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2016年早大(スポーツ)小論文解説速報ー良問?奇問?意地悪?

(1)この記事を書く理由

 2016年の早稲田大学(スポーツ科学部)の小論文試験で、少々変わった問題が出題されたので、このブログで紹介します。

 良問? 奇問? 悪問? 意地悪?

 どれに該当するのか、評価が別れるような少々変わった問題。

 このような小論文問題は、難関国公立大学(前期)(後期)、慶應大学・上智大学等の難関私立大学の一般入試・推薦入試で、よく出題されるます。

 従って、この記事は、以上のような大学の小論文対策として、いろいろと役に立つと思います。

 

(2)問題文を読む

 以下が問題文です。

 ………………………………

 

「次の論題について、あなたの立場(肯定側)と対立する立場(否定側)の人を説得することを目的として、あなたの考え方を論述してください。その際、決められた立場(肯定側)に立って現状を見つめなおし、客観的に論題に対する検証を行うようにします。つまり、この論題に対して『自分は反対だ』と思っても、ここではその考えに関わらず、論題に対して賛成の立場に立って、801字以上1000字以内で論述してください。

 なお、論述においては以下の関連事項に関する記述及び否定側の論点を踏まえて、否定側や第三者をいかに説得できるかという観点から述べることが重要です。

【論題】

 高等学校における『運動部の活動』の現状については、改革をすべきである。

【論述の立場】

・肯定側:改革すべきである。

・否定側:改革すべきでない。

・あなたの立場:肯定側(否定側を説得するための肯定論を述べる立場)」

 

…………………………………

              

 ここまでは、とても親切で、分かりやすい問題文です。

 「あなたの立場」、つまり、「受験生」は「運動部活動について現状改革派の立場」に立つことが要求されていることが、分かります。

 受験生自身の考えは問われては、いません。

 受験生としては、「とにかく、現状改革派に立てば良いのだ」と、ここで、問題文の方向性を確認できます。

 そして、さらに、問題文を読んでいくことに、なります。

 

 以下が問題文の後半です。

 …………………………………

 

「【関連事項に関する記述】

・学校の部活動

 生徒の自主的、自発的な参加により行われる部活動については、スポーツや文化及び科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること。

【否定側の論点】

・運動部でスポーツを行うことは、高校生にとって心身の発育発達を図る上で重要な機会となっていること、また、競技力向上や一体感などが醸成されることなどから、現状における高校の運動部活動を改革する必要はない」

 …………………………………………

 

 以上で終わりです。

 ここまで読んで、受験生は「あれ?」と思うはずです。

 「(改革)肯定側」の具体的な「改革内容」、つまり、「何を、どのように改革するのか」という記述がないからです。

 「(改革)否定側(現状維持派)の論点」の記述はあっても、「(改革)肯定側の論点」の記述は、全くないのです。

 「具体的改革案」が提示されていないにも関わらず、「否定側(現状維持派)」を説得することを要求されているのです。

 

    出題者のウッカリミスか?

 そうでは、ないと思います。

 意図的に、このような問題にしたのでしょう。

 

 では、どのような意図で、このような問題形式にしたのでしょうか?

 応用力を見たいのか?

 問題発見能力を見たいのか?

 問題解決能力を見たいのか?

 真の(?)の思考力を見たいのか?

 

 「高校の運動部活動の問題点」についての問題意識・予備知識が、あるのが、前提条件なのでしょうか?

 だとしたら、それをそのまま聞けばよいと思うのですが。

 

(3)本問をどのように考えれば、よいのか?

 

 問題文を丁寧に読んでいくことです。

 

 すると、

 ① 第1に、「決められた立場(肯定側)に立って現状を見つめなおし、客観的に論題に対する検証」が要求されています。

 ② 第2に、「論述においては以下の関連事項に関する記述及び否定側の論点を踏まえて、否定側や第三者をいかに説得できるかという観点から述べること」が要求されています。

 以上の2つの条件を強く意識することが大切です。

 

 「決められた立場(肯定側)(つまり、改革肯定派)に立って、現状を見つめなおすこと」が、第1段階です。

 しかし、〈一般的に言われている、高校における「運動部活動」の問題点〉を全て挙げれば、それでよいという訳ではありません。

 

 「関連事項に関する記述及び否定側の論点を踏まえて」という制限に注目する必要があります。

 ここが、本問のポイントです。

 

 「関連事項に関する記述」には、「学校の部活動」の目標(いわば、理想論)が記述されています。

 この中で、「運動部の活動」に関係する部分は、

「スポーツに親しませ」

「学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等に資するものであり」

「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する」

の3ヶ所です。

 これらの部分に反する「現状」を考えていくことに、なります。

 

① すると、すぐに思いつくのは、「スポーツに親しませ」に反する、運動部における「勝利至上主義」、これから派生する「レギュラー選手中心主義」です。

 補欠の選手は、練習においても、試合においても、「スポーツに親しむ」機会が極端に制限されるのです。

 

 また、「勝利至上主義」から派生する「練習過多による疲労」が、「学校教育」「教育課程」の障害となっている側面もあります。

 

③ さらに、「否定側の論点」の中の「生徒の一体感などが醸成される」の点については、高校の運動部の現場では、上級生と下級生の間の、過度に圧迫的な上下関係を発生させることが多いのです。

 

 以上の3点を指摘して、「否定側や第三者」を「説得」するべきでしょう。

…………………………

  結局、本問は、否定側(現状維持派)の見解をもとにして、どういう改革をしたら良いのか」

を聞いているのでしょう。

 しかし、それにしては、ひねり過ぎです。

 

 

(4)この問題に対する評価

 

 参考までに、インターネットで、さまざまな予備校の、この問題に対する評価を見ました。

 すると、「例年通りの標準的な問題」、あるいは、「例年より易化した」という評価が多いようです。

 

 しかし、早稲田大学(スポーツ科学部)で小論文試験が実施された初期から詳細にチェックし、授業でも使用している私としては、そうは思いません。

 

 「早稲田大学(スポーツ科学部)の小論文問題としては、異色な内容の問題だ」と断言できます!

 

 この問題を、「良問、奇問、悪問、意地悪問題の、どれか?」と判定するのは、実に困難です、

 が、私は「その全てに該当する」と思います。

 ただし、奇問・悪問・意地悪問題の要素が濃いめ、です。 

 少なくとも、受験生を混乱させることは、確かです。

 ただでさえ、緊張している受験生は、このような問題でかなり混乱するでしょう。

 

 

(5)このような、ひねり過ぎの問題の対策はどうするか?

 

 このような、ひねり過ぎた問題は、難関国公立大学(前期・後期・推薦(AO)入試)、難関私立大学(一般入試・推薦(AO)入試)の小論文問題で、案外よく出題されています。

 良くない流行になっているのです。

 

 例えば、4000字数程度の本文と、図表が10個提示されて、「本文と図表から、〇〇〇の問題について、あなたの見解を述べなさい。ただし、図表の全てに言及する必要はありません」という問題が、よく出題されます。

 

 しかし、設問文の「〇〇〇の問題」を意識して、本文を読むと、図表の中で必要なのは、3個しかないことが分かります。

 他の7個は、全く無関係です。

 

 この問題も受験生を混乱させるでしょう。

 「ただし、図表の全てに言及する必要はありません」と問題文に書いてはありますが、10個ある図表のうち、3個しか使わないのですから。

 「7個も捨ててよいのか?」

 受験生は、不安に感じることでしょう。

 

 しかも、図表の説明は、ほぼ本文で、なされているので、受験生が自分で考える必要はありません。

 つまり、優秀な合格レベルの受験生にとっては簡単過ぎて、これも、また、不安になります!

 

………………………………… 

 このように、ひねり過ぎた問題の出題は、よくあることです。

 

 では、これらのような、ある意味で、不親切、意味不明な出題に遭遇した時には、どうするべきなのでしょうか?

 

 受験生が覚えておくべきことは、以下のことです!

 

 問題文からなんとか、手掛かりを探して、一字一句丁寧なチェックをせよ!

 粘ることです!

 あきらめないことです!

 

 簡単過ぎると思って、悩まないことです!

 

 周りの受験生も、あなたと同じように混乱しているのです。

 自分だけとは、思わないことです。

 これらのような奇問、悪問、意地悪問題は、よくあることだということを知って、冷静沈着に対応することが大切なのです。

 

 最後に一言付け加えます。

 自分の志望校に今まで出題されたことがない、と思って油断をしないように!

 志望校と同レベルの大学の過去問を、よく見ておくことが重要です。

 模擬問題をやる時間があるのであれば、志望校と同レベルの過去問をやる方が、はるかに有効です。

 

  

 

 

頻出難関私大の現代文 (αプラス入試突破)

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早稲田大学(スポーツ科学部) (2017年版大学入試シリーズ)

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