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現代文最新傾向LABO 斎藤隆

入試現代文の最新傾向を分析し、次年度の傾向を予測する大胆企画

現代文予想問題ー地球環境問題『いちばん大事なこと』(養老孟司)

『いちばん大事なこと』 『沈黙の春』 システム レイチェル・カーソン 体系的 余分な文を指摘する問題 入試頻出著者 地球環境問題 多様性とシステム 意識中心の社会 現代文明批判 環境原理主義 環境問題 生態系 生物多様性 科学批判 科学論 空欄補充問題の重要性 脱文挿入問題の解法・コツ 趣旨合致問題の解法・コツ 農薬 近代批判 阿部健一 養老孟司 「生物多様性という関係価値」 自然保護 消費社会 2015慶應大学法学部小論文解説 現代文 慶大小論文 慶大法学部小論文 構成要素

(1)現代文(国語)・小論文予想問題(出典)ー地球環境問題・『いちばん大事なこと』(養老孟司)ーなぜ、この論考に注目したのか?

 

 東京23区では、ハエやカを、あまりと言うか、ほとんど見なくなりました。

 私の好きな赤トンボ、スズメが激減しています。

 緑の多い公園に行っても同じです。

 ミツバチが世界から消えつつあるという情報も、よく見聞きします。

 

 レイチェル・カーソンの『沈黙の春』の有名な一節が頭に浮かびます。 

「自然は、沈黙した。うす気味悪い。鳥たちは、どこへ行ってしまったのか。みんな不思議に思い、不吉な予感におびえた。春がきたが、沈黙の春だった。いつもだったら、いろんな鳥の鳴き声がひびきわたる。だが、いまはもの音一つしない。野原、森、沼地―みな黙りこくっている。でも、敵におそわれたわけでもない。すべては、人間が自ら招いた禍いだったのだ」

 カーソンの言う「人間が自ら招いた禍い」とは、殺虫剤・農薬等の化学薬品、放射能です。

 『沈黙の春』は、これ自体が現代文・小論文の頻出出典である上に、様々な論考に引用されている有名な名著です。

 人生観、価値観によい影響を及ぼす、読むべき一冊だと思います。

 

 

沈黙の春 (新潮文庫)

沈黙の春 (新潮文庫)

 

 

 

 一方で、地方では、熊、鹿、猪が増加し、市街地にまで出現して、様々な問題を起こし、マスコミで連日のように報道されています。

 

 明らかに、「生態系」が大きく狂い始めているのです。

 そうなると、大学入試の分野でも、地球環境問題、生態系の乱れの問題が、注目されるでしょう。

 そこで、今回の記事は現代文(国語)・小論文対策として「地球環境問題」・「生態系の乱れ」を取りあげることにしました。

 そして、この論点・テーマにおける頻出出典である、養老孟司氏の論考(『いちばん大事なこと』)を、当ブログのオリジナル予想問題を通して、解説することにします。

 

 

いちばん大事なこと―養老教授の環境論 (集英社新書)

 

 

 

 

 

 

 

 

(2)養老孟司氏の紹介

 

 養老氏は、入試現代文(国語)・小論文における著者別出題数で、ほぼ毎年、ベスト10に入っている頻出著者です。

 高校現代文(国語)や小論文の教科書にも、養老孟司氏の論考は、かなり採用されています。

 

【1】養老孟司氏の紹介

 1937年、鎌倉市生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学教室に入る。1995年、東京大学医学部教授を退官し、同大学名誉教授に。1989年、『からだの見方』でサントリー学芸賞を受賞。1985年以来一般書を執筆し始め、『形を読む』『解剖学教室へようこそ』『日本人の身体観』などで人体をわかりやすく解説し、『唯脳論』『人間科学』『バカの壁』『養老訓』といった多数の著作では、「身体の喪失」から来る社会の変化について思索を続けている。

 

 【2】養老孟司氏の著書

『ヒトの見方-形態学の目から』(ちくま文庫)、

『からだの見方』(ちくま文庫)、

『唯脳論』 (ちくま学芸文庫)、

『涼しい脳味噌』(文春文庫)、

『カミとヒトの解剖学』(法藏館)、

『解剖学教室へようこそ』(ちくまプリマーブックス)

『続・涼しい脳味噌』(文春文庫)

『考えるヒト』(ちくまプリマーブックス)、

『「都市主義」の限界』(中公叢書)、

『人間科学』(筑摩書房)、

『からだを読む』(ちくま新書)、

『自分は死なないと思っているヒトへ 』(だいわ文庫)、

『バカの壁』(新潮新書)、

『まともな人』(中公新書)、

『いちばん大事なこと― 養老教授の環境論』(集英社新書)、

『死の壁』(新潮新書)、

『無思想の発見』(ちくま新書)、

『超バカの壁』(新潮新書)、

『「自分」の壁』(新潮新書)、

『文系の壁 理系の対話で人間社会をとらえ直す』(PHP新書)、

などが、あります。

 いずれも、入試頻出出典です。

 

 

(3)『いちばん大事なこと』の解説ー当ブログの予想問題を通して

 

(養老孟司氏の論考)(概要です)

(青字は当ブログによるです。赤字は当ブログによる強調です)

 

【1】なぜ生物多様性を保護する必要があるのか。それは「人を殺してはいけない」というのと根本は同じことなのである。」

 

ーーーーーーーー

 

(当ブログによる解説)

【養老孟司氏の論考の特徴】

 この部分は、少々、飛躍があり、わかりにくくなっています。

 養老孟司氏の論考においては、「問題提起」と「その解答」が最初に提示されることが多いのです。

 しかし、「その問題提起」と「その解答」の「関連性」が、一見わかりにくい時があります。

 その場合に、混乱したり、停止したりしないで、すぐに、さらに読み進めることが大事です。

 直後から、実に、わかりやすい説明が始まることが多いのが、養老孟司氏の論考の特徴です。

 

ーーーーーーーー

 

 (養老孟司氏の論考)(概要です)


「【2】なぜか。殺人というと、ほとんどの人が「人が人を殺す」と考えるが、もっと具体的に考えると、例えば出刃包丁とか、ピストルの弾が人を殺す。問題はそこである。どういうことか。出刃包丁も、ビストルの弾も、むやみやたらに単純な金属の塊(かたまり)にすぎないではないか。そんなものに、人を殺す権利はない。私はそう思う。

【3】子どもが時計を分解する。分解するのは簡単だが、もう一度組み立てろといわれたら、まず不可能であろう。システムというのは、そういうものである。時計どころか、人体となれば、いったん壊したものをもとに戻すのは、当たり前だが、不可能である。

【4】要するに、なにがいいたいか。システム(→「体系」という意味)は複雑なものだが、それを破壊するのはきわめて簡単なのである。他方、システムをつくり上げるのは、現在までの人間の能力では、ほとんど不可能である。それがいいたい。だからこそ、安易に自然のシステムを破壊してはいけないのである。

【5】とくに生物について、仏教はそれをきちんと教えてきた。私はそう思う。「生きとし生けるもの」「一寸の虫にも五分の魂」「一切衆生(いっさいしゅじょう)(あるいは山川草木)悉有仏性(しつうぶっしょう)(→「一切衆生悉有仏性」とは「生きとし生けるものは、全て生まれながらにして仏となりうる素質を持つ」ということ。→入試頻出キーワード)」、こうした表現はそれをよく示している。 

【6】 ブータンの人は、ビールにハエが飛び込んだら、拾い出して離してやる。それから私の顔を見て、「お前のおじいさんかもしれないからな」といって、ニヤリと笑う。私も笑うが、これは同意の笑いである。絶対に人を殺すな。〔   A   〕戦争だって、自動車事故だって、人はしばしば人の手にかかって死ぬ。医者なら、それをイヤというほど知っている。私自身は、患者さんを殺すのがイヤだから、臨床医になれなかったくらいである。人が人を殺すということはあるが、そのときに、自分でつくることのできない、複雑微妙なシステムを、自分が破壊しているという気持ちがなければならない。いわゆる「文明人」にいちばん欠けているのがそれだ、ということは、多くの人が気がついていることだろう。だから、戦争ばかりしているのである。」

 

ーーーーーーーー

 

問1 空欄〔A〕に入る最も適当なものを次の中から選べ。(当ブログによる予想問題)

イ そんなことは常識である

ロ そんなことは、いわない

ハ このことを言わなくてはならない

ニ これは、守られるべき規範である

ホ これは、もはや規範ではない

 

……………………

 

 以下では、「空欄補充問題」が続きます。

 そこで、【空欄補充問題対策】を特集した記事の、リンク冒頭画像を貼っておきます。→ポイントは、「効率的・合理的に解くために、すぐに選択肢のチェックをするべきだ」、ということです。

 

 

gensairyu.hatenablog.com

 

 

(解答) ロ

(解説) 空欄直後の二つの文より、イ・ハ・ニは不適です。

 空欄を含む段落は、「絶対に人を殺すな」という規範の当否を論じているわけではないので、も不適です。

 この段落は、「絶対に人を殺すな」とは言わないが、後半の三つの文の内容についての自覚が必要だ、と言っているのです。

 

 ーーーーーーーー

 

(養老孟司氏の論考)(概要です)


「`【7】 生物多様性を維持するというのは、じつはその延長である。人間のつくり出した技術は強力だという。たしかに人間自体を簡単に殺すという意味では、素手に比べて、ピストルは強力である。しかし、ピストルの単純さと、人間の複雑さを比較してみればいい。人間に比較したら、ピストルなんて、それこそバカみたいなものにすぎない。月までロケットが飛んだ。そんなこといって、人間は威張ってみるが、飛ぶだけならハエだってカだって飛ぶ。それならハエやカがつくれるか。そもそも人間はロケットの仲間か、ハエやカの仲間か。

【8】現代社会は、ハエやカよりもロケットに価値を置く。なぜならロケットは人間が意識的に考えたもので、考えたとおり月に行くから、意識は得意になるのである。それならハエがつくれるかというなら、とんでもない。むしろそれが不可能だとわかっているから、ロケットをつくろうとするのであろう。〔 B 〕自体に価値を置く文化であるなら、ロケットよりも、人間の仲間であるハエやカのことを考えるはずである。生物というシステムについて、より真剣に考えるはずである。それがそうでないのは、意識中心の社会をつくり、意識的な存在のみを評価したからである。」

 

ーーーーーーーー

 

 問2 空欄Bに入る最も適当なものを次の中から一つ選べ。(当ブログによる予想問題)

イ 環境 ロ 認識 ハ 地球 ニ 人間 ホ 精神

 

……………………………

 

(解答) ニ

(解説) 

 空欄直後の一文(「生物というシステムについて、より真剣に考えるはずなのである」)より、イ・は不適です。

 二つ後ろの文より、も不適です。

 ホの「精神」では、直後の「ロケットよりも、人間の仲間であるハエやカのことを考えるはず」の部分と、文脈上スムーズに接続しません。

 ニの「人間」が入るとすると、直後の「ロケット」以下の部分、直後の一文と文脈上スムーズに接続します。

 第【8】段落は、特に重要なので、しっかり理解しておいてください。

 キー段落です。

 現代は、「人間=生物」の視点を忘れています。

 養老孟司氏は、そのことを批判しているのです。

 卓見だと思います。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 (養老孟司氏の論考)(概要です)

 

【9】生態系とは、ハエやカを含めた生物が、全体としてつくり上げているシステムである。その複雑さは、とうてい把握しきれないほどのものであり、だからこそ意識(→「人間」を意味しています。また、「人間の脳味噌が要求する論理性」、つまり、「人間の傲慢性」を意味しています)はそれを嫌うのであろう。自分には、わからないことがある、それを意識は嫌う。だからバカという言葉が嫌われる。しかし、いかに嫌ったところで、意識には把握しきれないものがあるという事実は変わらない。

【10】生物多様性というのは、つまりは、「生きとし生けるもの」全体を指している。それは、ただ生きているというだけではない。その構成要素がたがいに循環する、巨大なシステムをなしている。それを「壊す」のは、人殺しと同じで、ある意味で「簡単」だが、「「つくることはできない」(→「人間の限界」です)のである。その意味で。現代人は時計を分解している」子どもと同じである。なにをしているのか一つ一つの過程は「理解しているつもり」つもりであろうが、全体としてなにをしようとしているのか、それがわかっていないに違いない。だから「 甲 」という妙な言葉になるしかないのである。」

 

ーーーーーーーー

 

問3 空欄甲に入る最も適当なものを次の中から選べ。(当ブログによる予想問題)

イ 持続可能な利用

ロ 種の保全

ハ 生態系の保全

ニ 絶滅の防止と回復

ホ 生物多様性の維持

 

……………………

 

(解答) ホ

(解説)

 本問を解くについては、第【】段落から空欄甲までの間に、筆者が何を言おうとしているのかを読み取る必要があります。

 現代人は、自分が何をしているのか、一つ一つの過程は理解しているつもりですが、しかし、自分が全体として何をしようとしているのかが、わかっていないのです。

 つまり、システムというものが分かっていないから、「生物多様性」などという

 「妙な言葉」を使っているのです。

 

ーーーーーーーー

 

 (養老孟司氏の論考)(概要です)

 

【11】わずか数羽しか残っていないトキ(コウノトリ目トキ科の鳥)は、国民の大きな関心を集めてきた。保護されたトキが卵を産み、雛が孵って育つ過程は、マスコミに大きく報じられた。2003年10月、日本最後のトキが死亡した。少し想像力のある人なら、トキの絶滅を招いたのは、環境の変化だろうということに思い至るだろう。実際にはトキのように個体数が減ってしまった生物を何羽か増やしたところで、元から棲んでいた場所には帰せない。絶滅しそうな生物を保護しても、自然というシステムからはすでに切り離されている。自然というシステムから見れば、絶滅したのと同じことである。

【12】絶滅の危機を叫ぶと、逆にその意味が薄れる可能性がある。具体的には、トキの保護に懸命な皆さんの様子が報じられると、「なぜあんなに必死になるのだろう。トキが死に絶えたって、人間の生活に関係ないよ」と考える人も出てくるはずである。こういう発想が出てくるのは、ある生物が絶滅しても、それが自分にどう跳ね返ってくるか、それが見えないからである。〔 ① 〕

【13実はそこに生物多様性の意義がある。自然はたくさんの構成要素が複雑に作用しあう巨大なシステムである。システムというものは本来、それを壊そうとする力が働いても動かない、安定したものである。ある生物が絶滅しても、何も起こらないように見えるのは、自然というシステムがいわば「自働〔 C 〕機構」をもっているからである。しかし、システムにも弱点はある。いわば思いがけないところをつかれたとき、一気に崩壊することもありうる。〔 ② 〕

 

ーーーーーーーー

 

問4 空欄Cに入る最も適当なものを次の中から一つ選べ。(当ブログによる予想問題)

イ 記憶化 ロ 固定化 ハ 補充化 ニ 定着化 ホ 安定化

 

……………………

 

(解答) ホ

(解説)

 空欄を含む段落の第三文「システムというものは本来、それを壊そうとする力が働いても動かない、安定なもの」の部分に注目してください。

 次段落の第四文の「自然というシステムは、・・・・バランスを保っている」にも着目すると、より分かりやすくなります。

 

ーーーーーーーー

 

(養老孟司氏の論考)(概要です) 

 

【14】トキが自然界から隔離されても、今のところ、自然というシステムはさほど影響を受けていない。それは、トキがシステムにとって重要でなく、別の生物が重要だという意味ではない。自然というシステムは、たくさんの生物が影響しあって微妙なバランスを保っている。今回の場合、トキの影響は目に見えるほどではなかったが、別の条件の下だったら、もっと深刻な事態を招いたかもしれない。あるいは、長い時間が経ったあとで、大きな影響が現れるかもしれない。システムを構成する何かが欠けたとき、どんな影響がいつ現れるかは予測がつかない。〔 ③ 〕

【15】これを逆向きに言うと、システムを構成する要素は、システムを維持するためにいつもなんらかの役割を果たしている可能性があるということになる。だから、システムの構成要素をいたずらに減らすことは慎むべきなのである。自然の構成要素である生物の多様性を保つ必要があるのは、そのためでもある。〔 ④ 〕

【16】実際に日本で、ある生物が絶滅したために、システムが大きな影響を受けた例がある。オオカミである。〔 ⑤ 〕」

 

ーーーーーーーー

 

問5 次の一文は、もともと、ある段落の末尾にあったものである。元に戻すと、どこが適当か。〔①〕~〔⑤〕の中から一つ選べ。(当ブログによる予想問題)

システムを構成する何かが欠けたとき、どんな影響がいつ現れるかは、予測がつかない。

 

……………………

 

【脱文挿入問題の解法・コツ】 →【脱文挿入問題】は、【空欄補充問題】の一種です。が、【脱文挿入問題】については、本文を熟読・精読する前に、「脱文」を読んでおくべきです。その方が、効率的・合理的です。そして、本文を熟読・精読しながら、挿入する場所の候補を検討することが大切です。

【「設問から先に読む」べき理由の一つ】

(解答) ③

(解説)

 特に、脱落文の「どんな影響」「いつ現れるか」「予測がつかない」に注目してください。

 脱落文は、〔③〕を含む段落の「まとめ」になっています。

 

 ーーーーーーーー

 

(養老孟司氏の論考)(概要です)

 

【17】オオカミがいなくなれば、オオカミに食われていた動物が増える。その最たるものがシカである。最近では増えすぎてさまざまな弊害が出ている。生態系への影響も深刻である。自然というシステムのバランスを考えれば、人間がオオカミの代わりをしてシカを減らさなければならない状態である。それなのに、まだシカは手厚く保護されている。

【18】そこには、シカを殺すのはかわいそうだという情緒的な発想や、自然はそのままにしておくべきだという環境原理主義が働いている。しかし、天敵がいなくなったり、ある動物だけを保護したりすれば、システムのバランスが崩れ、別の生物が影響を受ける。システム全体のバランスを保つには、ここでも、上手に自然に手を加える「手入れ」という思想が必要なのである。かわいそうだから殺さないというのは、システム全体から見れば、かならずしもプラスにならない。

【19】虫の世界でも、こうしたことは頻繁に起こっているはずである。しかし、人間の生活にあまり関係がないので、気づかれない。

【20】自然がシステムであるとわかれば、ある生物が別の生物より大切だとか、この生物は要らないという発想は出てこない。自然というシステムを構成しているという点では、どの虫も、ある意味で欠かせない存在なのである。

【21】二十世紀の科学は、システムという視点を抜きにしてさまざまな問題を扱ってきた。システムの構成要素を一つ一つ取り上げ、それを追求してきた。そして、〔 E 〕はコントロールのための科学を進展させるのに役立ち、一定の成果を上げてきた。しかし環境問題というシシステム全体の問題に取り組むには、この手法はあまり役に立たない。個々の要素をいくら追求しても、システムは理解できないし、システムがどのように動いていくのかもわからないからである。これからの科学は、システムを扱えるものにならなければならない」(『いちばん大事なこと』養老孟司)

 

ーーーーーーーー

 

問6 空欄Eに入る最も適当なものを次の中から一つ選べ。(当ブログによる予想問題)

イ 要素に分ける手法

ロ 要素をシステムの中で考える手法

ハ 要素とシステムを対比する手法

ニ 要素とシステムを分けない手法

ホ 要素からシステムを考える手法

 

問7 第【20】段落~第【21】段落には、その内容からいっても、論旨の展開からいっても、余分な文が一つだけ挿入してある。その文の初めと終わりの五字を記せ。句読点や記号も一字と数える。(当ブログによる予想問題)

 

問8 本文の趣旨と合致するものを次の中から二つ選べ。(当ブログによる予想問題)

イ 絶滅しそうな生物を保護しても、自然という巨大なシステムから見れば、絶滅したと同じことという場合がある。

ロ トキが自然界から欠けても、これからも自然というシステムには、大きな影響はない。

ハ 安易に自然のシステムを破壊してはいけないという結論の理由は、人殺しはいけないという結論の理由と通底していない。

ニ システムの個々の構成要素を一つ一つ追求することが、システムの解明に直結する。

ホ 自然はそのままにしておくべきだという発想は、自然というシステムのバランスからみた場合、必ずしも正当ではない。

ヘ システムは複雑なものだが、それを破壊するのは、それほど容易なことではないのである。

 

……………………

 

(解答)

問6 イ

問7 初め=自然環境は終わり=ムもある。

問8 イ・ホ

 

(解説)

問6【空欄補充問題】 最終段落第一・五文より、ロ~ホは、「システムという視点」(第一文)が入っているので、不適です。

 

問7【余分な文を指摘する問題】

 この種の問題は、早稲田大学(政経学部)(文学部)(文化構想学部)、マーチレベル大学で頻出です。

 こういう問題があるからこそ、設問から先に読む必要があるのです。

【「設問から先に読む」べき理由の一つ】

 

【解法】

 最終段落第四文の「しかし環境問題」以下は、「環境問題」と「システム」の関係が、論点になっています。

 従って、余分な文である最終段落第五文の「物理的に小さなシステム」が、無関係になっていることに、気づく必要があります。

 また、余分な文は、その直後の一文(「個々の要素」以下)とも、文脈上、スムーズに接続していないのです。

 

問8【趣旨合致問題】【「趣旨合致問題」の解法・コツ】

→この設問の選択肢が出来ればよいのです。本文の熟読精読をする前に、選択肢を読んでください。

【「設問から先に読む」べき理由の一つ】

 

イ 【11】段落後半部より合致しています。

ホ 【18】段落より合致しています。

 

ロ 【14】段落より不適です。

ハ 【1】~【7】・【10】段落より不適です。

ニ 最終段落より不適です。

へ 【4】段落より不適です。

 

ーーーーーーーー

 

(出典)養老孟司『いちばん大事なことー養老教授の環境論』〈第四章 多様性とシステム〉→入試頻出出典です!

(要約)

なぜ、生物多様性を保護する必要があるのか。生物多様性とは、つまりは、「生きとし生けるもの」全体をさしている。そして、その全体の構成要素がたがいに循環する、巨大なシステムをなしている。現代人は、そのシステムを理解できないから、「生物多様性の維持」という妙な言葉を使う。二十世紀の科学には、システムという視点が抜けていた。科学における要素に分ける手法は、環境問題というシステム全体の問題には、あまり役に立たない。これからの科学は、システムを扱えるものにならなければならない。

 

ーーーーーーーー

 

 

(4)「生物多様性」という言葉を評価する見解についてー2015慶応大学(法学部)小論文問題の出典

 

【1】「生物多様性」という言葉に、一定の価値を認める見解もあります。

 以下は、2015年度の慶応大学法学部・小論文に出題された、阿部健一氏の論考(「生物多様性という関係価値ー利用と保全と地域社会」)の一部(概要)です。

 

(見出し)『生物多様性』という言葉の創出

 生物学者は、生物のかけがいのない価値を認め、しかもその多くが危機的状態にあることを実感している。彼らにとって、生物とその生育場所を、できるだけ自然のままで保全することは当然のことである。しかし、現実には、生物の保全はなかなか進まず、地球上の多くの種が消滅の危機にある。わかりやすく一般社会に訴え、社会的関心を巻き起こすようなメッセージ性の強い言葉の必要性を痛感していたことだろう。

 『生物多様性』は、その意味で待望されていた言葉であったに違いない。実際この言葉をきっかけに、生物の保全の必要性と重要性を想起させることができ、社会に関心を呼び起こすことに成功した」

 

 一方で、阿部健一氏も、養老孟司氏と同様に、「『生きとし生けるもの』全体が巨大なシステムをなしている」という側面を認めているようです。

 以下に引用します。(概要です)

 

(見出し) つながることの価値

 生物学者は生物相互のつながりに価値を見出した。多様なことだけが重要なのでなくて、それが相互につながっていることが大事なのである」

(阿部健一「生物多様性という関係価値ー利用と保全と地域社会」『科学』2010年10月号所収) 

 

 

 【2】阿部健一氏の紹介

阿部 健一(あべ   けんいち)1958年生まれ。京都大学農学部農林生物学科卒。

京都大学大学院農学研究科熱帯農学専攻修士課程修了。

京都大学大学院農学研究科熱帯農学専攻博士課程中退。 

総合地球環境学研究所教授。専門は環境人類学、相関地球研究。
   

 もともと熱帯林に関わる研究を行い、生物学的な関心だけでなく、そこに住む人々の生活、地域の経済や社会構造、さらには政治環境についても関心を深めてきた。現在は環境人類学、相関地域研究を専門とし、熱帯林に限らず、広く環境問題をめぐる国家の利益や人々の生活の変化、さらには価値観の転換などについても考えるようになっている。

 著書として、『生物多様性ー子どもたちにどう伝えるか』(地球研叢書)、『五感/五環ー文化が生まれるとき』(地球研叢書)等がある。

 これから、注目するべき著者です。

 

ーーーーーーーー

 

これで、今回の記事は終わりです。

次回の記事は、約10日後に発表の予定です。

 

 

 

いちばん大事なこと―養老教授の環境論 (集英社新書)

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