目は好成績を残したのに、二年目はさっぱりダメという場合である。イチローのような特段に優れた選手は例外で、ほとんどが並の実力の持ち主だから、一年目は誤差でたまたまいい成績となっただけで、二年目からは平均に戻ったと考えた方が正しいだろう。にもかかわらず、スウィングが悪い、モーションが悪いと指摘され、自分もそうではないかと思い込んでフォームを崩してしまい、結局大成しなかった選手が多くいる。〔 ホ 〕数年間を見て実力を見極める度量が欲しいものである。 

 

ーーーーーーーー

 

(設問)

問2 次の文は、本文中に入るべきものである。最適な箇所を空欄イ~ホの中から選べ。

そのようなケースが世の中には多いのではないだろうか。「要領の悪い部下」「下手な野球選手」などゴマンとありそうである。

 

問3 傍線部B「『平均への回帰』という現象」は、どのような判断エラーを回避する上で有効か。次の中から最適なものを選べ。

イ   誤差のあることを認識しながらも特定の事例を重視して判断すること。

ロ   偶然的に生じた結果を問題にしすぎて判断してしまうこと。

ハ   誤差の生ずる確率をできるだけ低めに予測して判断すること。

ニ   少数のサンプルから簡単に判断して結論を出してしまうこと。

 

……………………………

 

(解説・解答)

問2(脱文挿入問題)

 脱文の「そのようなケース」(→「要領の悪い部下」「下手な野球選手」を発生させるケース)に注目してください。

 
  【4】段落「このプラスのフィードバックによって、A 予期が結果を決めるだけでなく、予期したことが実現してしまうという逆転した状況も生まれかねない。先生が『この子はできが悪い』と思い込む(予期してしまう)と、どのような行動もできの悪さに結びつける。そのため、ますますできが悪いという解釈が積み重なり、(せっかく本人が努力していても目に入らず)結局その子どもは『落ちこぼれ』になってしまう。この場合、先生の予期が原因となった落ちこぼれだから、実は『落ちこぼし』なのである。〔 ロ 〕」

というケースが、脱文の「そのようなケース」に適合するので、ロが正解になります。

 

(解答) ロ

 

問3(傍線部説明問題)

 傍線部B「『平均への回帰』という現象」は、どのような判断エラーを回避する上で有効か、という設問の条件に着目してください。


【5】段落「もう一つの判断エラーは、サンプルの数が多いと平均的な値に近づく(これを数学で「大数の法則」という)が、サンプルの数が少ないと平均からのズレが大きいのが普通であるのに、それがあたかも平均であるかのように誤認してしまうというケースである。」、

傍線部直後の一文「ある生徒の学校のテストの成績は上下するのがつきものだが、何回かで平均すると、ある一定のレベルになるのが普通である。」、

傍線部を含む段落(【6】段落)の最終文「少数のサンプルだけで判断すると誤る例である。」

に注目すると、ニ(→「少数のサンプルから簡単に判断して結論を出してしまうこと」)という判断エラーを回避する上で、「『平均への回帰』という現象」は有効なことが分かります。


(解答) ニ

 

ーーーーーーーー

 

(問題文本文)(概要です)

【8】以上、判断の各過程におけるエラーについて述べてきたが、それらに共通する心理を整理しておこう。 

【9】まず、「認知的節約の原理」がある。限られた情報から欠けた部分を経験や先入観や単純な〔 a 〕によって補い、効率よく事態を処理しようとする心理のことだ。本人にとって負担が少ない思考法だが、そこにエラーが生じてしまうのだ。 

【10】続いて、「認知的保守性の原理」を挙げよう。すでに持っているスキーマを保ち維持しようとする傾向で、反証を無視したり、無理にでも自分の描像に合わせてしまう心理である。自分は一貫した考え方をしていると自認できるので〔 ③ 〕が得られることになる。だからこそ間違いやすいとも言える。C 自分が安心できる思考法でつい安住してしまうからだ。 

【11】もう一つは、「主観的確証の原理」で、どちらともつかない証拠だけでなく明らかな反証であっても、自分の予期を積極的に支持していると勝手に解釈する心理傾向である。「いやよいやよも好きのうち」と身勝手に思い込んでセクシュアルハラスメントに及ぶ人間がその典型と言える。D 自分の身勝手さに気づかず、全て他人のせいにして安閑としている人にお目にかかることが多いのはこのためだろう。被疑者に対して状況証拠しか見つかっていないのに犯人と決めつけ、すべてその〔 b 〕の下で解釈したがる例もある。犯人が見つかっていないと不安だが、強引にでも決めつけてしまえば安心するのだ。(早く安心したいという気持が底に潜んでいることもある。)この心理には、思考の経済性や一貫性なども絡み合っている。こうなるともはや〔 c  〕する気持を失ってしまう。 

【12】さらに付け加えるとすれば、「偶然性を拒否したい心理」、言い換えれば「確固とした因果関係として説明したい心理」もある。偶然に起こったことであっても必然だと思い込み、それをきちんとした因果関係で説明しようとすると科学的な理由が見つからず、ついに超常的現象だと考えてしまうケースである。予知夢がテレパシーしかないと解釈し、たまたま当たったのを透視できたと受け取り、そのまま信じ込んでしまうのだ。認知的エラーを自覚しない人ほど、自分の体験を絶対化して信じ込む傾向が強い。「しょせん、体験したことがない人にはわからない」として、他人の意見や忠告を受け入れなくなってしまうのだ。そして、自分の意見を強調すればするほどその信念はいっそう強くなっていき、もはや後戻りが不可能になる。 

 

ーーーーーーーー

 

(設問)

問1 空欄③に入る最適な語句を次の中から選べ。

イ   認知的な独自性ロ

ロ   心理的な安定感

ハ   人間的な信頼感

ニ   保守的な確実性

 

問4 空欄a~cに入る最適な語句を、それぞれ次の中から選べ。

イ 状況   ロ 仮定   ハ  解釈   ニ 類推   ホ 自省   ヘ 自認

  

問5 傍線部A(【4】段落)「予期が結果を決めるだけでなく、予期したことが実現してしまうという逆転した状況」は、筆者のいうどのような原理または心理からの判断エラーによって生まれやすいか。本文中の次の語句の中から、最適なものを選べ。

イ   「認知的節約の原理」

ロ   「認知的保守性の原理」

ハ   「主観的確証の原理」

ニ   「偶然性を拒否したい心理」

 

問6 傍線部Cで、「自分が安心できる思考法でつい安住してしまう」ために判断エラーが生じやすいと言っているが、そのような人の「思考法」の特色はどのようなものか。次の中から適合しないものを一つ選べ。

イ   自分の仮説を絶対化して信じ込む。

ロ   偶然起こったことを必然と思い込む。

ハ   他人の意見や忠告を受け入れる。

ニ   自分の体験を重視し強い信念を持つ。

 

問7 傍線部D(→「自分の身勝手さに気づかず、全て他人のせいにして安閑としている人」)のような人は、人の性格や行動を示す次の語のどれと無縁であると見ることができるか。最適なものを選べ。

イ 頑固   ロ 無視   ハ 度量   ニ 勝手   ホ 透視


……………………………

 

(解説・解答)

 問1(空欄補充問題)

 空欄直前の「自分は一貫した考え方をしていると自認できるので」、

直後の「C 自分が安心できる思考法でつい安住してしまう」に注目してください。

 ロ(→「心理的な安定感」)が正解になります。


(解答) ロ

 

問4(空欄補充問題)

a 直前・直後の文脈を精読してください。

【9】「『認知的節約の原理』がある。限られた情報から欠けた部分を経験や先入観や単純な〔 a 〕によって補い、効率よく事態を処理しようとする心理のことだ。本人にとって負担が少ない思考法だが、そこにエラーが生じてしまうのだ。 」

より、ニ(→「類推」)が正解になります。

 

b 「被疑者に対して状況証拠しか見つかっていないのに犯人と決めつけ(→強引な「仮定」です)、すべてその〔 b 〕の下で解釈したがる例もある。」の文脈を読み取ってください。

 

C 空欄を含む段落の「『いやよいやよも好きのうち』と身勝手に思い込んでセクシュアルハラスメントに及ぶ人間」、「D 自分の身勝手さに気づかず、全て他人のせいにして安閑としている人」がヒントになります。

 ホ(→「自省」)が正解になります。

 

(解答) a=ニ   b=ロ   c=ホ

 

問5(傍線部説明問題)

 設問文が長いので、注意してください。

  【4】段落「このプラスのフィードバックによって、A予期が結果を決めるだけでなく、予期したことが実現してしまうという逆転した状況も生まれかねない。先生が『この子はできが悪い』と思い込む(予期してしまう)と、どのような行動もできの悪さに結びつける。」と、

【10】段落「続いて、『認知的保守性の原理』を挙げよう。すでに持っているスキーマを保ち維持しようとする傾向で、反証を無視したり、無理にでも自分の描像に合わせてしまう心理である。」が、同趣旨であることを読み取ってください。

 ロ(→「認知的保守性の原理」)が正解になります。

 

(解答) ロ

 

問6(傍線部説明問題)

 設問文が長いので、注意してください。


(→「自分の仮説を絶対化して信じ込む」)は、【10】段落第2文「すでに持っているスキーマを保ち維持しようとする傾向で、反証を無視したり、無理にでも自分の描像に合わせてしまう心理である。」に対応しています。

 

(→「偶然起こったことを必然と思い込む」)は、【12】段落第2文「偶然に起こったことであっても必然だと思い込み、それをきちんとした因果関係で説明しようとすると科学的な理由が見つからず、ついに超常的現象だと考えてしまうケースである。」に対応しています。

 

ハ (→「他人の意見や忠告を受け入れる」)は、【12】段落第5文「『しょせん、体験したことがない人にはわからない』として、他人の意見や忠告を受け入れなくなってしまうのだ。」に適合していないので、このハが正解になります。

 

ニ (→「自分の体験を重視し強い信念を持つ」)は、【12】段落第4文「認知的エラーを自覚しない人ほど、自分の体験を絶対化して信じ込む傾向が強い」に対応しています。


(解答) ハ

 

問7(傍線部説明問題)

 ハの「度量」は、 「他人の言行をよく受けいれる、おおらかな心」という意味なので、傍線部D(→「自分の身勝手さに気づかず、全て他人のせいにして安閑としている人」)と「無縁」です。

 ハが正解になります。


(解答) ハ

 

ーーーーーーーー

 

(問題文本文)(概要です)

【13】むろん、人間の認知エラーが多いと言っても、私たちは日常生活において大きな支障なしに生きている。それを無意識のうちに矯正したり、または大きな問題が起こらないので気づかないままやり過ごしている。ときには認知エラーが人間の生存にプラスにはたらいていることもあると知っておくべきだろう。あまりに気にし過ぎると神経症を病むことになりかねないからだ。 
 
【14】ただ、突発的な事件が起こって即座の判断を迫られたり、すぐに合理的な解釈ができない事象に遭遇したりしたとき、〔  甲  〕が肝腎なのである。それは疑似科学に騙されていないか自らを点検することにも通じるからだ。 

(池内了『疑似科学入門』による)


ーーーーーーーー


(設問)

問8 空欄甲に入るべき最適なものを次の中から選べ。

イ 認知過程には誤りが多いことを自覚して、自分の推論を絶対化しないこと

ロ 人間の行動には必ずしも合理性がないから、無理にも合理化した説明を受け入れること

ハ 判断エラーは認知の過程で生じるのだから、その各過程を分析し再確認すること

ニ 合理的な解釈は常に類推による非合理なものを持ち、エラーを含むことを自覚すること

ホ 自分の推論を相対化していては、合理的に解釈ができないことを認識して判断すること


……………………………

 

(解説・解答)

問8(空欄補充問題)

 この設問は、実質的には、「趣旨合致問題」と言えます。

 空欄直後の「肝腎」は「重要」という意味です。

 この設問は、「緊急な状況下で、どのような判断をするべきか」ということが問われています。

 筆者の見解に従えば、このような状況下では、各「判断エラー」に共通する心理、つまり、「認知的節約の原理」、「認知的保守性の原理」、「主観的確証の原理」、「偶然性を拒否したい心理」を回避することが重要となります。

 特に、「偶然性を拒否したい心理」、【12】脱落後半部の「自分の体験を絶対化して信じ込む」こと、「他人の意見や忠告を受け入れなくなってしまう」こと、を回避することが必要でしょう。

 従って、イ(→「認知過程には誤りが多いことを自覚して、自分の推論を絶対化しないこと」)が正解になります。

 

 空欄直後の一文(→「それは疑似科学に騙されていないか自らを点検することにも通じるからだ」)イの根拠になります。

 

 ハも候補になりますが、空欄直後の一文との論理的整合性に難があるので、正解とは、なりません。

 

(解答) イ

 

ーーーーーーーー

 

【出典】

池内了『疑似科学入門』〈第1章 科学の時代の非合理主義《3 超常現象の心理学》〉の一節

 

(3)要約

 

人間は一連の認知行為の中で各過程のエラーが積み重なり強め合って、知らぬ間に判断エラーをしている。判断エラーには「プラスのフィードバック」により信念が強化されるケースと、少数のサンプルを平均と誤認するケースがある。それらに共通する心理として、「認知的節約の原理」、「認知的保守性の原理」、「主観的確証の原理」、「確固とした因果関係として説明したい心理」がある。重要なことは、認知過程には誤りが多いことを自覚して、自分の推論を絶対化しないことである。

 

(4)池内了氏の紹介 

 

 池内 了(いけうち さとる、1944年12月14日)

 兵庫県姫路市生まれ。

 天文学者、宇宙物理学者。総合研究大学院大学名誉教授、名古屋大学名誉教授。理学博士。兵庫県姫路市出身。


 研究テーマは、宇宙の進化、銀河の形成と進化、星間物質の大局構造など。現在は、科学・技術・社会論に傾注。新しい博物学を提唱。科学エッセイや科学時事を新聞や雑誌に執筆している。

 世界平和アピール七人委員会委員、軍学共同反対連絡会共同代表。

  『お父さんが話してくれた宇宙の歴史』(岩波書店)で、第13回(1993年度)日本科学読物賞、産経児童出版文化賞(JR賞)を受賞。

  『科学の考え方・学び方』(岩波ジュニア新書)で、第13回(1997年度)講談社出版文化賞(科学部門)、産経児童出版文化賞(推薦)を受賞。

    2000年からの一連の著作物に対して、関科学技術振興財団より第6回(2008年度)パピルス賞を受賞。

 

【著書】

『宇宙のかたちをさぐる』(岩波ジュニア新書・1988年)

『お父さんが話してくれた宇宙の歴史』(1~4)(岩波書店・ 1992年)

『科学の考え方・学び方』(岩波ジュニア新書・1996年)

『物理学と神』(集英社新書・2002年)

『疑似科学入門』(岩波新書・2008年)

『時間とは何か』(講談社・2008年)

『ノーベル賞で語る現代物理学』(新書館・2008年)

『娘と話す 宇宙ってなに?』(現代企画室・2009年)

『パラドックスの悪魔』(講談社・2010年)

『科学と人間の不協和音』(角川oneテーマ21・2012年)

『生きのびるための科学』(晶文社・2012年)

『知識ゼロからの科学史入門』(幻冬舎・2012年)

『科学の限界』(ちくま新書・2012年)

『現代科学の歩きかた』(河出書房新社・2013年)

『宇宙論と神』(集英社新書・2014年)

『科学・技術と現代社会』(上・下)(みすず書房・2014年)

『宇宙入門 138億年を読む』(角川ソフィア文庫・2014年) 

『科学のこれまで、科学のこれから』(岩波ブックレット・2014年)

『科学は、どこまで進化しているか』(祥伝社新書・2015年)

『科学者と戦争』(岩波書店・2016年)

『科学者と軍事研究』(岩波新書・2017年)

 

以下の2冊も、入試頻出出典です。↓

宇宙論と神 (集英社新書)

宇宙論と神 (集英社新書)

 

 

科学者と戦争 (岩波新書)

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今回の記事は、これで終わりです。

次回の記事は、約1週間後に発表の予定です。

ご期待ください。

 

    

 

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疑似科学入門 (岩波新書)

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